123.敗北

 今度はこちらからいく。


 フレイムTP二倍と連続風切り。


 嶋崎さんが炎の柱に包まれ、風切りに襲われる。先ほどのように槍を振るうが炎の柱は消えない。二回目の槍振りで消えた。


「BPが減っていく!? 異常状態か! やってくれる」


 一度目で炎の柱は消えなかった。ということは、最初の嶋崎さんが使ったTPの量で相殺できなかった。二回目のTPで相殺できる量に達したと考えられる


 その過程で炎の勢いは変わっていなかった。相殺するTPが蓄積されるが、威力が弱まるということではなさそうだな。


 それと、風切りは目視できないことから対応できずにまともに喰らっていた。命奪の呪いも発動している。


 確かに俺より強い。だが、やりようはあるということだな。


 武器を太刀・焔と忍者刀影縫いに持ち替える。


 おそらく、この戦いは勝てない。しかし、せっかく強者と戦うのだから、いろいろと試したいことがある。レベルとステ値は俺より高いが命奪の呪いが発動した。意外と異常状態には弱いのではないだろうか?


 そのための検証に忍者刀影縫いを持つ。そのほかにも俺には異常状態を引き起こさせるプチサンダーもある。


 宣言どおり、足掻いてみせようじゃないか。


 嶋崎さんの体が光る。身体強化だ。羨ましい。


 太刀・焔で斬り込む。相手の武器は槍、間合いが違うので太刀・焔は捨て駒。太刀・焔の一太刀を槍で防いだ隙に、懐に潜り込み忍者刀影縫いで攻撃。


 嶋崎さんも予想していたのか避ける動作が速い。が、掠った手応えがあった。どうだ!


「ふぅ。ヒヤッとした。いい動きだ」


 チッ、影縫いが発動しなかったか。稀に影縫い効果を与えるだから、連続でダメージを与えないと厳しいか……。


「確かに万能型のようだな。攻撃の切り替えが早い。そして、何かを狙っていたようだが失敗か?」


 読まれている。これが経験の差か。


 かといって、何もしないのは愚策。


 太刀・焔を振るい炎尾を嶋崎さんの体に巻き付け動きを封じる。


「むっ!?」


 避ける気なら避けられたはず、わざと技を受けたようだな。強者の余裕か? だがな、それで終わりじゃないぞ。


 炎尾で絞めつけたまま、嶋崎さんの近くまで飛び込み連続プチサンダー!


「がっ!?」


 効いたか! 


「雷か。残念だが耐性を持っているので効かないぞ」


 そう言って、絞めつけていた炎尾を引きちぎった。


 まじかぁ。


 だが、効かないと言ってはいたが、動きに不自然さがあった。確かに雷耐性は持っているのだろうが無効ではない。なので、ほんの一瞬は効いたとみえる。


 こりゃ、駄目だな。勝てんわ。


 加速を使えばいい勝負まで持っていけるとは思うが、嶋崎さんもまだ本気を出していないのは明らか。加速スキルは見せたくないので封印だな。


 万策尽きたって感じだ。もっと技のレパートリーを増やさないと駄目だな。


 後は地力で攻撃して訓練をさせてもらおう。上手くいけば影縫いが発動するだろう。


 並列思考で相手の体の動きと槍の動きを意識しながら飛び込む。小手先技は必要ない。回復も使わない。自分の持てる技量のみでぶつかる。


「覚悟を決めたか。いい顔だ。全力で叩き潰してやろう」



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『YOU LOSE』

『ホルダーにアイテムを送りました』

『40000ポイントが加算されます』


 負けた。完膚なきまでに負けた。力も早さも技もまったく敵わなかった。奥の手も出させることができなかった。口惜しい。


 だが、そこまで高い壁ではないこともわかった。すぐに追いつき追い越せる。守護の実力がわかっただけでもいい経験になった。


「ご指導感謝します」


「いや、こちらこそいい経験になった。君が言ったとおり、私もまだまだ未熟だったことが理解できた。感謝する」


 お互いに握手を交わす。感謝するとは言ったが、必ず次は潰すと心に秘めながら……。


「どうだった、彼の実力は?」


「十分にうちの部隊で通用する実力です。数年かからず自力で守護になるでしょう」


「そこまでか?」


「足りないのは経験と知識。間違いなく若手のトップでしょう」


 若手ってどこまでが若手なんだろうな。


 その後はまた水島顧問と話が盛り上がっていたので、俺は食事に戻る。こんなに料理が並んでいるのにほとんどの人が手を付けていない。もったいない。


 なので、俺が食べてやろう。フォアグラ、キャビア、揚げたての天ぷら、焼き立てのステーキ、まじ天国。ただ、そろそろ限界が近いかも……。


 結局、その後は誰も声をかけてくることもなく、交流会は終了。


 ホテルの人がワゴンに料理を詰めた1mくらいのプラ製の入れ物を運んできた。お寿司は料理とは別の同じ容器に入れられている。全部で二十個。お酒も日本酒とシャンパン、ワインが四本ずつある。


 どう見ても十人分ではないな。お寿司の容器一つでも五~六人前はある。おまけしすぎだろう。嬉しい誤算だけど。


「あなたねぇ……」


「恢斗らしいな。そんなに食べれるのか?」


 瑞葵に呆れられ、麗華に心配されたが問題ない。


 月曜には妹が遊びに来るからちょうどいい。


 毎日がパーティーだぜ!





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