195.打ち上げ会

 しかし、女性陣も凄ぇな。どこかの銀幕から出てきたような出で立ち。どう見ても作業着じゃねぇだろう!


「に、似合うかな? 恢斗」


「ヤバいくらい似合ってる」


「そ、そうか、似合っているか! 恢斗も格好いい……ごにょごにょ」


わたくしたちがのではなく。のです。当然ですわ!」


 こういうところがなければ、いい奴なんだけどな、瑞葵って。


 月山さんと水島顧問はスーツ姿。赤星さんは私服。赤星さんは打ち上げには参加しないで送迎係。夕飯もこちらのホテルで取る。どちらかというと、俺もこっちの食事のほうがいい。


 そこで、月山さんに相談して帰ってきてから、こっちで食事ができないか相談。向こうで食事ができるかわからないからな。一応の保険だ。


 月山さんがホテルに相談に行ったが、さすがに帰ってくる時間がわからないので難しいとなり、それならお弁当を用意しますとなった。まあ、それでもいいだろう。


 赤星さんの運転で打ち上げ会場に移動。ホテルに隣接するイベント会場で行われる。なにせ、五百人以上が集まるから普通の会場では入りきらない。都内のホテルみたいに五百人も入る大ホールを擁するホテルなんてそうはない。


 俺たちを降ろすと赤星さんは一度俺たちが泊まるホテルに戻り、また帰りに迎えにきてくれる。


 会場に入ると制服を着ている人と私服の人が半々だろうか。そこまで厳格じゃないみたいだな。俺たちも私服でよかったんじゃね?


 なぜ、そう思うのか? 会場に入った瞬間、一斉に俺たちクレシェンテ勢に視線集まったからだ。間違いなく浮いている。どう見ても、モデルとそのボディーガードって感じに見えるだろう。誰が来た? って感じだな。


 月山さんと水島顧問が受付を済ませ、割り当てられたテーブルに向かう。テーブルはあるが椅子はない。ここも立食形式のようだ。


 テーブルの外周に屋台みたいな台が並んでいて料理が盛られている。まだ、半分ぐらいしかないからこれから運ばれてくるのだろう。


 よく見ると、二か所にビール、酎ハイ、ワイン、ソフトドリンクのサーバーが並んでいて、その横のテーブルに日本酒とウイスキー類が並んでいる。ジョッキやコップも大量に置いてある。自分で選んで注ぐようだ。もちろん、飲み放題だろう。


 その前に今日の実地訓練の総評が始まる。


 自衛隊の幹部らしき人の挨拶があり、本日の討伐された化生モンスターの数が報告される。十等呪位が百八十二体、九等呪位が九十三体、八等呪位が四十八体だそうだ。


 結構な数だな。というか、それだけの数が青木ヶ原樹海にいたということだ。だが、これだけ狩ってもすべてを狩ったわけではない。一番深い場所までは行ってないし、七等呪位、六等呪位、五等呪位はまったく手を付けていない。


 何度も言うが七等呪位は一年で二百体の八等呪位を生む。はっきり言って焼け石に水。七等呪位以上を狩らないと化生モンスターは減らない。


 昼じゃなくて夜に実地訓練を行ったほうがいいんじゃね? って水島顧問に言ったら、すべての自衛隊のホルダーが七等呪位を倒せるわけではないので難しいと言っていた。


 八十以上のチームが全国から集まっているが、七等呪位を倒せるのは半分くらいなものらしい。なるほど、とも思わなくなもないが、だからこそ実地訓練で七等呪位を倒す訓練が必要なのではないだろうかとも思う。


 そうこう思っていると打ち上げの乾杯があるようで、サーバに列ができている。俺たちも並ぶ。瑞葵と麗華、月山さんはワイン、朱珠はレモンハイ、葵はコーラ、男性陣はジョッキでビールだ。


 そして、幹部さんの合図で乾杯! 


 凄ぇな! こんな大勢でビールジョッキで乾杯って。豪快すぎる。


 麗華と月山さん、水島顧問は自衛隊の幹部とホルダー管理対策室への挨拶回りに出掛けた。


 俺たちは飲み物のお替りと、料理を物色に出る。


 ホルダー交流会とは違い並んでいる料理はジャンクフード的なものが多い。から揚げ、ポテト、焼きそば、スパゲティー、お好み焼きにたこ焼きまで、質より量って感じだ。


 現に交流会の時と違って、料理があっという間に減っていく。さすが、体が資本の自衛隊、食べる量も飲む量も半端ない。なくなる前に男性陣でせっせとテーブルに料理を運び込む。


 女性陣は……ポテトを食っているが動く気配はない。


 そしてうちの女性陣に群がる若手男性隊員ども。ハイエナのようだな。


「すまないね、うちの者が……。クレシェンテのお嬢さんたちがあまりにも可憐なので、若手隊員たちがどうしてもお近づきになりたいとね」


 嶋崎さんがチームの方たちを引き連れ現れた。


「別に構いませんよ。玉砕する覚悟があるのでしょうから」


「そうか。やっぱり、あの子は風速くんの彼女なのかな?」


「瑞葵が聞いたら、殺されますよ? 社会的に」


「えっ!? 社会的ってどういうことかな!」


 神薙家のことを知らないようだな。政財界に強い影響力を持つ名家のお嬢様とだけ教えておく。


「あいつの機嫌を損ねたら、社会的に抹殺されてもおかしくないからな。お前たちも覚えておけよ」


 健志たちも顔を引きつらせながら、ブンブンと首を縦に振る。


 こいつらも意外と命知らずなところがあるからな、釘を刺しておかないと瑞葵の怒りの矛先が俺に向きかねん。


 それは勘弁だ。






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