159.秘剣の力

 本当に心眼を手に入れたかは別として瞑想修行を続けていると、戦っている使役化生モンスターたちのほうに動きがあった。あいつらなにをやっているんだ?


 どうやら、使役化生モンスターたちをおちょくっていた靴職人妖精レプラコーンだが、あまりにも使役化生モンスターたちに反応がないので逆ギレしたみたいだ。あほか?


 筋トレしていた鬼豚オーク小妖精鬼ゴブリン空腹狼ハングリーウルフにも靴職人妖精レプラコーンの相手をして来いと送り出す。危なくなったら逃げろとは言ってある。


 反応がない使役化生モンスターたちをなんとかリアクションを取らせたいと、必死におちょくって靴職人妖精レプラコーン靴職人妖精レプラコーンを囲んだ使役化生モンスターたちは無反応。君たちはなんで攻撃しないのかな?


 動き疲れた靴職人妖精レプラコーンがゼイゼイと肩で息する姿は哀愁さえ感じる。


 靴職人妖精レプラコーン、今度はリアクションしない使役化生モンスターたちに説教を始める。大袈裟なジェスチャーで駄目出ししているように見える。ボケ突っ込みは大事だぞってか? 

 

 その間おとなしくしている使役化生モンスターたちは困惑顔。っていうか、黙って聞いていないで攻撃しろよ!


 靴職人妖精レプラコーンはそれでも反応薄っと感じ、顔を真っ赤にして巨大化して暴れだす。前の二倍くらいの大きさになったな。上半身はさらに倍になりマッチョ体形に。


 世紀末覇者か!? 七つの傷があってもおかしくない姿だ。


 そんな姿で暴れ回る靴職人妖精レプラコーン使役化生モンスターたちは防戦一方。動きが遅くなった反面、力は倍以上になった感じだ。タンク役の骸骨戦士スケルトンウォリアーが攻撃を受けきれていない。


 使役化生モンスターたちにとって相手が悪かったようだ。


 仕方がない。そろそろ、動くか。


 立ち上がり、太刀・焔を構える。


「下がれ」


 使役化生モンスターたちが戻ってくる。靴職人妖精レプラコーンはまだ怒り心頭のままで、俺を睨みつけ今度はその怒りの矛先を俺に向けたようだ。


 おうおう、やる気だね。だが、俺もやる気満々?


 なので、いっちょうかましてやりますかね。


 本邦初披露、いやほかの国でも披露していないんだけどね。まいいか。


 秘剣ソリッドスラッシュ!


 上段に構えた太刀・焔を振り下ろす。


 ピキーンっと金属が破断したような音がし、己が見ている景色が驚いた顔の靴職人妖精レプラコーンを中心に斜めにズレる。


『レベルが21になりました』


ーーーー

ーーー

ーー


 一撃かよ。凄ぇな、秘剣……。


 これは七等呪位卒業か? こうなってくると瑞葵と麗華のレベル上げが急務になるな。今の状態では俺以外誰もついてこれないだろう。また俺以外レベルは一桁代だ。レベル十五は欲しいな。


「な、なんすか!? あれは!」


「新技だな」


「一瞬、世界が割れました!」


 興奮気味に葵が捲し立て、ほかのメンバーも頷いている。


 世界が割れた。言い得て妙だな。


 俺もそんな感じがした。あれはただ斬ったって感じじゃなかった。なんというか、すべて……そう、物だけでなく音、時間違うな、いうなればその空間そのものを斬ったって感じだ。


 あれは避けようと思っても避けられるような攻撃ではない。言うなれば、必中必殺の剣。


 恢斗は必殺技を手に入れた!


 これがあればランキングバトルで負けはないんじゃね?


 今の俺でも勝てないそこそこ強い奴はいる。だが、それは絶対的な強者ではない。レベル差による少しのステ値の違いと、場数を踏んだ経験の差でしかない。その差だってすぐにひっくり返せるくらいのものだ。


 現守護のホルダーランク483の嶋崎さんも、然り。あの戦いからレベルが四つ上がっている。本気を出していなかった嶋崎さんだが、ステ値で並んだかもしれない。あの時は加速も使っていなかった、それに加え秘剣もある。嶋崎さんが本気を出したところで、負ける要素が見当たらない。


 嶋崎さんも奥義は持っていても秘剣は持っていないだろう。水島顧問が嘘を言っていなければ、奥義の書や秘剣の書は超レアアイテムだということだしな。


「よし、帰るぞ。飯食ってから帰るが、なに食いたい?」


 事務所に向かいながら、みんなで相談が始まる。


「アニキ、天ぷらが食べたいという意見にまとまりました!」


 天丼じゃなくて天ぷらか? スマホで調べる。クレシェンテ近くに良さげな店を発見。水島顧問に電話して合流するか聞くと、行くという返事が返ってきたので店の場所を教える。すぐに店に電話して予約を入れる。総勢七人になるが問題ないとのこと。


 着いたお店はこじんまりとした良さげな雰囲気。カウンター席は六人までのようで、座敷のテーブル席二つを用意してくれた。


 俺と水島顧問はお任せコース、ほかのメンバーは十二品コースを選択。ビールを六本とウーロン茶も頼む。


 朱珠が俺と水島顧問のコップにビールを注いでくれる。男に注がれるよりはやはり女性に注がれたほうが嬉しい。葵くん、注いでくれてもいいんだぞ?







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