198.受け入れについての条件

 話がまとまったところに麗華と月山さん、水島顧問が戻ってくる。


「やれやれ、また何かしでかしたようだね。恢斗」


「これ以上はやめて! 風速くん!」


「神将のみなさんが揃ってどうしました?」


 そう、やっちまった。売り言葉に買い言葉って感じで、勝手に話をまとめてしまった。ごめんね?


 その三人が沢木管理官と話をして頭を抱えている。


「風速くんと言ったな。塚原とランクバトルをやったそうじゃないか。私ともやってみるかい?」


 ホルダー12の愛洲さんが言ってきた。来たねぇ、望むところだ。


「最初の一手を譲ってくれて、なんでもありならおそらく俺が勝ちますよ?」


「秘剣持ちと聞いているがそこまでの自信があるのか。私自身はランクが下がるのは構わないのだが、どうしても体面というものがあってね。ランクが下がると上から怒られてしまうんだ」


 ホルダー12が一気にランクが下がれば怒られるのか? ということは、一条さんも怒られたってくちか? 


「どうなんだ? 塚原」


「そうですね。もしかすると、一手を譲らなくてもなんでもありだと厳しいかもしれません」


「本当にそこまでなのか?」


「私も初めて秘剣を味わいましたが、BPの三分の二を持っていかれました。そこに連続で魔法などを喰らえば厳しいでしょう。そして彼は、間違いなく何かしらの連続攻撃を持っています」


 ランクバトルの時に言っちゃからなぁ。今更、誤魔化しはきかないよなぁ。


「じゃあ、秘剣と連続技禁止でどうだ?」


「なんか納得いかないですけど、訓練という意味ではいいです」


「まあ、そう言うなよ。リクエスト、ホルダーランクバトル」


「TPがなくなるまで付き合ってくれるんですよね?」


「いいぞ」


「あっ!? 愛洲さん……」


 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー

 ーー

 ー


 いやぁー、いい訓練だった。格上の相手とやると訓練になるなぁ。俺の周りには本気でり合える相手がいないからな。早く瑞葵にここまでのステージに上がってきてもらいたい。


「なんなんだよ、こいつのTPの多さは。おかしいだろう……」


「私も体感で一日付き合わされました……」


ってもっても、ゾンビみたいに起き上がってくる。そして、嬉々として突っ込んでくる。途中で、自分の首を斬って終わらせようかと思ってしまったぞ……」


 今回は技あり魔法ありだったから半日くらいか? さすが神将だけあって、単発の技や魔法では相手にならなかった。だから、途中から塚原さんの時のように、己の技量のみで戦った。正直、それのほうが楽しかったからだ。


「まだ、あと一回ランクバトルをできるが?」


「「「「……」」」」


 返事がない、ただの屍のようだ。つまんねぇーの!


 俺が駄目ならこいつらとならいいんじゃね? って、なに横に首を振っているんだ二軍の男子諸君!


 塚原さんも愛洲さんも強かった。強かったが越えられない壁ではなかった。ステ値はレベルを上げればそう遠くないうちに追いつく。技量は訓練あるのみだな。こればかりは一朝一夕にはいかないからな。


 ステ値が追い付けば加速や秘剣で倒せると思うが、それでは面白くない。それこそ剣技や技、魔法なしの己の技量だけで、この人たちに勝てるようになりたい。


「なあ、塚原。私は思うのだが、風速くんは十分に守護の実力があるのではないか?」


「個人の実力だけなら守護の実力はあると思います。ですが、チームとしては守護の実力がないのでしょう。彼のチームは三人と聞いています。普通のホルダーとでは差がありすぎるのではないでしょうか」


「惜しいな……」


「はい、惜しいですね」


 話を聞いていれば、何を勝手なことを。なにが惜しいだ。惜しくもなんともない。もうすぐ、瑞葵も麗華も適合率が200%を超える。この二人の行きつく先もあんたたちの先だ。長くホルダーを続けるか続けないかの差でしかない。


「わかりました。そういうことであれば、再来月からクレシェンテでお預かりいたします」


 向こうの話もまとまったようだな。


「十月から七人、自衛隊からうちに来るそうだ。恢斗」


「ふーん、早いな」


「自衛隊もホルダーを遊ばせておくわけにはいかないだろう? それより、恢斗が忙しくなるが大丈夫なのかい?」


「問題ないだろう。それに明日、一人で六等呪位と戦ってみる。それによっては、瑞葵と麗華も六等呪位狩りに移行する」


「さすがにそれは厳しいと思うぞ? 恢斗」


 まあ、やってみないとわからないけどな。もしかしたら、まだ俺たちには六等呪位は早いかもしれない。そうなったら、俺とは別々で七等呪位狩りをすることになる。


 そうなると一日三体の七等呪位を狩ることになる。選定が難しくなる。車も更に一台必要になるな。


 自衛隊の新人ホルダーの給料はクレシェンテ持ち、教導隊の二人の給料は自衛隊持ち。ドロップアイテムの所有権はクレシェンテだが、自衛隊の新人ホルダーが得た武器防具は優先的に使わせる。


 依頼を受け得た報酬もクレシェンテに帰属するそうだ。ぼろ儲けじゃね? 育ててやる手数料ってか? 


 やるな、月山さん。








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