145.二軍
那須とは後日会うことを約束して貸し会議室で別れた。残りの五人はこのままクレシェンテの事務所に連れていく。
契約書は月山さんたちの夏休みが終わってからでいいだろう。だが、その前にこの前手に入れた誓紙を使う。
どのくらいの拘束力があるのかわからないので、細かくは書かない。要約すると、クレシェンテに対して不利益になるようなことはしないと言った感じの文章を書いた。その誓紙に各々名前を記載し母印を押してもらう。
何も起きないな。これでいいのだろうか?
次は五人の適合率とスキルの確認。
うーん。レアスキルっぽいのは木霊召喚くらいか? 名前のとおり木霊を召喚できるスキルだ。初撃クリティカルも最初の攻撃が必ずクリティカルになるというもの。最初の一回だけなのだろうか?
盗むは
スイッチは使用すると対象者と使用したホルダーの位置が変わるというもの。緊急回避で役に立ちそう。認識阻害は忍者頭巾に付いている奴だ。プチ火魔法はまあプチ火魔法だな。
適合率は似たり寄ったり。二軍ってところか。今後に期待だな。
最初から持っていた武器は無いよりマシって感じのものばかり。まあ、当分はスキルを覚えさせるのが目標なので必要ないだろう。
五人だから勇樹を入れると六人PT《パーティー》になる。俺のレベル上げは別にやるしかないな。
戸山公園はまだまだ七等呪位の依頼が出ている。それもすぐ近くの場所だ。勇樹たちに狩らせた後に俺が狩っても時間的には問題ないだろう。
となると、これとこれとあと予備で二か所をポチっとな。
「お疲れ様で~す。って!? あ、あれ~?」
勇樹が来たな。
「今日から新しくクレシェンテに加わるホルダーだ。お互い挨拶しろな」
勇樹はこの間の三人を覚えていたみたいだな。その三人は勇樹を覚えていなかったようだが。
お互いに挨拶が済んだところで健志から質問が投げられる。
「アニキ、どう見てもこいつは高校生くらいにしか見えないんですが?」
ほかの四人も同じ意見のようだ。
「勇樹は高校一年だ。この夏休み中、お前らと一緒に鍛える。どうしてかって? 将来、クレシェンテに入ることが決まっていて誓約も交わしているからだ」
「それなら、那須くんはどうして駄目だったのでしょうか?」
昌輝が納得いっていないような感じで聞いてくる。
「勇樹はな、お前たちと違ってエリートなんだよ。うちの幹部候補だ。今は納得できないだろうが、この後の狩りでその意味はすぐにわかる」
勇樹が俺の言葉を聞いてでへへへ~とデレやがった。男のデレなんて見たくもない。それとそういうところが勇樹の駄目なところだ。矯正が必要だな。
五人はあまり納得していないようだが、実際に七等呪位との狩りになればわかるから、今はこのままでいいだろ。
時間もまだ早いので過去の狩りの映像を見せる。そして、若い子と話すのが楽しいのか水島顧問が解説を始める。あんたは資料整理を優先させろよ!
外が薄暗くなってきたところで移動を開始。水島顧問も来たがったが人数が多くなるのでお断り。仕事しろよ! 今日はもう事務所に帰らないと言って事務所を出た。
道中はギスギスした感じはなく、意外と和気あいあいと話をしながら歩いていた。
俺に対してすぐにドスを抜いた同一人物とは思えないほど落ち着いており、仲間に対して面倒見がいい。意外だ。
運動公園にはまだ人がいたので、人がいない日向ぼっこ広場に来た。
ガンダルヴァ 七等呪位 インドラに仕える半神半獣の奏楽神団員。音を使った攻撃があり、異常状態を引き起こさせる。風を操り空も飛ぶ。
なんか男版ハーピーって感じだな腰に太鼓をつけていて、ギターみたいな楽器を手に持っている。こいつは技巧派っぽいな。勇樹が苦手とするタイプだ。訓練にはちょうどいいな。
全員があれと戦うのかよ~という表情で俺を見る。
「作戦を説明する。勇樹はいつもどおり戦え。ほかは離れた場所で筋トレだ。以上」
「「「「「筋トレってなんだよ(ですか)!?」」」」」
「勇樹以外は戦わない。お前たちは身体強化スキルの発現を優先させる」
「「「「おぉー」」」」
「身体強化?」
朱珠以外は知っているようだ。朱珠はゲームとかしない派か?
「身体強化スキルはホルダーの基本スキルだ。有用なスキルだからまずはこれの取得を行う。覚えなければならないスキルがいくつかあるから、実際に戦うのはとうぶん先だ」
今のこいつらを七等呪位にぶつけたら死んでしまう。
まずはスキル取得からだ。
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