189.共有と訓練

 あの後、訓練終了の挨拶があり解散となった。


 ホテルに戻り風呂に入ってから、夕食の京懐石を堪能。本当はお酒を飲みたいところだがこの後会議室を借りており、今日の訓練での話をしなければならないので我慢。


 会議室に移動し本日の訓練での各々の状況を確認。


 ほぼ全員から基礎体力の低さと、実戦経験の不足が上げられた。


「基礎体力はジムでトレーナーについて効率よく強化するしかない。月山さん、どこか当てがないですか?」


「そうね。雪乃製薬系列にフィットネスクラブがあるから、そこを使いましょう」


「健志たちはさっそく来週から通わせてください。俺と瑞葵、麗華は来月中旬から大学が始まるので、空いてる時間に行くという形にしましょう」


 二軍は日中にジム通い、夜に七等呪位狩りって感じだな。俺は講義が終わったら行くか。


 そして、今日の本題を話す。


 訓練後にホルダーランク232守護の一条さんと戦い勝ったこと。そして、最強ホルダーのランク10神将の塚原さんと戦ったことを話した。


 その戦いの中で得た知識を共有。それだけでなく、今までに化生モンスターと戦って得た知識も再度説明して理解を深めてもらう。


「実際、魔法の相殺ではどのくらいのTPを使えばいいのかな? 恢斗」


「相手が使った魔法と同じTPが必要だ」


「それはどう確認するのでしょうか?」


 朱珠の疑問はもっともなのだが、そこが難しい。


「今後、魔法や技についてまとめることにする。それを覚えるしかない。それでも、TP上乗せがあるから確実とは言えない。一番は躱す、二番は相殺できるまでTPをぶつける、三番は相殺を諦める、だろうな」


 化生モンスターがTP上乗せをしてくるかはわからない。だが、してくると仮定しておいたほうがいい。


「……スキルの応用について例をあげて教えてほしい」


「そうだな。瑞葵の大技三段突きがあるだろう? あれは名前のとおり三回突きを出す技だが、瑞葵は二刀流でそれを六段突きにした。固定概念を捨て、柔軟な考え方でいくらでも応用ができる」


「アニキ、ほかのスキルもそうだってことっすか?」


「そうだと聞いている。なので、いろいろ考えてみてくれ。もしかすると、厨二病を患うくらいがちょうどいいのかもしれない」


「ふふふ……我の闇の書の封印を解く日が来たのかもしれない。私の時代が来る!」


 自宅警備員、みんなが引いているからやめれ。間違いなく、葵の時代は来ない。


「そして、これからは特訓とは別にランクバトルを行ってもらう」


「お互いに戦うってことですか? アニキ」


「別に本気で戦ってもいいが、ランクが上がるより下がるほうが大きいから、仲間内でやるのはお薦めはしない」


「じゃあ、何をするんですかぁ~?」


「訓練だ。仮想空間内は時間も疲れも空腹も気にしなくていい。今日、実際に体感時間で一日くらい仮想空間で訓練できたことから、一日は問題ないことがわかっている。いいか、使い放題で制限なしの精神と時の〇屋だぞ! これを使わずしてどうする!」


 本当に制限がないかは知らないが。


「い、今からやるのかい? 恢斗」


「今からだ。仮想空間に入ったら、お互いに手合わせするもよし、離れて訓練するもよし、好きにやれ。一日に二回もできるのだから、有効に使うべきだ」


「エ、エステに行く時間ですわ!」


「忘れたか? 中で何時間いようがこちらでは一瞬だ。はよ行け」


「「「「鬼だ……」」」」


 俺は今日はもう二回ランクバトルをしているので人数的に一人余り、葵がぼっちとなった。一番訓練させたい奴が残るとは……。終わった奴とやらせよう。


「瑞葵と個別に訓練していたが、一時間くらいで強制終了されたぞ。恢斗」


「アニキ、俺と朱珠は手合わせしながらやって、三時間くらいで飽きて終わらせたぜ?」


 昌輝と陸も最初に手合わせしてから、個別に訓練に入ったら、やはり一時間くらいで強制終了されたそうだ。ちなみに引き分けでポイントもアイテムも無しだそうだ。


「どうやら、インターバルが一時間あるようだな。その間に手合わせしないと強制終了なのかもな? よし、それを踏まえてもう一度、相手を変えてやってこい!」


「「「「お、鬼だ……」」」」


 鬼で結構……毛だらけ猫灰だらけだ!


「今度は上手くいった。戦わなくても武器をお互いに合わせるだけで問題ないようだ。恢斗」


「そうか。意外と緩いな」


「ですが、あの何も無い空間では体感で三時間が限界ですわ……」


「瑞葵お姉さまの意見に一票! あの中に一日もいられるアニキが異常~」


 俺をディスるということは、塚原さんをもディスるということを葵はわかっているのか? チクってやるぞ!


「最後に、明日の実戦訓練では自衛隊のPTには入るなよ。そして、止めは絶対に刺すな。意味は分かるな?」


「レベルを上げないこと、だろう? 恢斗」


「そういうことだ。自衛隊員のレベルは高い。そんな連中とレベル上げしたら百害あって一利なしだ。何か言われたらクレシェンテの方針だと言え。十等、九等呪位なら数体倒してもレベルは上がらないと思うが、八等呪位は絶対に止めを刺すようなことがないようにしろ」


 このくらいでいいか、じゃあ本日は解散だな。


 女性陣は全員エステに向かうようだ。男性陣は昨日に続き麻雀だ。俺を除いて……。強すぎるから参加は却下だそうだ。解せぬ。


 仕方ないのでバーで軽く飲み、部屋に戻りルームサービスで日本酒とつまみを頼み部屋の露天風呂で一杯やりながら温泉を満喫。いやぁー、極楽極楽。


 麻雀を終え戻ってきた水島顧問が俺のやっていることを見て俺が風呂を出た後、残っていた日本酒とつまみを奪って露天風呂に行ってしまった。


 もう一度、頼むか……。






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