158.筋トレ修行

 葵の息が整うまで休憩。


 その間に不死徒弟リッチ・アプレンティスに止めを刺す段取りを説明。


 まず、骸骨戦士スケルトンウォリアー骸骨魔術師スケルトンウィザード猿猴えんこうを下がらせ、コントロールのいい昌輝が回復薬を投げつけ怯ます。不死徒弟リッチ・アプレンティスが怯んだところで、全員で攻撃。途中、順番に間隔を開けて回復薬をぶつけるを繰り返す。


「おーけー?」


 全員が頷いた瞬間、向こうで爆発が起こる。


 自爆攻撃を使いやがったな! 使役化生モンスターは……無事のようだ。


骸骨戦士スケルトンウォリアー骸骨魔術師スケルトンウィザード猿猴えんこうを下がらせろ! 昌輝、回復薬をぶつけろ!」


「よ、よし! おりゃあー!」


 不死徒弟リッチ・アプレンティスはTPを使い切って硬直状態。それもあって昌輝の投げた回復薬がぶつかり割れ、不死徒弟リッチ・アプレンティスから白い煙が上がる。


「行け!」


 全員が走り出し、取り囲む。動き出した不死徒弟リッチ・アプレンティスに健志が回復薬をぶつける。不死徒弟リッチ・アプレンティスがのたうち回る。そして袋叩きが始まる。


 不死徒弟リッチ・アプレンティスが自爆攻撃を使ってくれたおかげで、安心して見ていられるな。まずはTPが切れる寸前までスキルを使う。その後は武器で攻撃するだけ。


 ほどなく、不死徒弟リッチ・アプレンティスが黒い霧に変わった。


 結果を見れば圧勝だった。まあ、闇耐性持ち三体が頑張ったおかげだ。不死徒弟リッチ・アプレンティスに事前に自爆攻撃を使わせたことが勝因だろう。


 健志と朱珠が身体強化を覚え、昌輝が投擲を覚えた。いい感じだ。


 次は俺の番だ。アスレチック広場のすぐ横のいきいき広場に来ている。


 靴職人妖精レプラコーン 七等呪位 アイルランドの靴職人妖精。働き者でお金持ち。赤い服のレプラコーンは相当なイタズラ好き。稀に黄金の入った壺が得られる。


 小さな顎髭を生やしたおじさんだな。身なりはしっかりとした職人って感じだ。だが、服の色は赤だな。これはレアを引いたかな?


 全員から不死の指輪と使役化生モンスターのカードを回収。俺一人なので六体の使役化生モンスターを召喚できる。カードが一枚多いな。今回、銀腐犬コボルドは保留だな。


『バトルフィールド展開』


骸骨戦士スケルトンウォリアー骸骨魔術師スケルトンウィザード猿猴えんこうは攻撃。残りは筋トレだ!」


 鬼豚オーク小妖精鬼ゴブリン空腹狼ハングリーウルフがえぇーまじかよ~って感じで俺を見てくる。えぇーじゃない、いいからやれ! やれやれって感じで腹筋を始める。


 よし、俺も一緒に筋トレ修行だ!


 戦いの行方はちゃんと並列思考で確認している。攻撃なのか靴職人妖精レプラコーンは靴を投げつけて笑っている。イタズラのつもりか? よくわからん。


 それにしても靴職人妖精レプラコーンは身軽だ。奇妙な動きをしながらも、的確に使役化生モンスターたちの攻撃を避けている。軽業師やピエロみたいだ。


 これは長引きそうだ。その分、筋トレに集中できる。


 そして、筋トレ三セットが終了。


 向こうはまだ遊んでいる。お尻ぺんぺんしたり、ハンマーを投げたり、急に鼻をほじっくたりと。馬鹿にして怒らせようとしているんだろうな。使役化生モンスターには通じないけど。


 まだ、大丈夫そうだ。


 筋トレしていた使役化生モンスターも三セット終了。


「続けろ」


 えぇー、俺たちにも戦わせろよ~と目で訴えかけてくるが無視。


「やれ」


 渋々と筋トレを始める使役化生モンスターたち。


 俺はどうしようか? 筋トレでは芸がないな。ここは瞑想でもしてみるか。とはいっても、並列思考は続ける。使役化生モンスターたちの戦いを意識しながら、片方では心を落ち着かせ無の境地を目指す。不思議な気分だ。


 向こうはまだ靴職人妖精レプラコーンに馬鹿にされて有効打がない様子。瞑想している俺のほうはだいぶ心が落ち着き静けさが心を満たしていく。そんな俺をもう一方の思考で第三者的に見る。


 心が落ち着いた分周りの音や風が体に触れる感触などの、すべての感覚が研ぎ澄まされてくる。第三者的に別の思考で瞑想している自分を見て気づく。その感じる感覚の中に、すぐそこで行われている戦闘も含まれていることに。


 戦う音、動くことによる起こる風や匂い。それとは別の集団のことも。健志たちだな。息遣い、心臓の音まで聞こえてくる。


 目で見て感じているわけではない。実際に目を瞑ってみたが同じように感じ取るとことができる。


 なんの役に立つかなんて、まったくわからない。


 でも、面白い。


 俺は心眼を手に入れた!





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