207.三軍加入

 俺には時間がない。だが、せかっく相談に来たんだ、無下に返すのも可哀そうだ。そうだな、警察か自衛隊に入るってのも手だ。アウトサイダーにとらわれず、ほかの選択肢も与えてやればいい。


 問題はヤンキーってことだ。犯罪を犯していると警察官にはなれないと聞いた。軽犯罪程度なら許されるだろうか? 警察が駄目でも自衛隊という手もある。あっちは体力があればなんとかなりそうだしな。


「この間、お前たちと一緒にいたホルダーで警察や自衛隊に興味がある連中がこの後、相談に来ることになっている。興味があるなら、そっちにも話を通すぞ?」


「「「「……」」」」


 っていうか、そっちに行ってほしい。


「もし、この会社に入れば俺たちを鍛えてくれますか?」


 むむ、これは不味い雰囲気。


「言っとくが、それこそ制約が付いて簡単には抜けられなくなるぞ? チンピラのチームなんてのとわけが違うからな。馬鹿をやれば社会的に抹殺されても文句は言えない。その覚悟がお前たちにはあるのか?」


「健志たちはそれを納得したんですか?」


「納得したからクレシェンテに所属している」


 誓紙も使っているからな。上辺だけの納得にはならない。本人たちは知らないことだけど。


「も、もし、抜ける時はどうすればいいのでしょう?」


「前にも言っただろう。ホルダーを辞めてもらう」


 勘違いしないように、再度ホルダー能力を破棄することだとちゃんと説明する。


「「「「……」」」」


 辞める理由はどんなものになるかわからないが、危険人物を野放しにはできない。


 ホルダーになるということは、それ相応の品性と強い自制心、そして義務が伴う。ノブレス・オブリージュと同じだ。


 四人が相談を始める。クレシェンテに所属したいなんて言わないでほしい。できればアウトサイダーのままか、水島顧問のほうに行ってほしい。切実に、今この時期だと面倒すぎる。


「「「「俺たちをクレシェンテに入れてください! お願いします!」」」」


 あぁ、最悪だ……。お前ら、アウトサイダーで頑張れよ……。


 小会議室を出て、月山さんを探す。もう出社している時間だ。


「あら、どうなったの?」


 かくかくしかじか……。


「……」


 なんとか言ってください。目を逸らさないで、月山さん!


「どうするの?」


「どうしましょう?」


「完全なキャパオーバーよ?」


 ですよねー。


 だけど、相談に乗ると言った以上、突き放すわけにもいかない。もし突き放したら、こいつらダークホルダー側に行きそうだしな。自衛隊に叩き込むってのもありだが、元ヤンだからなぁ……。


「取りあえず。夏休みが終わるまであいつらを鍛えます。その後は自立させるか、健志たちと一緒に行動させるか決めればいいでしょう」


「本気?」


「こうなった以上、やるしかないでしょう。あいつらをここで拒絶したら、ダークホルダーに落ちますよ。間違いなく」


「そうね……。ありそうな感じね」


 ということで、話を詰めに小会議室に戻る。


 そこで再度、クレシェンテに所属するか確認する。


「「「「お願いします!」」」」


「ホルダー社会は実力主義だ。強い者に従ってもらう。このクレシェンテでNo.1は俺だ。逆らうことは許されない。いいな?」


「「「「はい!」」」」


 そこで、詳しいことは月山さんに任せるが、基本的なことをホワイトボードに書いていく。後で誓紙に署名させよう。健志たちと同じ誓紙でもいいのか? 内容は同じだからいいだろう。


 ホルダーは正義のヒーローで社会の模範とならなければならないこと。これは瑞葵が決めて社則に載せた条文だ。


 服装も髪型も今のヤンキーの格好は却下。煙草も厳禁。もちろん、喧嘩なんてご法度。口の利き方にも気をつけろと言っておく。


「酒はいいんですよね?」


「周りの人に迷惑をかけないなら問題はない」


「健志もこれを守っているんですか?」


「守っている。午後に来るから確認してみろ。言っとくが、今の健志はお前らでは足元にも及ばないくらい強くなってるからな。先輩としてリスペクトしとけ」


「「「「……」」」」


 どういう関係かは知らないが、実力で到底敵わないほど健志は強くなっている。先輩として従ってもらう。


 そして、健志もスカジャンなどのヤンキー服をやめ、リーゼントもやめている。金髪はそのままだけどな。そのくらいの髪を染めるのは問題ない。


「正直、時間がないから今日の夕方から、お前らを鍛える。いいな?」


「さっきも言ってましたが、時間がないってのはどういう理由ですか?」


「大学の夏休みがもうすぐ終わる」


「ち、ちなみにアニキの年齢は?」


「二十歳だ」


「「「「年下かよ!?」」」」


 それがどうした。ホルダー社会は実力主義だと言ったばかりだぞ。


 小会議室のディスプレイと音響設備をオンにして、手元のPCを操作して健志たちの戦いの映像を出す。


「これが、今の健志たちの実力だ。それと、お前らの中で一番強い奴は誰だ?」


「俺です」


 さっき書かせたステ値を見る。


 酒井隼人さかいはやと LV2 130% 23歳


 こいつがリーダーのようだ。この中では背が一番高く180cmくらいでやせ型。目つきは悪いがどちらかといえば知的なタイプに見える。


「今からお前と俺との力の差を見せてやる。アナウンスが流れたら受けろよ。リクエスト、ホルダーランクバトル」


「えっ!? う、受けます」


 仮想空間に移った。


「こ、ここは?」


「ホルダー同士でランク戦を行う場所だ。これを行えるようにリュウって奴は最初に七等呪位を二体倒したんんだ」


「ランクを上げると何かいいことがあるということですか?」


「ランクが上がるとホルダーの中のショップのラインナップがよくなる。それと、ホルダーの強さの指標ってところか」


 正直、あまり役には立たないけどな。


 あくまでも指標だな。





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スメラミクニラビリンス~月読命に加護をもらいましたがうさぎ師匠には敵いません~

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884258759

月読命の加護を受け、現代、異世界で成り上がるサクセスストーリーですにゃ。

一度読んでみてくださいにゃ!

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