146.筋トレ

 男どもは戦わないことに安堵している反面、勇樹だけが戦うことに憤りを感じているな。女性陣は普通に安堵している。


「勇樹が戦ってある程度戦ったところで、全員で袋叩きにして止めを刺す。化生モンスターが動けないように押さえておくから安心しろ」


 勇樹に銀腐犬コボルドのカードを渡す。


「勇樹が使え。まだ弱いから前線には出すなよ。あとこれを被っとけ」


 雪精の帽子を頭に載せる。似合わねぇ。コーディネーとがめちゃくちゃだな。


 骸骨戦士スケルトンウォリアーはまだ復活していなかったし、今回は六人PTなので使役化生モンスターは一人に付き一体しか出すことができない。なので、銀腐犬コボルドのカードを渡した。


 せっかくなので、骸骨スケルトンのレベルも上げさせよう。


 葵を呼んで不死の指輪を渡す。


「まだ、会ったばかりで困りますぅ~」


 デコピンを喰らわす。


「痛ぁ!?」


「そいつはマジックアイテムだ。戦闘が始まったら骸骨スケルトン召喚と言え。そして、適宜攻撃と指示しろ」


「マ、マジックアイテム!? わ、わかりました! マジックアイテム、えへへへぇ~」


 こいつは腐臭だけでなく、残念臭も漂わせているな。注意が必要だ。


 最期にPTを組ませる。


「準備はいいな?」


「「「「「「はい」」」」」」


 さて、やるか。


「バトルフィールド展開」


 勇樹が代表でバトルフィールドを展開した。


銀腐犬コボルド召喚! 下がって防御に専念するんだ」


「ス、骸骨スケルトン召喚? 、攻撃して!」


 薪ってなんだよ! 適宜だよ! 骸骨スケルトンが困惑しているぞ!


「薪じゃなくて、適宜な」


「てき、適当に攻撃して!」


 完全にテンパっているな。まあ、間違いではないのでいいか。


 それと勇樹の腐犬コボルドの顔はセントバーナードだな。愛嬌があって怖くはない。勇樹の相棒にはいいかもな。


「身体強化使えよ」


「ハッ!? はい!」


 こいつ、また忘れてたな……。


 勇樹がガンダルヴァに向かっていったので、こっちも始めよう。


「よし、こちらも始めるぞ! 腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワット三十回三セットだ。ただ、漠然とするのではなく、どこの筋肉を鍛えているか、どう動かせば効果的かなどを考えながら、真剣にやれ。始め!」


 風祈りの錫杖で地面を叩くとシャンと音が鳴る。


「い~ち、に~、さ~ん、よ~ん……」


 男性陣は問題ない。朱珠もなんとかついてきている。問題は自宅警備員の葵だ。一人だと一回すら腹筋ができない……。仕方ないので葵のつま先を踏んで押さえてやる。それでなんとかだ。


 一セットは無難にこなしたメンバー。葵以外はな。葵はもうグダグダだ。体力なさすぎだろう! ほかとのメンバーとの差がありすぎる。


「そっちは順番に声を出して数えて進めてろ」


 すぐに二セット目が始まる。葵はまだ肩で息をしている。こりゃぁ、まだ駄目だな。


「葵は高校や短大でスポーツをやっていなかったのか?」


「わ、わたしは、マ、マン研、ひ、一筋です!」


 一瞬、キリっとした笑顔を見せてから、また青い顔して肩で息をしている。


「これはジムに通うしかないな。必要最低限の体力と力をつけろ。じゃないと死ぬぞ?」


「い~や~で~すぅ。そ、そんなお金ありません!」


 さすが自宅警備員。金欠か……。


「当分の間、俺と勇樹が付きっきりで七等呪位狩りをする。正直、目が飛び出るほど稼げる。ジムに通うくらいの金なんて雀の涙と思えるほどのな」


「「「ほ、本当ですか!」」」


 葵以外の声も交じっていたな。真面目に筋トレしやがれ!


「今日、狩りが終わったら、どの程度稼げるかシミュレートしてやる。楽しみしていろ。ほら、やる気が出たろ? 二セット目始め!」


「ひぃ~」


 筋トレ組は問題ない……と思う。


 問題は勇樹だ。ガンダルヴァ相手に苦戦している。ガンダルヴァは翼があるだけに空をある程度飛べるようだ。それを利用して、勇樹の攻撃を躱し、ギターのようなもので衝撃波を出し反撃している。


 勇樹の動きは悪くはないが、ガンダルヴァが上手というところだ。今回は骸骨戦士スケルトンウォリアーの援護もないから尚更だろう。


 だが、こういう相手と、どう戦うかを考えることも大事。ただ我武者羅に戦うのではなく、例えば青龍刀・麒麟の雷光を織り交ぜて戦うとかできないのか? まだまだ、勇樹は場数が足りていない。


 しょうがない、少し手を貸してやろう。


 ホルダーから八角棒手裏剣を出し、ガンダルヴァの羽目掛けて投擲。こちらをまったく警戒していなかったのか、ガンダルヴァの羽にクリーンヒット。浮力を失い地面に顔面から叩きつけられる。痛そう。


 勇樹がここぞとばかりに追撃するが、ガンダルヴァが怒りの表情で腰に付いた太鼓を乱れ打ち。ガンダルヴァが淡い緑の光を発し始める。


 途端、ガンダルヴァがの動きが変わる。明らかに素早くなった、それだけではなく、ガンダルヴァのキックを青龍刀で受けた勇樹がたたらを踏む。


 身体強化系だな。


 勇樹の優位性が一つ減ったな。






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