210.また一人増えた……
そもそも、共闘する気がないのになんで三人でここに来た?
「やめとけ。そして、ホルダーは手放せ。もし使って犯罪を犯せば、ダークホルダーとして消されるぞ」
「「「……」」」
自制心がしっかりしているなら、こんなことは言わない。この三人も心が弱そうに見える。ほんの少しならと少しずつ悪に手を染め、結局抜け出せなくなるタイプと見た。
「三人一緒なら手を貸してくれますか?」
「今すぐには無理だ。暇がない」
「暇がないとは?」
「さっきの見知った連中を見たろう? あいつらもお前たちと同じでホルダーで食っていけないと泣きついてきた」
リュウの所でも会ってるだろうし、前回の説明会の時も顔を合わせている。覚えているかは知らないが。
「彼らに手を貸して、私たちには手を貸せないと?」
「奴らには手を貸す」
「じゃあ、なんで俺たちは駄目なんだよ!」
ヤンキーくん、逆ギレすんなよ。お前らはここに相談に来ている側だぞ。自分の立場をわきまえろ。
「あいつらはアウトサイダーをやめて、うちに正式に所属することを承諾して契約を交わした。要するに、うちの社員になったんだ。お前たちとは立場が違う。これから、奴らを鍛え上げなければならない」
「じゃあ、その後では?」
「あまり内情を話したくはないが、来月から自衛隊との共同での仕事が入っている。なので暇がない」
「「「……」」」
安易に考えすぎなのだ。正義のヒーローに一朝一夕でなれると思っているのか? そんなのは漫画やラノベの世界だけだ。
ホルダー界の実情なんてわからないから、俺が暇だと思っているのかもしれない。なら、この世界の危機的な実情を見せるか。
三人を中央テーブルのボードの所に連れて行く。
「これが現在、東京都とその周辺にいる七等呪位を示しているものだ」
「こ、こんなにいるんですか!?」
「マジかよ……」
「いない所を探すほうが難しいような……」
マジなんだよ。これが東京周辺の現状だ。石を投げれば七等呪位に当たるって感じだ。
「ここに示しているのは七等呪位だけ、ほかの呪位を加えたら数えきれないほどいる。今の東京、いや日本は危機的状況にあると言っていい。そんな状況下で、君たちのお遊びに付き合えると思うか?」
「「「……」」」
厳しい言い方だがこのくらい言わないとわかってもらえないだろう。
もう一度、小会議室に戻る。
「お薦めはしないが、前にも言ったが、
「お薦めしない理由はなんですか?」
「中抜きが酷い。そして、間違いなく使い潰される。そっちも結局、相当な覚悟が必要になる」
「結局、無理ってことですね……」
「そういうことだ。どうしてもやりたいというなら、ホルダーを集めて数で勝負してレベルを上げるしかない。それでも、死とは隣り合わせだ。アウトサイダーってのはそういうものだ。すべて自己責任なんだよ」
ホルダーは素質さえあれば簡単になれるが、そこから上に上がっていくのは簡単ではない。アウトサイダーなら尚更だ。
「まあ、本業があるんだから、ゆっくりと考えるんだな」
「「……」」
「なら、俺はこの組織に所属を希望します」
「「!?」」
まじ!? 女性とヤンキーくんが驚いているぞ? 俺も驚いているけど……。まじ勘弁してほしいんですけど……。
「本気か? 前にも言ったがうちに所属するってことは、それ相応の制約が課せられる。辞める時もホルダーを破棄してもらうことになるんだぞ?」
「みなさん同じ条件なのですよね? 問題ありません。あの状況を見せられて、覚悟がつきました。ホルダーとしてやっていきたいです」
まじかぁ~。逆にヒーロー魂に火を点けたって感じか? 裏目に出るとは失敗した……。
残りの二人は悩んで決めかねている。
「わかった。上に話を通す。そっちの二人は今後のことをしっかりと考えるんだな。できれば、抹殺依頼がかからないことを願う」
二人は青い顔して頷いている。二人を出口まで送り、月山さんを探し経緯を説明。
「風速くん、あなたねぇ……」
決して、俺が悪いわけではない! それに、三軍のヤンキー組は四人だから、一人増えると五人になって戦力的にちょうどいい。
「説明と契約をお願いします……」
「はぁ~」
フィットネスクラブも終わり全員戻ってきているようだ。水島顧問のほうの相談も終了しているようだな。
全員を大会議室に集める。
「今日からクレシェンテに新たに所属するホルダーだ。三軍になる。挨拶しろ」
ヤンキー四人組が挨拶をする。さっきまで話をしていたので、ある程度自己紹介は終わっていると思うが、様式美ってやつだ。
「俺たちには女性ホルダーがいないんですけど~」
「いないな。ついでにもう一人三軍に男のホルダーが加わる」
「男はいらないんですけど?」
「俺の指示に従えないってか? いい度胸だな。明日は昴ではなく、幸彦を訓練してやろう」
「すみません。調子に乗ってました。ごめんなさい……」
わかればいい。
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