131.考えどころ
それにしても、こいつ俺の右腰辺りを執拗に狙ってくるな。俺のホルダーを狙っているのか?
「お前、俺のホルダーを狙っているようだが、ホルダーは不壊だぞ? 知らないのか?」
「フエ?」
「壊せないってことだ」
「なに!?」
そのことは水島顧問に聞いている。実際に実験が行われ検証済なのだそうだ。契約前のホルダーは壊せるそうだが、契約後のホルダーは不壊になるそうだ。
だから、火で焼こうが、剣で斬ろうが、プレス機で圧縮しようが無傷。なので、もしもの時のために、自分の心臓の所にホルダーが装着できるように工夫しているホルダーもいるらしい。
俺はホルダーから武器を出し入れをよくするので、胸の位置にホルダーをもってくると鎧が邪魔になって出し入れができなくなるのでしない。
「意外と大陸のホルダーって無知なんだな」
「チッ」
手をかざし火の玉を放ってくる。プチサンダーバレットで迎撃して相殺。
「什☆!?」
何を言っているかわからないが驚いているのはわかる。どうやら、これも知らなかったようだな。
本気を出される前にそろそろ決めよう。霊子ナイフは……さすがに不味いな。水流槍と忍者刀影縫いくらいならいいか。
リュウがまた剣で攻撃してくる。それを水流槍で受ける……す、すり抜けた!? とっさに忍者刀影縫いをリュウが繰り出した剣と体の間に入れると剣を弾くことに成功。
あ、焦った。危ねぇ……。
「チッ」
スキルの力か? 間に合ったが、初見殺しの技だな。すり抜けるのは一回だけか? あるいは、リキャストタイムか? あまり長く戦っているとヤバいかもな。
剣を構え次を狙っているリュウに水流槍を向け水球を放つ。
「がっ!?」
魔槍だとは思っていなかったのだろう、水球をまともに喰らい吹き飛ぶ。追撃しようとすると危機察知が警鐘を鳴らす。なんだ? なにが起きる?
並列思考全開で周囲を確認。上空にキラリと光りを見つける。その瞬間、剣が降ってきた。足元に剣が突き刺さる。
な、なんとか躱せたが、あ、危ねぇ……。
こいつ初見殺しの暗殺系の技ばっかだな。こいつ、本当に俺を殺しにきてやがる。
ならこちらも遠慮は無用だ。長引くと場慣れしている奴に有利になりかねない。もしかしたら、逃走を図るかもしれない。ここで逃がすの得策ではない。
立ち上がったところを忍者刀影縫いで腕を斬りつける。リュウが剣で防ぐが態勢が悪く力が入らない状況なので、強引に力押しでリュウの右腕を斬る
「がっあぁ!?」
鮮血が飛び散る。傷は浅いが影縫い発動したようで動きが止まる。ここで攻撃の手を緩める……わけがない。
「がぁぁぁ……」
動きの止まっているリュウの左腕を斬りつける。もう武器は持てないだろうが、ついでに両足も斬っておく。
「がっがっあぁぁぁ!」
もう、これで戦うことは無理だな。だが、こいつは工作員油断はできない。
水流槍を振り上げる。
「や、やめろ……」
やめるわけがないだろう。
奴の右肩辺りを水流槍で貫く。
「ぐっあぁぁぁ……」
気を失ったようだ。水流槍は肩を貫き地面に奴を縫い付けている。これで逃げることはできないだろう。
リュウの体をまさぐりホルダーを外す。ウエストポーチだな。これでもうホルダーの力は使えない。
周りを見ればアウトサイダーたちが腰を抜かして座り込み、恐怖の眼差しでガクブルしながら俺を見ている。
「お前ら、逃げればこいつと同じ運命だからな」
四人がコクコクと頷く。
赤星さんに指でちょいちょいと呼ぶ。
「な、なんでしょう?」
なんであなたが俺を見てビビっているんですか!
「事務所に電話してホルダー管理対策室に連絡してもらい、人を寄こすように言ってください。例の工作員を捕まえたって」
「わ、わかりました」
それから、勇樹、なんでお前も腰抜かして座り込んでいるんだ?
勇樹を指でちょいちょいと呼ぶ。
「こいつを見張っていろ。目を覚ましたらぶっ飛ばして気絶させろ」
「ひょぇ~~。そ、そんなこと無理ですよ~」
「やれ」
「はひぃ~~」
まあ、槍で縫い留めているから、目を覚ましたところで何もできないだろうけどな。問題はホルダー管理対策室が来るまで、出血多量で死なないよな? 死なないよね?
まだ、ガクブル状態のアウトサイダーたちの所に行く。
「お前ら、あいつがどんな奴か知っていて一緒に行動していたのか?」
四人ともふるふると横に首を振る。
「じゃあ、どういう関係なんだ?」
「お、俺たちをホルダーにしてくれた人だ」
ケンジが全員を見てから代表で答えた。
四人ともレベル1だ。今日が二回目の狩りのようだな。
「どうやって勧誘された?」
「稼がせてやるって……」
「どんな奴かも知らずに、ホイホイとその話に乗ったわけだ」
「支度金って二十万くれたから……」
なるほど、最初に現金を見せて興味を引いたのか。そりゃあ、喰いつくわな。それに稼げるというのは嘘じゃないしな。
「お前たち以外に仲間のホルダーはいるのか?」
「いる」
「どのくらいだ?」
「俺たちより少し前にホルダーになった奴らが六人いる」
十人か。よく見つけたな。まあ、工作員だから一人ってわけじゃないだろうけど、それでも十人は凄いな。鑑定を持つ者が複数人いるってことだろうな。
「そいつらと連絡は取れるか?」
「取れる」
どういう奴らかはわからないが一応会ってみたい。まともな奴らならクレシェンテに引き抜きたい。
ここは考えどころだ。
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