138.氷の彫像

 土嚢袋一つ目を投げ切り二つ目に入ってくると、雪だるまジャック・オー・フロストの動きが徐々に落ちてくる。約30kg以上の砕石が体に埋まっているから当然か?


 土嚢袋二つ目を投げ切る頃に、スゥーっと投球モーションが体に馴染んだ感覚を覚える。これは覚えたか? やっとだな。


「行きます!」


 やっと不思議な踊りオンステージが終わり、勇樹が戦線復帰。


 戦線復帰した勇樹に代わり、骸骨戦士スケルトンウォリアー雪だるまを呼び雪だるま外装を粉砕。一応、BP回復もしておく。赤星さんはとても残念そうな顔をしている。まあ、見た目が可愛い雪だるまかの中から骸骨が現れれば、誰でもそう思うわな。


 体に埋まった石のせいで雪だるまジャック・オー・フロストの動きが悪くなり、そのうえ骸骨戦士スケルトンウォリアーも戦線復帰したことで、雪だるまジャック・オー・フロストは肉弾戦を止め魔法に切り替えてきた。


 無数のつららが勇樹たちを襲った後、雪だるまジャック・オー・フロストの体の周りに小さい雪ダルマが無数に現れる。あれが赤星さんの言っていたやつか。


 やらせるかよ!


 火炎の杖を持ちフレイムを発動。雪だるまジャック・オー・フロストが炎に包まれる。そして瞬時に小さい雪ダルマが消え、雪だるまジャック・オー・フロストがのたうち回る。


 やはり、火、炎系が弱点か。


 炎の柱が収まると、幾分かスリムになった雪だるまジャック・オー・フロストがいて、悪人顔がげっそりっとなっている。芸が細かいな……。炎樹を思い出すな。雪だるまジャック・オー・フロストも相手が女性だったら態度を変えるのだろうか?


「畳み掛けろ!」


 勇樹と骸骨戦士スケルトンウォリアー雪だるまジャック・オー・フロストの攻撃を開始。雪だるまジャック・オー・フロストは防御に徹している。何かあるな。


「気をつけろ、何かする気だぞ」


 と言っても何をするかわからないので、勇樹たちの判断に任せるしかない。


 雪だるまジャック・オー・フロストが鋭い一回転をかまし、勇樹と骸骨戦士スケルトンウォリアーを一瞬体勢が崩したところで両手を天に伸ばす。


 ドーン! という音と共に、強烈な猛吹雪が雪だるまジャック・オー・フロストを中心に吹き荒れる。


 あー、これはヤバいやつだな。勇樹の奴、大丈夫か?


 吹雪が晴れると氷の彫像となった勇樹と骸骨戦士スケルトンウォリアーが現れた。


 それだけでなく、スリムだった雪だるまジャック・オー・フロストが元に戻っていやがる。属性攻撃で回復できるみたいだな。所謂属性吸収って奴か、面白い。


 だが、このままだと勇樹たちが危険なので、加速を使い雪だるまジャック・オー・フロストを蹴り飛ばす。


 で、この氷の彫像どうすればいいんだ?


 勇樹の顔を見ると目が泳いでいる。死んでいるわけではないようだ。氷の中に閉じ込められているだけか?


 しょうがない、骸骨戦士スケルトンウォリアーで試してみるか。雪だるまの外装を吹き飛ばした要領で、氷漬けの骸骨戦士スケルトンウォリアーに正拳突き。


 ピシピシっと音がして全体にヒビが入る。


 上手くいったか?


 あっ、これはフラグか?


 案の定、骸骨戦士スケルトンウォリアーが粉々になって砕けた……。


 不死の指輪を確認するとちゃんと戻っていた。グレーアウトしていてすぐに再召喚はできないが。


 勇樹を見れば、驚きの表情を見せた後、恐怖を駆られたのか俺から目を逸らしやがった。


 仕方がない、雪だるまジャック・オー・フロストは俺が倒そう。


 立ち上がってきた雪だるまジャック・オー・フロストにフレイムを浴びせ、その間に装備を変更。霊子ナイフと太刀・焔を持つ。本来なら訓練をしたいところなのだが、この状況では致し方ない。不本意ではあるがさっさと倒そう。


 炎の柱に包まれている雪だるまジャック・オー・フロストに風切りを連続でお見舞いし、動く暇を与えず太刀・焔の炎尾で締め上げる。


 悪人顔が苦痛に歪む。


 弱点攻撃だけによく効いているようだな。一定の属性に偏った化生モンスターはアンデッドが聖属性に弱いのと同じように、一定の属性が弱点になるようだ。


 霊子ナイフをしまい、火炎の杖に持ち直す。


 持ってけドロボー! 本来の使用する二十倍のTP600を使用してフレイムをぶちかます!


 一瞬、閃光が走りブラックアウトした。


『レベルが19になりました』


ーーーー

ーーー

ーー


 フレイムの火柱が上がらず、一瞬目が眩むほど閃光が走った。ヤバいな……間違いなく誰か気づいたはず。


 逃げよう。


「撤収します!」


 カメラをバッグにしまわず、ホルダーにそのまま収納していく。


「勇樹くん!?」


 そういえば、勇樹はどうなった?


 どうやら、氷はなくなったようだが、倒れてガクガクと震えている。


「ぼぼぼぼ、ぼく、ししし、しんだ……?」


 生きているな、まだ死んでないぞ?


 だが、これはちょっと不味いかな?






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