149.気まずい

 そんな、弟子に厳しいスケルトン師匠が赤黒い光に包まれる。


 瞬間に間合いが詰められ、剣が襲いかかってくる。


 速い、そして剣を受けた左手が痺れる。なんて、重い攻撃。


 弟子に一撃をもらいギアを一段上げてきたようだ。スケルトン師匠、身体強化系を使うなんて卑怯ですよ!


 なら、こちらもギアを上げましょうかね。


 加速。


 前に戦ったときは身体強化系を使わない状態で、俺の加速より少し遅いくらいだったが、今は同等の速さ。スケルトン師匠の身体強化、半端ねぇ。


 俺が加速を隠しているので、普段使っていないせいでレベルが低いせいもあるだろう。最近、狩りの撮影をしているので、なかなか大っぴらに使えない。これからは、撮影は二軍だけにしてもらおうか? 撮るにしてもたまにだな。


 それにしても、本当にスケルトン師匠は強いな。加速を使ってもまだ同等。だが、いい訓練にはなっている。このまま訓練を続けて日を跨いだらどうなるのだろう? 戦い途中で消えるのか?


 あいつらもいるしな、そろそろ決めようか。


 といっても、ほぼ力は同等。一進一退って感じ。スケルトン師匠は飛ぶ斬撃も解禁してきている。なら、こちらも少しだけ解禁しよう。


 太刀・焔の炎尾でスケルトン師匠を巻き付け引き寄せ、小太刀・水禍に水属性を付け連撃。このパターンは鉄板になりつつあるな。


 霊子ナイフに武器合成枠がもう一つ余っているので、小太刀・水禍を合成しようか迷う。能力は文句がないんだが、如何せん刃渡りが短いんだよなぁ。


 小太刀・水禍から風祈りの錫杖に持ち替え、鎌鼬を放つ。四枚の風の刃がスケルトン師匠を斬りつける。


 炎尾に巻き付かれ動きが制限されているスケルトン師匠はすべての刃をもろに受け体中から黒い霧が吹き出す。


 風祈りの錫杖で追撃するが、炎尾を引き千切り盾で受けられ逆に剣で反撃される。BP300持っていかれた。今の二軍だと一撃すらもたないな。誰かをタンクとして育てたほうがいいかもな。健志あたりか?


 風祈りの錫杖を氷薄の剣の持ち替え捕まえられずとも炎尾をけん制で放ち、スケルトン師匠の避けるであろう場所に水球を連発。さすがのスケルトン師匠も盾で水球を連続で受けるが勢いを殺せず吹き飛ぶ。


 想定どおり! ここで氷烈を吹き飛ぶスケルトン師匠にお見舞い。氷の礫の嵐がスケルトン師匠を襲う。それでも立ち上がるスケルトン師匠。


 まだ、倒せないか!?


 だが、それも想定の一つ。水球で水浸しになった後に氷の礫の嵐を喰らえば……そう、凍りつく!


 氷薄の剣に氷属性を付け、これが最後と全身に力を込めスケルトン師匠との間合いを詰め獅子連撃。宙を舞うスケルトン師匠。


 くっ、まだ倒し切れないか!?


 ならば、落ちてくるスケルトン師匠に太刀・焔と氷薄の剣での二刀流連続斬り。もうこの後はないという覚悟で息を止め腕を振るう。


 もう、腕が上がらない……。


 目の前に、スケルトン師匠が俺を見据え立っている。


 まじかよ、削り切れなかったか……。


『レベルが20になりました』


ーーーー

ーーー

ーー


 か、勝てたのか?


 スケルトン師匠が徐々に黒い霧になっていく。黒い霧になりながらも、スケルトン師匠が笑っているように見えた。見間違いか?


 強かった。スケルトン師匠はまじ強かった。最後、負けたと思った。まじでヤバいと思ってデカいことを言っていながら、アンクーシャを使うことを考えていた。もしかしたら、スケルトン師匠にそれを見透かされていたのかもな。だから、笑っていたのか? 情けない弟子だなと。


 まだまだ、俺は弱いな。ステ値に技量が追い付いていない。それに、ここぞという時の必殺技、大技が俺にはない。どうするべきか……。


「す、凄い戦いでした! アニキ!」


 ほかの四人も興奮気味で俺を称えてくれるが、内心気まずい。逆に勇樹はばつが悪そうな表情で俺を見ている。さっきの自分と比べているのだろう。


 だが、何度も言うが。凄く気まずい。アンクーシャ、使わなくてよかったぁ……。


「よ、よし、帰るか。どこかで飯を食っていこうぜ。経費で落とすから好きなだけ食っていいぞ」


 称えられたことに対する本当のこと言えない気まずさを誤魔化すために、話題を変える姑息さ。


 俺って小者だな……。








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