196.神将勢揃い
健志たちはいそいそと瑞葵たちから離れ、俺たちに興味を持って近くに寄ってきた女性隊員と話を始めた。
「それにしても君たちの服装は凄いね。どこかの俳優さんたちかと見紛うほどだよ」
「うちの作業……いや、戦闘服だな」
サングラスを上げて答える。
「ははは……。うちの戦闘服も君たちのように格好よかったらよかったのにな」
自衛隊の戦闘服は対人戦の迷彩服だからな、俺たちのような逆に目立つような服じゃ駄目だろ。
「話は変わるが、帯刀が君に謝罪したいと言っている」
「謝罪? なんの?」
「あなたに対する暴言を謝罪します」
「意味がわからない。俺が強いことを知ったから謝罪するとでも? ふざけるのもいい加減にしろよ。謝罪する前に、少しばかりホルダーとして活躍しているからといって、相手を見下していた浅ましく醜い己の心を恥じろ」
「くっ……」
馬鹿にするにもほどがある。上辺だけの謝罪など反吐が出る。
「お前が強いわけではない。嶋崎さんが強いんだ。あんたはその引き立て役でしかない。分をわきまえろ」
「──ッ!」
「さすがにそれは言いすぎでじゃないかな? 風速くん」
どこが言いすぎなんだ、本当のことだろう。
「本当にそう思うのか? 水島顧問はうちに来た時にこう言っていた。気づいたら周りに誰もいなかったと。あの時は違った捉え方をしていたが、今ならその意味がわかる」
「どういう意味だと?」
「自衛隊のやり方は戦力の平均化ではなく、強い者を前面に出しそのほかは後方支援って感じの戦い方だ。それが悪いとは言わないが、その強者が崩れた時に後ろの者では対処できる力がないということだ」
おそらく、水島顧問に何かトラブルでもあり、そしてフォーメーションが崩壊し、後ろの者では力が足りず水島顧問だけ残し全滅ってところだったと考える。そのせいで、自責の念に
嶋崎さんの表情を見るかぎり、何か思い当たる節があるようだ。あながち間違いではなさそうだな。
「我々のやり方が間違っていると?」
「やり方はそれぞれのチームで決めること、俺が口出しすることじゃない。だが、あまりにもワントップでは負担がかかりすぎているのではないか? 最低でもツートップ、本当なら平均的が理想だ。トップが倒れれば全滅というのはどう考えてもおかしいだろう」
「そこまで潤沢な人材はいない」
「だから何度も言っている。育て方が間違っていると!」
さすがにちょっとヒートアップしてしまった。周りがしーんとして俺たちを注目している。
「まあまあ、少し落ち着きませんか、二人とも」
塚原さんだな。後ろに見たことがない人たちを連れている。
「育て方が間違っているねぇ。それを君はどう説明するつもりだ?」
塚原さんが連れてきた中で、一番年配そうな厳つい人が聞いてきた。
「自衛隊の新人五人をうちにレンタル移籍させろ。俺が鍛えてやる。それではっきりするはずだ」
「期間は?」
五十代前後の堅気に見えない人が聞いてくる。
「二か月もあれば十分だ」
「面白い。一考の余地はあるんじゃないか? 塚原」
五十代くらいの温厚そうな顔だが、目つきが鋭い人が塚原さんに言う。
「そんな簡単なことではありませんよ!」
「そうか? 俺たち全員が連名で嘆願すれば通るんじゃないか?」
四十半ばくらいの少し軽薄そうなイケオヤジがそう言う。
「彼の、なんて言ったっけ? そうそう、クレシェンテとは今後協力体制を築いていくのだろう? いいんじゃないのか?」
五十代くらいの渋メンが賛同する。
発言した順番に鑑定してみた。
凄ぇな。
「言っとくがレベルを上げた奴はもう強くなれないからな。レベルの低い者を寄こせ」
「どのくらいまでならいいんだ?」
この目付きの鋭いおやじは愛洲さんだっけ?
「レベルが低ければ低いほど強くなれる可能性がある。二十を超えたら厳しいと思ってくれ」
「問題になるのはレベルだけか?」
軽薄そうなイケオヤジは柳生さんか?
「適合率も関係するな。高ければ高いほうがいいのは当たり前だが、そうだな130%くらいはほしいな」
「まあ、妥当な数値だな。うちでもそのくらいの適合率じゃないと、実戦は任せられないからな」
渋メンの宮本さんだな。
「強くするというが、どのくらいまで強くなるというのだ?」
堅気に見えない吉岡さんに睨まれる。怖ぇよ!
「一か月あれば間違いなく、そのチームで七等呪位を狩れるようにしてやる」
「君のことは話しを聞いているが、なぜそこまで七等呪位に拘る?」
一番のご年配の諸岡さんだ。
正直、説明するのも飽きたがしょうがない。
せっかくの神将たちにも意見を聞いてみたいからな。
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