171.二軍の試験八等呪位

 ファミレスには迷惑をかける分、売り上げに貢献しているからいいだろう。だが、会計時のレシートが1m以上ある。どんだけ食ったんだよ!


 クレシェンテの事務所に戻って、今日の狩りの総評を水島顧問にしてもらう。まだ、帰っていなかった月山さんと星野さん同席でだ。今の二軍が元ホルダーから見てどう映っているか知ってもらう必要がある。


「では、問題ないということね」


「明後日の昼に勇樹抜きで八等呪位を狩らせる。夜も勇樹抜きで七等呪位を狩らせる。要するに卒業試験だな。俺も手を貸さない。それで卒業できれば今後、健志たちだけで狩りをさせることにする」


「専属のサポートを付けるのね」


「俺と瑞葵、麗華で二体の七等呪位を狩る。健志たちの面倒をみると時間がかかりすぎる。時間短縮をしてこの時間だ。時間的余裕が欲しい」


 もうすぐ明日になる。ファミレスに寄ったのもあるけど、一時間程度だ。


「わかったわ。探しておく。男性が希望よね?」


「ああ、厳つくて、ちゃんと苦言ができる奴を頼む」


 二軍の男性陣からブーイングが上がる。そういうところがあるから、こういう人選になるんだよ!


 最後に魔法の相殺方法と魔法のTP上乗せについて軽く説明。魔法以外の属性攻撃相殺については検証待ちと言ってある。詳しくは時間を取って説明しよう。


 いつものどおりステ値を書かせ、ドロップアイテムを回収して解散。


 自衛隊との合同訓練が金曜、土曜の二日間。前乗りするから木曜は狩りができない。夏休みも、もう半月で終わる。結構、稼いだと思う。そろそろ、俺も引っ越しを考えよう。


 住むならやはりクレシェンテの事務所がある新宿かな。それ以外だと大学と事務所の間で池袋、大学のある日暮里か? 妹の五月花めいかがこっちの大学に来るかもしれないから、それも考えないとな。


 その前に一度実家に帰って両親に話をしないと駄目だろう。新幹線で日帰りもできるし、土、日で一泊してきてもいい。電話しておこう。


 火曜日も無難に狩りを終え、試験当日の水曜の昼間にクレシェンテの事務所に勇樹を除いた二軍が集まる。二軍以外のメンバーは俺と水島顧問、運転手の和泉いずみさん。


 場所は日中だと人目に付くので人のいない町田市の山林。ちょうど依頼の懸っている八等呪位を見つけた。車で一時間ちょいくらいの場所になる。


 途中で車を降りて民家の横を抜け林に入っていく。田んぼの横の遊歩道を歩くこと十五分、目的地に到着した。


 骸骨戦士スケルトンウォリアー 八等呪位 生前は名の知れた戦士。無念の死を遂げ、現世に思いを残し怨霊となる。


 うちのタンクが相手か。なかなかの強敵だな。回復薬を使うのは禁止にしよう。今日は試験だから簡単に倒されると試験にならない。


「回復薬の使用は禁止。使役化生モンスターは使用可。アンクーシャは貸してやる。時間は気にするな。今のお前たちなら余裕のはずだ。では、開始だ」


 二軍が相手する骸骨戦士スケルトンウォリアーは俺の骸骨戦士スケルトンウォリアーとは違い獲物はハルバードというよりポールアックスか? 長い槍に凶悪な斧刃が付いている。あれを振り回されると厄介だぞ。


 現にタンクの鬼豚戦士オークウォリアーが近寄れないだけでなく、ポールアックスに付いた鈎爪で盾を引っかけられ体勢を崩されている。が、二軍は人数が多く層も厚い。


 骸骨戦士スケルトンウォリアー鬼豚戦士オークウォリアーの相手をしている間に、健志が身体強化を使い骸骨戦士スケルトンウォリアーの懐に潜り込みシールドバッシュ。健志の持つ初撃クリティカルと身体強化で強力な攻撃となり吹き飛んでいく。


 そこに葵がプチファイアーバレットを撃ちこみ、いち早く疾走狼プロンプトウルフが飛び掛かり足に噛みつく。追いついたほかの使役化生モンスターたちが倒れている骸骨戦士スケルトンウォリアーをボコ殴り。


 遅れて朱珠が木霊を召喚して蔦で骸骨戦士スケルトンウォリアーの腕と胴をぐるぐる巻き。陸がスイッチで小妖精鬼拳士ゴブリンファイターと場所を入れ替え剣で攻撃したところで、骸骨戦士スケルトンウォリアーが黒い霧に変わった。


「余裕だったな……」


「余裕すぎたな……」


 昌輝なんか後ろにいておそらく盗むスキルしか使っていない。


 レベルは使役化生モンスターが上がったようだが、健志たちは上がっていないそうだ。


 思った以上に強くなっているな。正直、これでは試験にならない。使役化生モンスターなしでもう一度戦わせるか? いや、使役化生モンスターだって実力の内だ。


 夜の七等呪位で実力を見るしかないな。八等呪位と七等呪位の力は圧倒的に七等呪位が上。正直、無理ゲーと言われても仕方ないくらいの差だ。この差のせいで七等呪位を狩る者が少ないんだろうな。


 懸っているのは自分の命だから。





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