137.雪だるま
赤星さんがカメラの設置をしている間に、装備の変更をしておく。
残念ながら、氷に対する耐性がある装備がない。気合で乗り越えるしかないな。勇樹が。
「バトルフィールド展開」
『バトルフィールド展開』
「うわぁ、本当に雪だるまですね。リアルな悪人顔……ないわぁー」
デフォルメされた顔じゃなく、リアルの悪人顔が引っ付いているからな。陽気な妖精とは誰も思うまい。
「
正直、この
「勇樹の今日の課題は考えて戦うこと」
「考えて? どう考えるんですか?」
「武器を振った時、どういう軌道を取るか、どう攻撃すれば
「考えるな、感じろは駄目ってことですか?」
いや、それはそれで大事なんだと思う。
「ケースバイケースだな。とっさの判断が必要な時に暢気に考えてる暇なんかはないだろうから、直感に頼ることも大事だってことだ。取りあえず、考えながら戦ってこい」
「わかったような、わからないような? 行ってきます」
じゃあ、俺は筋トレ開始だな。腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットを三十回の三セットから始めよう。
赤星さんがあんた何やってんの? って顔で俺を見ているが気にしない。これも身体強化スキルを得るための訓練の一環だ。
勇樹のほうはいつもどおり、
何かあれば言ってくるだろう。筋トレに集中集中。
一セット目が終わる辺りで赤星さんから声が掛かる。
「風速くん、勇樹くんがヤバいかも……」
ん? ヤバいの?
勇樹たちのほうを見ると雪だるまが三体に増えている。分身か?
それにしては三体のうち二体の雪だるまの持つ武器に見覚えが……。
「勇樹くんと
よく見れば足があり、手に見たことのある武器を持っている。
「なんで、あんな格好に?」
「小さい雪だるまがいっぱい出てきて、囲まれたと思ったらびゅーって吹雪が吹いてきてあの格好に……」
なんか凄いことが起きていたようだ。
「勇樹、戻ってこい」
ぴょこぴょこと一体の雪だるまが近寄ってくる。
「ざ、ざぶぃ……ずぴぃぃぃ……」
こっちは雪だるまが近くにいるせいで、少し涼しくていいかも。
「こっち見えているか?」
「びぃえてまずぅ……」
なんでこんな質問をしたかというと、この勇樹雪だるまには勇樹の顔ではなく雪だるまの顔になっているからだ。丸い目とにっこり口があり鼻はニンジンだな。
「可愛いですね」
赤星さん……。そういうボケる状況ではないと思いますよ? 勇樹の体に当たらないように寸止めで正拳突き。
パァーン! と音がして雪だるまが弾け飛ぶ。
寒さのせいで肌が青白くなった、震えた勇樹が現れる。
「BPは大丈夫か?」
「じょ、じょじょにぃへっていまずぅ……」
寒さによる命奪の呪いみたいなものか。回復させておこう。
「とにかく体を動かして体の温度を上げろ」
「ばびぃ……」
本当なら風呂にでも入れればいいのだろうが、そんなものここにはない。魔法で温めるか? 俺が使えるフレイムでは今の勇樹では間違いなく天国からお迎えが来るだろうしな、無理だな。TPを上乗せして威力を上げることはできても威力を減らすことはできないんだよな。
勇樹が不思議な踊りを踊り始める。
「おぉー、勇樹くん、上手!」
赤星さん曰く、ゆるキャラの有名な踊りらしい。俺はあまりテレビを見ないので知らない。
しかし、勇樹よ、なぜその踊りを選んだ?
勇樹に意識を向けつつ、もう一方の思考では
あの
傍から見ると雪だるまがぶつかり合っているようにしか見えないが、徐々に
生身の者のBPを減らし、動きも阻害する優秀なデバフだな。
耐性持ちなのか、
ホルダーから土嚢袋を出して、中の砕石を投擲。雪で出来た体に埋まっていくが、ダメージを与えているかは不明。しかし、嫌がっているようだから、勇樹が戦線復帰するまでは続ける。
たまに、
許せ、
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