134.状況説明

 食事をとりながら、先ほどの戦いの上映会。


「あれはスキルかね?」


「かもな。あるいは武器に付いた能力かもな。武器を確認すればわかるんじゃないか?」


 リュウが使っていた剣は回収されたはず。鑑定持ちが見ればその辺は明らかになるはず。あれが武器の能力なら欲しいな。俺が倒したのだから俺の物と主張したらもらえないだろうか?


「証拠品なので渡さんよ」


 どうやら、俺はまるわかりで欲しそうな顔をしていたようだ。


「前の騒ぎの時の武器と違うようだな。君もなかなかいい武器を持っているではないか」


「やらんぞ?」


「残念だ」


 精霊・逆波せいれい・さかなみの時は霊子ナイフと火炎の杖を使っていたからな。ほかのホルダーって武器の使い分けってしないのか? スキル上げのために、浮気はしないのか? 俺は剣術の二刀流(異種)持ちだから、どちらかに剣を持っていればレベル上げに問題ない。片手持ちの武器なら自由に持ち替えられる。


「むっ!? あの剣はどこから飛んできた?」


「それこそスキルだろう。初見殺しの技ばかりで厄介な相手だった」


「それにしては死んでいないようだが?」


 死んでほしかったような言い方だな。本音だとしても、失礼な奴だ。


「その辺の促成栽培のホルダーと一緒にするなよ。烏丸の高島辺りなら、奴の最初の一撃で首が跳んでいるかもな。まあ、日頃の訓練の賜物と修羅場を経験している差だな」


「……」


 化生モンスターとの戦いならBPがあるから、よほどのことがない限り一撃で死ぬことはない。だが、その温い戦いに慣れたホルダーでは、リュウのような対人戦に長けた者には手も足も出ないだろうな。プスっと刺されてあの世行だ。


 そうこうしていると、決着の場面になり、リュウが地面に縫い付けられる。


「さすが工作員という戦い方だったな。君はよく無事に生き残ったものだ」


「言っとくが、本気の半分も出していないぞ? 殺していいなら、それこそ一瞬で消し炭にしていた。あいつが死ぬとおたくらが困ると思って生かしてやったんだ。だから貸しなんだよ」


「……そうだな」


 精霊・逆波せいれい・さかなみの時の映像を思い出したのだろう。顔色が悪いぞ? 沢木管理官。


「リュウってやつはこれからどうなる?」


「自供するならよし。それこそ司法取引もあり得る。自供しなければ、無理やり吐かせて、消えてもらう」


 怖いねぇ。これが法治国家日本の裏か……。


「奴のホルダーからは物が取り出せるのか?」


「知っているとは思うが本来なら取り出せない。しかし、特殊なスキルを持った者なら取り出せる」


 もちろんそんなことは俺は知らない。もしかして、教えてくれたのは沢木管理官のリップサービスってところか? それとも、滅多にお目に掛かれないくらいのレアスキルなのかもな。


 ずずずぅーっとかけ蕎麦の汁を飲み干す。うどんは嫌いじゃないが、俺は蕎麦派だな。特にカツ丼のお供はかけ蕎麦が一番。天ぷらそば、肉蕎麦とかでは駄目。シンプルなかけ蕎麦じゃないとな。


 その後も、いろいろと情報提供と情報共有。


 今後、間違いなく俺は大陸の工作員に目を付けられるとのこと。直接、手を出してくることはないだろうが、接触してくる可能性はあるそうだ。リュウは顔を覚えていたが、俺のことを調べたような感じではなかった。が、用心は必要だ。


「今回の件は間違いなく漏れる。簡単に漏れないように対策するが難しいだろう」


「そうなのか?」


「愚かなことだが、未だに大陸信奉者の政治家は多い。警察も一枚岩ではないのだよ」


 日本の政治家は大陸からの帰化人が多いからな。それが悪いとは言わないが、気化したのなら日本ファーストで活動してもらいたいものだ。警察内部にも帰化人が多いのだろう。大陸系は横の繋がりは強そうだからな。


 日本のコンプライアンスなんて上辺だけ、実際は内部情報なんてダダ漏れ。嫌だ嫌だ。


「帰っていいか? 明日……もう今日か。予定があるので早く帰りたい」


「……いいだろう。土産はいるかね?」


「もらおう。事務所の女性陣に好評だったからな、喜ぶ」


 沢木管理官、苦笑いしながら部下に指示を出す。


 その間にケンジ……改め、健志に俺の電話番号を渡しておく。


 四人はぐったりとして疲れた表情をしている。情けない。


「釈放されたら連絡しろ。お前らの仲間は十八人いるそうだ。そいつらにも声を掛けろ。それ以外にもアウトサイダーの知り合いがいれば、声を掛けておけ」


「お、俺たちはどうなるんだ?」


「さっきの話を聞いていたろう? お前たちが犯罪に手を染めていなく、白となれば釈放される。まあ、当分は監視されるだろうがな」


「そ、その後はどうなる?」


 こいつらにしてみれば切実な疑問だろう。これから、稼げると思っていた矢先、元締めが犯罪集団、それもテロリストだったのだからな。


「公園でも言ったろう。その相談を受けてやる。うちはまともな、そしてホワイトな組織だから安心しろ」


「わ、わかった。知り合いにも声を掛けておく」


 知り合いにも声を掛けておくということは、こいつ意外と顔が広いのか? まあ、期待せずに待っていよう。


 結局、最終電車には間に合わなかったので、両手にお土産を抱えてタクシーに乗って帰った。


 もう三十分早ければ最終に乗れたのに。残念。







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