124.夏休み

 クレシェンテに戻ってきた。


 瑞葵、麗華、月山さんも挨拶に忙しかったようで食事をほとんど食べていなかったようで、持って帰ってきた料理とお寿司をパクついている。


「もらってきて正解だったろう?」


「そうね。呆れはしたけど褒めて差し上げますわ」


「だが、多すぎないか?」


 何度も言うが問題ない。


 それよりお土産にいるか? 水島顧問以外はいらないそうだ。水島顧問は家族に持って帰りたいそうなのでワンセット持たせた。タクシーで帰るそうなので少々荷物になっても問題ないな。お酒もあげよう。


 月曜から大学は夏休み。まあ、実際は今日から休みなのだが。来週と再来週は瑞葵と麗華は狩りをお休み。所謂、夏のバカンスってやつだ。海外に旅行に行くんだと。お大尽様めぇ~。


 クレシェンテも再来週は夏休みでお休み。水島顧問以外は長期休暇を申請している。


 俺は月曜から三日間は妹が視察という名目で遊びに来るのでホルダー稼業はお休みだな。それ以降はずっと狩りと、たまにフリーマーケット巡りを予定している。


 ついでに、勇樹のレベル上げもしようと思う。編入試験も合格し夏休み明けまでは暇そうだからな。ちなみに翔子は瑞葵の海外旅行にお供するそうだ。羨ましくなんかないんだからな! 逆に勇樹、哀れ。


 瑞葵と麗華にお土産を期待していると言ってクレシェンテを後にした。だいぶ、酒が入り酔っていたのでタクシーで帰った。そんな俺もタクシー使うなんて、お大尽様だな……。ちっちぇけど。



 日曜日、お部屋の掃除とお客様用のお布団を干す。妹の食事はどうしようか? 交流会のテイクアウトだけでは飽きるよな。外で食べるか。


 月曜日、昼前に東京駅に妹を迎えに行く。ついでに、前に買ったカステラがとても美味しく気に入ったので買いだめする。ホルダーの中に入れておけば問題ない。


「お兄ちゃん!」


「おう。五月花めいか


 クリーム系のワイシャツにジーンズスカートで大荷物を抱えた妹がいた。集団疎開か!?


 妹の名前は五月花めいか。所謂キラキラネームってやつだ。五月生まれなので、五月は英語でメイだから五月の花で五月花めいか。高校三年生だ。


「なんなんだ、その荷物は?」


「お母さんが持っていけって」


 しょうがないので、荷物を受け取る。


「昼飯はどうする? どっかで食っていくか?」


「まずは部屋で休みたい~。ご飯は適当でいい~」


 お盆前だが夏休みだけあって新幹線も混んでいたようだ。まあ、これだけの荷物を抱えての移動は混んでなくても大変だったろう。


 エアコンの効いた部屋に戻り、ホルダーのショップから食材を購入して、冷やし中華始めました~とばかりに少々豪勢な冷やし中華を作って食べた。


「ふぅ~。食った、食った~。じゃあ、少し寝るねぇ」


「食ってすぐ寝ると豚になるぞ」


「ならないから! それにそこ、豚じゃなくて牛だから!」


 そう言って俺に紙を渡してベッドに飛び込んでいった。


 紙にはスケジュールが書かれている。今日明日はフリータイムになっていて、三日目が友達と東京観光。四日目がそのお友達とネズミーランド。五日目に帰るようだ


 うちにいるのは三日目まで、四日目はネズミーランド近くのホテルを取ったようだな。そうとう奮発したな。


 二時頃に目を覚ました妹を連れて、クレシェンテに来た。両親にはバイトしていると言ってある、なので、お世話になっているのだからとお土産を持たせたようだ。


「妹の五月花めいかで~す。兄がいつもお世話になってま~す」


「可愛い妹さんね。お兄さんに似なくてよかったわね」


「はい!」


 月山さん、それはなにか? 俺が可愛げがないと揶揄しているのか? もしかして喧嘩売ってます? それから、五月花めいかもなぜそこではいと即答する!


 五月花めいかが持ってきたお土産は、宮城で有名なお茶屋で売っている大福。それに宮城限定品のカッペロ多数……。


 そんなもの持ってくるから大荷物になるとなぜ理解しない? 事前に送れよ!


 そして、クレシェンテのテーブルの上には仙台銘菓がずらりと並んでいる。そういえば出張に行っていたな……。


 五月花めいかと女性陣がお菓子とカッペロ談議で姦しく賑わせたあと、島根のお土産をもらって帰った。源〇巻とどじょう〇いまんじゅうだった……。嫌いじゃないぞ?


 帰りに大学が見たいというので構内をブラつきながら見学。見学後はいつものジャズ喫茶に寄ってまったりとした時間を楽しむ。五月花めいかはコーヒーではなく、フルーツパフェを頼んでいる。コーヒーの良さがわからないとは、まだまだお子ちゃまだな。


「落ち着いていていいところだねぇ」


「そうだろう? 友達に教えてもらったんだ」


「もしかして~、女の人~?」


「まあな」


「へぇ~、そういう人いるんだ~。メモメモっと」


 おいおい、スマホのメモ帳に何を書いているんだ。両親への視察報告だろうが、余計なことは書くなよ!


 そういえば、こいつは間違いなく俺の血の繋がった妹。ホルダーの適合率ってどうなっているんだろうな?


 風速五月花かぜはやめいか 適合率212% ホルダー登録可


「ブフッ!?」


「ちょっと!? お兄ちゃん、汚い!」


 俺に次ぐチートがここにいた……。






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