166.二軍の評価

 健志と鬼豚戦士オークウォリアーのタンク二枚看板は安定している。その代わり攻撃力に乏しいのが難点。そこはほかのメンバーが補えばいい。今は勇樹もいるし、昌輝も陸も育ってきている。陸はメインアタッカー、昌輝はサブアタッカーの遊撃タイプだ。


 それに猿猴えんこうがいる。前は俺の風祈りの錫杖を貸していたが、ドロップアイテムで三節棍を手に入れてからは、正直勇樹より頼りになる。なんといっても元の身体能力が高いうえ、戦い方がクレバーだ。勇樹たちにも見習ってほしい。


「勇樹がいなくても大丈夫そうじゃないか? 恢斗」


「甘いな。この二軍は勇樹がいてもいなくても、そろそろ崩れるぞ」


「どういう意味だね?」


 水島顧問もまだまだだな。こいつらの弱点を見抜けていない。


「前衛がおかしな動きをし始めましたわ」


 始まったか。今度は何にやられている?


 見ていた限り、地獄の門柱は物理攻撃をしていない。すべて魔法による属性攻撃。装備さえちゃんとしていれば属性攻撃はそれほど怖くはない。


 しかしだ、こういう化生モンスターは属性攻撃以外の攻撃手段を持っていることが多い。その攻撃こそが、この二軍の最大の弱点攻撃になる。


 まあ、二軍だけではなく俺たちも嵌ると痛手になることは否めない。


 その攻撃とは、状態異常攻撃だ。


 毒、麻痺、魅了や混乱などの精神異常攻撃。この二軍、物理攻撃には強いが、こういった絡め手に滅法弱い。元々、勇樹もこの状態異常攻撃に弱かった。


「朱珠、葵、状態異常だ。回復してやれ!」


 二人がアンクーシャを使って回復させていく。二人はTPに余分にSPを振ってはいるが、それでももうTP切れになるだろう。


 状態異常を回復させるには各種状態異常回復薬を使うか、値段の高いたいていの状態異常に効果のある状態異常回復薬を使うしかない。


 あとは、今のようにアンクーシャを使うか、プチ聖魔法のLv1のプチ回復かLv4で覚えるプチ異常回復を使うしかない。だが、Lv1の回復は効果が低いので治らないこともある。


 聖魔法のスクロールも早めに欲しいところだ。ヒーラーはPTに一人は欲しい。一人いるだけでも生存確率が格段に跳ね上がるだろうからな。


「なるほど、これが弱点か……。防ぐのは難しいと思うが?」


「そうでもない。確かに毒や麻痺は耐性を持っていないと厳しいが、精神攻撃は己の心の持ちよう次第だ。体を鍛えても心を鍛えないとああなる」


「確かに、そうかもしれないな」


 二軍連中はメンタルが弱い。健志なんか強そうに見えるが虚勢を張っているだけ。自分より強い奴に一旦噛みつくが、それが無駄だとわかると懐柔策を取ってくる、よわよわだ。


「心を鍛えるか……難しいことだよ。恢斗」


「だが、何かしら考えないと、いつまでも弱いままになる」


「座禅など良くなくて?」


「そうだな。試す価値はあるだろう。自衛隊ではどうしているんだ?」


「基本、入隊すれば一度精神面を追い込む訓練がなされる。それに、ホルダー部隊はある意味エリート部隊だからな、日々厳しい訓練を行っている。自然に精神も鍛えられるだろう」


 難しいな。それを納得して入隊する自衛隊だからできることだ。民間企業ではなかなそれはできない。特に健志たちは成り行きでホルダーになり、クレシェンテに入ったようなもの。まだ、そこまでの覚悟などないだろう。


 やはり、一度スポーツジムにでも放り込んで鍛えさせるか。スポコンものはあまり好きではないが、それしかないな。月山さんに相談しよう。


 状態異常から立ち直り、体制を立て直した二軍メンバー。このまま戦っても勝てるだろうが、この後がまだ詰まっている。


「止めを刺しにいけ!」


 俺の声で前衛が地獄の門柱から散って距離を取る。


 そして、現れたのが騎馬兵と歩兵三人。勇樹のレベルが上がりTPが増えたことで使えるTPが増えたので人数が増えた。勇樹曰くTP100で騎馬兵一人+歩兵二人、TP200で騎馬兵一人+歩兵三人らしい。


 騎馬兵が突撃をかまし、歩兵が追撃する。何度見ても理不尽な攻撃だ。特訓で何度も戦ったが、勇樹の実力が上がることで騎馬兵と歩兵の強さが上がった。天井知らずの優秀なスキルだ。


 騎馬兵と歩兵の攻撃で倒れた地獄の門柱を、俺がそのまま立てないように間に入って押さえつける。


 何度もやっているので、俺の意図を理解している二軍連中が寄ってきて地獄の門柱をボコ殴り、黒い霧になって消えていく。


「どう思う?」


「勇樹くんがいなくても、七等呪位は倒せるのではないか? ただ、勇樹くんが抜けると、決め手がなくなり倒すのに時間がかかるだろう」


 やはり、そう思うか。だが、そこら辺はどこのホルダーでも同じだろう。勇樹が突出したスキルを持っているだけだ。それに、七等呪位と戦っていれば剣技系の書や攻撃力が高い武器が手に入る。時間が掛かっても七等呪位を倒せるなら問題はない。


「回復に使っていた、あれはなんだったのだ?」


 本当は見せたくなかったのだが、二軍が回復手段を覚えるためには使うしかなかった。それに少しは情報開示してもいい頃だろう。


「回復魔法の付いた杖だ。あれを使っているとBP回復スキルを覚える。うちの秘匿する情報のひとつだ」


「そうか……」


 すべては教えない。ホルダー管理対策室に情報漏洩されたとしても、アンクーシャがなければどうしようもないからな。アンクーシャ、もう一本欲しいな。


 ぱお~ん、どこかにいないだろうか?



猫(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ猫


猫又が術を放ち、埴輪の剛腕が唸る! ……理想。実際は、主人公が置いてけぼりで……。

そんな、ちょっと変わった現代ファンタジー。


スメラミクニラビリンス~月読命に加護をもらいましたがうさぎ師匠には敵いません~

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884258759



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