120.昔のホルダーは
「君たちは違うと?」
何をどう見たらそういう質問が出るんだ。うちらの戦果を見たと言っていなかったか?
「俺たちの実績を見たんだろう? 俺たちは己の心と技を鍛えるために、下位の
「見た。七等呪位を専門に倒している。よく、水島さんが許しているなと思っている」
「許すも何も、水島顧問には決定権を持たせていない」
「えっ!? 本当ですか! 水島さん」
水島顧問は頷くだけでそれ以上は何も言わない。
「なんのための顧問なんだ!? 水島さんほどのホルダーを飼い殺しにする気か!」
そうか、この人も結局勘違い野郎か。
「あんた、年々ホルダーの実力が落ちていると言ったが、自分は違うと勘違いしてないか?」
「なに!?」
「俺から言わせれば、あんたちも手緩いホルダーだ」
「手緩いだと!?」
あぁ、手緩いな。自分で気づかない時点で、ダメダメだ。
「戦後のホルダー流出の件は聞いている。だが、それはきっかけでしかないと思っている。日本の近代化が進むにつれ、徐々にホルダーの実力は下がっていたと考えている」
「どういう意味だね?」
水島顧問が割って入ってきた。
「昔のホルダーは今よりも強かった。なぜか? 個々のハングリー精神が強かったからだろうと思っている」
昔は飢えで死ぬことなどあたりまえ。今ほど教育が充実しているわけでもないので生まれ育った環境を改善できるわけもなく、領主による重税などもあたりまえ。
そんな時代に運よくホルダーになれたら、強くなろうと思うのは当然だ。強くなればなるほど強い
それが明治に入り表面上は平等になり、重税もなくなる。戦い方も国内の戦いから対外の戦いになり、個の武勇より多での戦いになり、武器の性能で強さが変わる時代になった。
そのうえ、政府はハングリー精神の旺盛なアウトサイダーを許さず組織化する。そうすることで、組織の派閥化が進み足の引っ張り合いが始まる。
これでホルダーが強くなると思うのかと言ってやった。
「「……」」
「このままいけば二流、三流のホルダーしかいなくなる」
「では、君はどうすればいいと思うんだ?」
「知らん」
「「……」」
味方ならいざ知らず、ほかのホルダーのことまで面倒見切れない。それを考えるのがホルダー管理対策室であり国の仕事。まあ、やれるのは根本的にレベル重視から、技量重視の育成マニアルを作成するべきだろうな。
正直、俺はそんなことに興味がない。勝手にやってくれ。
「俺は正義の味方なんかに興味はない。うちの俺以外の連中は違うようだがな。俺が目指すのはホルダーのトップ。今いるホルダーたちを上から見下ろし優越感に浸るのが目的だ」
「そ、壮大な目標だな。些か人間的にどうかと思うところはあるが。だが、残念なことにホルダーランクの九位までは固定されているので実際のホルダーランクのトップは十位だ」
「えっ!? そうなの?」
あまりの衝撃発言に素の声を上げてしまった。
「水島さん、教えていないんですか?」
「すまん……。まだ、資料の整理が……」
「あぁ……そういえば、PC苦手でしたね」
水島顧問が後で説明すると言っている。しかし、固定ってどういう意味だ? 気になるな。
「君の目的はわかった。納得はできないが、理解はした。そこであえて聞きたい。君がホルダーの実力を上げるにはどうしたらいいと考える?」
別に隠すことではないので答える。これからうちに所属するホルダーは全員、俺の方針で育てるからだ。だが、適合率とハイランクキラーのことは言わない。
「促成栽培は悪手だ。レベルが低いうちにどれだけ戦いの経験を積むかで、高レベルになった時の強さが違ってくる。そして、高レベルのホルダーはPTに入れるのは絶対に駄目だ。それと、戦うのは七等呪位以下は却下だな」
なんて大盤振る舞い。これ以上ないくらい答えを教えた。
「それは死ねと言っているようなものだ。それと、レベルを上げてしまった者はどうする?」
「既にレベルを上げたホルダーはごめんなさいだな。もう、強くなることはない。それに死ねとは言っていない」
「嶋崎君、彼はPTに入れるなと言っているだけで、手助けをしてはいけないとは言っていない」
あぁ、水島顧問余計なことを……。気づかなければそのままにしようと思っていたのに。しかし、どうして気づいた? あっ、勇樹か! そういえば、レベル上げが終わった時に事務所で話をしていたな。余計なことは言うなと言っておいたのに……。減点だな。
「PTに入れない? なんのために? ゲーマー? 経験値が入らないのか?」
あぁ、気づいちゃったか?
リーダーだけあって頭がいい。ホルダーのレベルも高いからINTの値も高いのかもな。
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