194.実地訓練終了
なにかみなさんの足取りが重い。集合地点を目標としたので黙々と歩いている。なんかお通夜みたいだ。
途中、一度八等呪位を見つけた時に、チームのみなさんが一人で戦いたいと主張したが、嶋崎さんが却下して全員で倒していた。八等呪位ぐらいならこのメンバーなら一人でも倒せるとは思う。
だが、それを許さないのが自衛隊らしいといえば、自衛隊らしい。
今日の一連の戦い方を見ていて思った。嶋崎さん以外は俺よりステ値が低い。おそらく、適合率も200%を超えていない。確かに今まで見てきたホルダーよりは技量も高いし連携も取れて強い、がそれだけだ。
一人ひとりに突出したものがない。平均的で個より集団での戦い方をする。強いリーダーを中心にリーダーを活かすためのサポート役といえばいいのだろうか。
悪い戦い方ではないと思うが、リーダーとの力の差がありすぎる。故に最前線に立つリーダーに頼り切って、そのほかの者が育たない。八等呪位を一人で狩らせないというのがいい例だ。
弱くなるために手厚く育てられているのだ。五等呪位と戦っているのだから命の駆け引きは行っているのだろうが、突出したリーダーがいるせいで任せてしまっているのかもしれない。
そして、負担のかかるリーダーの適合率だけが上がっていき、ほかの者は育たないという負のスパイラル。たまにぽっと出てくる天才や秀才をリーダーに据えて、部隊数を増やしている感じか?
俺なら部隊の実力を平均化して、リーダー格だけを集めた少数精鋭部隊を作るけどな。
国の管轄だからそれこそ早急な実績が求められるのかもしれない。だから人、金、時間を無駄にできないという考えなのだろうが、逆に損をしている。なんてもったいない。多くのホルダーが無駄にレベル上げをさせられて弱く育てられているのに。
結局、自分たちで自分の首を絞めているようなものだ。
集合地点に着きゴミ捨て場にゴミを出していると、警察車両があることに気づく。ゴミ捨て場にいた自衛隊員さんに話を聞くと、自殺現場が一か所と白骨死体を一か所で発見したチームがいたそうだ。それでも、今回は少ないと言っている。この樹海はなんて業が深いんだ……。
塚原さん、沢木管理官、水島顧問が嶋崎さんと話をしながら、俺をチラチラと見ている。なんだ? また俺の悪口か?
そうこうしていると瑞葵と麗華が戻ってきた。
「なかなかにきつい行程でしたわ」
「そうだな。自分の体力のなさを痛感したよ。だが、この実戦訓練は有意義なものだったよ」
「そうなのか?」
「リーダーとして何が必要で、何が不足しているのかがよくわかったよ。恢斗」
そうか、麗華がそう思うならそうなんだろう。
「で、瑞葵は得るものがあったのか?」
「そうですわねぇ。連携という点では学ぶべきことが多かったと思いますわ。今までは、三人だけで戦ってきたので必要ありませんでしたが、
確かにな、これからも
そういう意味では今回の合同訓練は役に立ったと言えるのかもな。
二軍連中も帰って来たな。
「どうだった?」
「「「「きつい……」」」」
「……暑かった」
意外と陸は余裕そうだな。
「だけどよう、アニキ。あの人たちと俺たちってそう大差はないんじゃね?」
「基礎体力の高さは認めますが、
「訓練というのはわかるけど、なんていうか無駄が多い? って感じだな」
「……一人ひとりの役割がはっきりしている分、それが乱れると弱い」
「はっきり言って、私たちより弱いかも?」
二軍連中は自衛隊ホルダーの若手チームと一緒に行ったようなので、そう感じたんだろうな。
瑞葵と麗華のように中堅ホルダーのチームと行けば、また違った感じを受けたのだろうけど、それはそれで認識を深めるということではいい経験になったと思う。
が、ここでちゃんと釘は刺しておこう。
「忘れているようだが、今のお前たちも
「「「「「……」」」」」
二軍連中は思い当たる節が多すぎて、俺から目を逸らす。
この後にすぐに合同訓練終了の挨拶があり解散。合同練習の総評などは打ち上げの時に話がされるそうだ。
俺たちは一旦宿にも戻って、風呂に入り着替えてから会場に移動となる。
ゆっくりしている時間はないので大浴場でささっと体を洗い、この間選んだ作業着に着替える。残念ながら、フィンガーレスグローブは間に合わなかったがグラサンは買っておいた。
作業着の中は青のTシャツを着てサングラスをかける。ガンベルトが欲しくなる。勇樹と翔子のホルダーがそんな感じだったな。
「ア、アニキ、格好ぇー!」
「アニキ、ヤバいっすね、それ……」
「コスプレだぁ~」
コスプレちゃうわ!
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