118.権力とビジネス
見た感じひょろっとした優男タイプのイケオヤジ。
「初めまして。私は帝都聖法院の代表をしている久坂だ」
「明治以降にできた組織でほかの組織と仲が悪いっていう帝都聖法院か」
「「「……」」」
あれ? 違ったか?
「ははは……。はっきりと言ってくれる。仲が悪いわけではない。組織を運営していくうえで、見解の相違があるだけだ」
その見解の相違が仲が悪い原因ではないのだろうか?
「しかし、次代の守護と目される高島君をランクバトルで負かすとは……」
「だから、守護って何?」
「「「……」」」
水島顧問が目頭を揉みながら首を振る。
常識なのか!? 知らねぇし!
二等呪位、三等呪位がいるといわれる富士山と出雲大社、多賀城の異界に、
その出てきた五等呪位から結界を張っている者を守るのが守護の役目。
そして、その結界の中に入って
そんなホルダーがいたんだ。知らんかった。上位ランクのホルダーはそこにいるんだな。
「いやぁ、まさか本当に風雲児くんがここまで無知蒙昧だとはね。笑ってしまう」
「無知蒙昧ねぇ。そのまま、返してやるよ。あんたらだって崇高な考えなどではなく、権力争いとビジネスのためにやっているんだろう? そのうえ、たいした実力もないホルダーを育ててどんぐりの背比べ。逆に笑える」
高坂という男の表情がムッとした顔に変わる。俺を挑発しているくせに、こいつも沸点が低そうだ。これで組織のトップをやっているなんてちゃんちゃら可笑しい。
「では君はなんのために戦っているんだ?」
「そうだな。あえていえば、趣味だな」
「趣味?」
こういう連中には理解できないだろうな。結局、自分の手は汚さず支配下のホルダーに戦わせて上前だけはねる。鑑定したが、こいつも爺もホルダーじゃない。
「俺も崇高な考えなどこれっぽっちも持ち合わせていない。俺から言わせればこれは狩りゲーだ。その狩りゲーを楽しんでいる過程で金が入ってくるだけだ」
「「「……」」」
どこに驚くところがある? それともこいつら、本気で
「ざ、斬新な考えだな。人の命がどうなってもいいと?」
「それを考えるのはホルダー管理対策室であり国の仕事だろう。それとも、あんたたちは世の中のために何かをしているとでもいうのか?」
「我々はそのために
周りのギャラリーもうんうんと頷いている。
「じゃあ、無償でやれよ」
「「「……」」」
だから、どんなに上辺だけを装っても所詮はビジネスなんだよ。それもホルダー界という狭い世界の権力争いをしながらのな。
「彼らとて生活していかなければならない。それには資金が必要だとは思わないのかね?」
「じゃあ、聞くがあんたの年収はいくらだ? それと末端のホルダーの年収は? あんたホルダーじゃないよな。命を懸けて戦っているホルダーにちゃんと報いているのか? 聞けば、上前はねてる組織の上層部は休みの日に接待ゴルフで忙しいそうじゃないか」
「「「……」」」
周りを窺えばばつが悪そうな表情をするものと、それがどうしたとばかり当然という顔をした者が半々だな。腐った奴が多すぎないか?
「君は世の中を知らなさすぎる」
「御託はいいんだよ。あんたらはそうやって権力欲しさに組織同士足を引っ張り合って、金儲けのことだけ考えてろ。そのうちに俺たちがトップになって、あんたらが俺たちにしているように、上から嘲笑ってやるよ」
政治家に媚びを売って得た権力に魅力などあるものか。やるなら、逆に政治家どもを蹴落とす力を手に入れてやる。
「君たちのような弱小組織に何ができる」
「そう思っていればいい。そのうちはっきりとする。そうなったときにお前らの下にいるホルダーはどう思うだろうな?」
「引き抜くつもりか?」
まさか、終身雇用などと思っているのか? 条件のいい場所に人が集まるのは必定だぞ。
「こちらから引き抜かなくても、向こうからやって来ると思うがな」
「「「……」」」
とても険悪な雰囲気。俺が作ったものなんだけど。
そこに拍手しながら現れる沢木管理官。
「面白い。存分にやりたまえ。それで
言葉とは裏腹に、冷めた目で周りを見渡す沢木管理官。このフロアーにいる半分はどんな思惑があるかわからないが、後援者という名の政財界の魑魅魍魎ども。ここは魑魅魍魎の巣窟か?
この人も苦労しているんだろうな。
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