215.仮歓迎会

 正直、いつもながら面倒くさいなぁって思う。


「六等呪位は二PTパーティーで狩れるからな。訓練させるなら問題ない」


「つくづく、君という者は命というものを軽く見ている。一歩間違えば死人が出るのだぞ? そうなった場合、君はどうするつもりだ?」


「そうならないから安心しろ。昨日の時点で六等呪位の実力はわかった。俺の訓練相手にちょうどいいレベルだ。昨日、今日の化生モンスターを見る限り、秘剣二発で沈む。それも余裕を持ってだ。多少の誤差はあるだろうが気にするほどではないだろう。俺が本気を出さなければならないのは五等呪位クラスからだ」


「本気か?」


 信じられないなら周りに聞いてみろ。


「そうですわね。恢斗はだいぶ余裕を持っていましたわ」


「そうだな。どう見ても楽しんで戦っているようにしか見えなかった。六等呪位では力不足に見えたな。恢斗には、だが」


「アニキは半端ねぇっす……」


「「「「……ガクブル……」」」」


 ほら、こう言っているだろう。七等呪位で訓練するより、いい装備、いいアイテムが手に入る。実際は化生モンスターと戦わず、筋トレしているだけでだ。


「自衛隊から来る新人ホルダーにも同じことをするつもりか?」


「そうだな。こいつら半端もんと違って、自衛隊なんだから危険を覚悟して入隊しているんだろう? なら、それこそ六等呪位で訓練して化生モンスターの恐ろしさ、怖さを教え込むことにこそ意義があるんじゃね?」


「……」


 良いこと言った! 俺。水島顧問、ぐうの音も出ないってやつか。


「あの六等呪位って、やっぱヤバい奴だったんだな……」


「俺たち半端もんにそれをやらせるアニキって……」


「「「鬼畜だな……」」」


 聞こえているぞ、三軍。


「鬼畜で結構。だがな、今回お前たちが手に入れた装備品は、二軍の健志たちの装備よりいいものだからな」


「えぇー、それって差別じゃないっすか? 俺たちにもいい装備くださいよ~。アニキ」


 甘い、甘すぎろぞ、健志。お前たちはもう自分たちで七等呪位を狩れるようになったんだ、自立しろ。


「そうだな。使役化生モンスターのカードを没収していいなら、装備を変えてやるぞ? 健志」


「えっ? なんでそうなるんすか?」


「こいつらには使役化生モンスターのカードを渡さない。というより、時間がなくて渡せない。俺の代わりに使役化生モンスターのカードを集めてくるなら、前言を撤回してすべてを平等に扱ってやるが?」


「……」


 午後にフィットネスクラブに通い、夕方以降に狩りを行う。カード集めをするとなれば、午前中かフィットネスクラブが終わってからの数時間。


 時間外労働になっても早出残業代など出ないからな? 多少の依頼料はもらえるだろうが、俺はやりたくない! 俺の時間をこれ以上減らされてなるものか!


 夏休みってなに? それって旨いの?


「考えてみるっす……」


「その、使役化生モンスターのカード集めって、俺たちがやったら駄目なんすかね?」


「レベルの低いお前たちがやるとレベルが上がるおそれがある。下位の化生モンスターでレベルを上げるのは絶対に犯してはならないルールと思え! 絶対にだ。もしそれを破ったら……そんなことを思わなくなるくらいまで心を折る! 覚えておけ」


「「「「「……コクコク……」」」」」


 このくらい釘を刺しておけばいいだろう。


「言っとくが、二軍もだからな」


「「「「「……ガクブル……コクコク……」」」」」


 二軍は三軍と違う意味で危ない。お調子者というか、うっかり者というか……。


 瑞葵と麗華は我関せずと月山さんたちとお喋りに興じている。二人はこいつらと違って賢いからな。俺が言わんとしていることなど理解しているから問題ない。


 それにしても、チェーン店と侮っていたが、なかなか旨い料理を出してくるな。蟹味噌甲羅焼きなんて絶品で再度注文してしまった。バケットが別注文だがあるのが嬉しい。


 焼き貝が充実しているのいいな。蛤、サザエ、鮑とどれも旨かった。〆に頼んだカニチャーハンにサーモンのハラス焼きをトッピングさせたのは、俺自身を褒めてやりたいほど美味だった。


 健志たちに二次会に誘われたが断った。瑞葵と麗華も誘っていたようだが、俺が行かないと言ったので断ったみたいだな。それより、二人が二次会に行く姿は想像できないのだが……。


 そうそう、三軍は明日早めに来いよ。午後にフィットネスクラブに行くから、その準備で買い物をするからな。フィットネスクラブへの連絡は月山さん、よろ~。


 さて、今日は精神的に疲れたし、今日は仮の歓迎会で本番の歓迎会は明日だ。なので、飲むなら明日だな。


 今日は素直に終電前に帰ろう。


 本当に疲れた一日だった……。







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