188.手ほどき
プチサンダーを手のひらに出してみる。
TPを上乗せすると威力が上がるのは知っている。これにどう変化を付けるかだな。試しにもっと高圧のサンダーにしてみるか。
ん? 少し大きくなったか? ついでにTPも持っていかれたな。変化したってことか? TP上乗せと何が違う? よくわからん。
電流を増やしてみる? 50mA以上が危険と言われているから1Aくらいにしてみるか。紫っぽい色が少し白っぽい色に変わったな。もちろんTPは持っていかれた。人で試すわけにはいかないから
最期に、プチサンダーの弱点はその距離。近くないと効果がない。なので距離を伸ばしてみる。そう、太刀・焔の炎尾を真似してみるのだ。炎尾じゃなくて雷尾だな。
うにょうにょと放電が蛇のように伸びていく。伸ばすだけではなく、指向性も持たせないと駄目なようだ。維持するだけでTPが減っていく。まあ、たいした量じゃないけどな。
「理解できたようだな。すべてのスキルはベーシック状態。それをどう扱うかはホルダー次第ということだ」
今一度、自分のスキルを見直す必要がある。自分自身で限界を作ったらそこで終わりとなるわけだ。逆にいえば、いくらでも発展、応用ができるのだな。
これは良いことを聞いた。
「この壁を乗り越えるか乗り越えないかで一流のホルダーになれるかが決まってくる。自分に限界を作ってしまったホルダーは一流にはなれない」
限界を超えるのではなく、限界を作らないことが大事ということだ。
「だからこそ、実戦ではできるだけスキルを使いスキルのレベルを上げる。そして、日々の訓練の中でスキルに頼らない反復訓練を行い地力を上げる。それができれば、最終的にスキルに振り回されることがなくなり、スキルのその先に行き着けるはずだ」
なかなか、難しいことを言ってくれる。自衛隊には演習場なんてものがあるから、人目を気にせず訓練ができるだろうが、うちだとそうはいかない。どこかに練習場を作るにしても、魔法というものを考えるとどこに作ればいい?
建物の中でフレイムなんて使ったら、使った本人が丸焼けになりかねない。うちもどこか辺鄙なところに演習場みたいなのを作るか? 通うのが大変そうだよなぁ。
「それでは始めよう。スキルを一切使わず掛かってきなさい。君が今ここで学ぶべきとことは、格上との戦いで経験を積むことだ。地力上げはここでなくともできる。まあ、この戦いでも地力は相当に上がるとは思うがね」
そうだな。俺に足りないのは格上との戦いの経験だ。七等呪位はレベル的には格上だが、実力的には同等か格下だからな。
「よろしくお願いします。で、どのくらいまで続けてもらえるんだ?」
「君の回復が続く限り」
塚原さん、言ったね? 俺のTP回復力を舐めるなよ?
「行きます!」
「おう、来い!」
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「どうした? 疲れた顔をしているが? まさか負けたわけではないだろうな?」
「もちろん、勝ちました。ですが、驚きの連続でしたよ。まだまだ、我々の知らない秘匿されている技術があると」
「彼の所属するクレシェンテは、まだ立ち上げてそれほど経っていない組織だが?」
「そうなのですか……。それでは彼らが自ら考え出したということですか」
さっき、思いついただけなんだが……。
それより、体感時間で一日、二十四時間くらい訓練していた。とても有意義な訓練だった。スキルを使わない訓練では、ステ値の差もあるだろうがそれ以上に技量の差で手も足も出なかった。
だが。得たものは大きい。自分より格上と戦ったことは、いつのも実戦の何倍もの経験となった。実戦で使ってきた剣術の動きを、トレースして動き少しずつ昇華していく。よく訓練でやっていることだが、格上相手にやると、どこが悪いのかよくわかる。
頭に残る瑞葵の三段突きも何度も試した。最後のほうには自分でも納得できるほどにまでなった。加速を使えば、本家の瑞葵を超えると確信があるほどに。
仮想空間は疲れないし、腹も減らないし、眠気もこない最高の訓練場。なにより時間を気にしなくていい。特訓で使っていたが、通常の二軍の訓練と俺の訓練でも使うべきだな。
お互いに離れて訓練すればいいのだ。
そして思う。このランクバトルって本来こういう風に、訓練に使う目的で作られたものではないかと。実は、裏技だったりして? いや、誰でも気づくよな。
塚原さんに礼を言ってみんなのいる場所に戻る。
訓練を終えた隊員が全員戻ってくると、明日の予定が説明される。
明日は富士箱根伊豆国立公園の青木ヶ原樹海での実地訓練が行われる。所謂、富士の樹海だな。結界場所からも近いことから相当数の
明日の青木ヶ原樹海は、一般人は一部を除き立ち入り禁止となる。名目上は清掃、と自殺者の遺体捜索なんてことになっているそうだ。昔ほど自殺者は少ないようだが、それでも年間三十人くらいはいるらしい。それとゴミのポイ捨てはどこも悩みの種。実際にゴミ拾いも並行して行うそうだ。
こういうことはレンジャー訓練も青木ヶ原で行われていることから、怪しまれることはないそうだ。
俺たちはいくつかのチームに分かれて青木ヶ原樹海に入る。全員別々になる。大丈夫だろうか? 二軍が不安だ。
帰ったら話をしよう。
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