163.二軍の面談
昼飯を食べ終わった頃、最初にやって来たのはやはり勇樹。
「お疲れ様です~。今日こそは勝ちますよ~! って、あれ?」
勇樹とはあれからも特訓を続けている。最初はあんなに気落ちしておどおどしていたが、三回目くらいからは逆に反骨精神でかやる気を漲らせてきた。
「そういうのは一度でも、まともなダメージを与えてから言え」
勇樹も慣れてきて腕も上がったことから、俺の体に掠る程度の攻撃ができるようになってきた。掠る程度でまともな攻撃は未だに一度もないけどな。
「そういえば、今日からみなさんご出社でしたね」
家で瑞葵や翔子に会っていないのか? よく見れば勇樹の肩掛けバッグにあの不思議な人形が付いている。お揃いか!?
勇樹もみなさんからお土産をもらっている。ほぼお菓子だが。翔子は喜ぶだろう。
「ちーっす。って、な、なんなすか!? このハーレム状態! それも超絶美人が二人も! アニキのこれ? っすか!」
小指を立てるな。お前、殺されるぞ? それも社会的にも。
そして後ろにいた朱珠が健志の頭をど突いた後、頭を押さえつけ無理矢理頭を下げさせる。
「申し訳ありません! この度、こちらにご厄介になります、
二軍メンバーにも常識人がいて助かる。
ほかのメンバーも集ってくる。そして、最初に驚くのはやはり瑞葵と麗華の美しきお嬢様コンビにだ。葵などはお姉さまと呼ばせてください! などと宣っていた。
さすがにこの人数だと中央の部屋では狭い。なので会議室に移動。
「まずは自己紹介からお願いするわ。個人面談はその後に行うから。私は
「副所長の後になってしまったが、所長の
「
何が癪なのかわからないが、こうして全員の自己紹介が始まる。俺と水島顧問、勇樹は何度も顔を合わせているので最後となった。
自己紹介が終わった後は個別に別の部屋で面接。面接官は麗華、月山さん、水島顧問の三人で行った。残りの社員は討伐依頼の処理を始めている。
提出用のドロップアイテムをホルダーから出しながら瑞葵と話をしている。
「そんな……。勇樹にレベルで並ばれたなんて……屈辱ですわ!」
「ひ、酷い……」
勇樹はカースト順位が低いからこの程度の扱いだ。あの屋敷でも同じだろう。妹の順位が高いだけに憐れだ。
「それで、あの方たちの実力はどうですの?」
「勇樹が入れば七等呪位を倒せるが、勇樹が抜けると厳しい戦いになる。ヒーラーがいないので危なっかしい。まあ、八等呪位相手なら問題ない」
「レベルはいくつですの?」
「六、七だな」
「むっ」
瑞葵の眉間に皺が寄る。後から入ってきたものたちが、もうすでにすぐ後ろにいるのが納得いかないようだ。
じゃあ、旅行なんかに行くなよ!
「恢斗、レベル上げをしますわよ!」
「わかってるって」
といっても、戦う前に筋トレさせるけどな。瑞葵も麗華も身体強化スキルを持っていないからな。
二軍メンバーの面談が終わった。二軍メンバーは中央の部屋でお菓子を食べながら休憩してもらう。お土産のお菓子類は大量にあるので消費してもらうのにちょうどいい。
俺たちは別室で面接の話を聞く。
「何人かはアレだけど、問題はなかったわ」
アレね。何人かと言っているが健志のことだろう。まんまヤンキーだからな。勇樹や水島顧問以外はそういう世界とは無縁だろうから、仕方がないといえば仕方がない。
「あいつらのほかに、アウトサイダーの一組と契約したい。その一組とは別に個人で来る奴も数人来るかもしれない。討伐依頼や討伐後の処理をクレシェンテで代行する代わりに、錬成アイテムや珍しいアイテムがあれば買い取ることにしたい」
「その人たちは問題ない人たちなんだろうな? 恢斗」
麗華の疑問ももっともなのだが、正直わからない。見た目はヤンキーだったが、半グレって感じではなかった。考えもしっかりしていたので見た目だけのヤンキーなのかもしれない。個人組はなんともいえない状況。ホルダーを続けるのかも不明だしな。
「仲介するだけだからそれほど問題はないだろう。何かあれば切ればいいだけだ。だが、ちょっとばかしアレなので、水島顧問に少しの間対応をお願いしたい」
「いいだろう」
男性の社員が入ればその人に担当を移行すればいい。
錬成用のアイテムが多く揃うのはいいことだ。
そうなると、早く錬成を担当するホルダーが必要になるな。
それが、一番難しいところだな。
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