115.ホルダー交流会
明日はホルダーの交流会。ちゃんと正装で来いとのこと。面倒だな。それと明日、赤星さんと日中勤務の和泉さんが美酒散乱をホルダー管理対策室の島根支部と宮城支部に届けに行くそうだ。一泊二日で……。日帰りできるだろう? 睨まれるので言わないけど。
島根のお土産といえば思いつくのは源〇巻とどじょう〇いまんじゅうかな。大学の友人に島根が実家の奴がいて、お土産でもらったことがある。俺的には〇氏巻が好きだな。
宮城のお土産はいらない。どうせ、妹が買ってくる。いらないと言ってるのにな。
ホルダー交流会当日。千代田区にある高級ホテルに到着。
クレシェンテから参加するのは所長麗華、副所長月山さん、水島顧問、俺、瑞葵の五人だ。月山さんは落ち着いた着物姿、水島顧問は黒のタキシード、瑞葵と麗華はイブニングドレス。瑞葵と麗華の姿が眩しすぎる……本物のお嬢様だ。
俺はこの日のために仕立てられたグレーのタキシード。
クレシェンテのみなさんから馬子にも衣裳と笑われた……。
この交流会はビッフェタイプの立食形式。テーブルは用意されているけど椅子はない。
それにしても凄い人数だ。このフロアーに二千人入るということだから、その半分くらいとしても千人はいるだろう。
開始時間になり、総理の代理という人から祝辞と交流会開始の挨拶がされた。
その後、沢木管理官が出てきて現状の
沢木管理官の話を聞く限り楽観視できる状態ではないことがわかる。ここ三年間をみるとホルダー人口も討伐数も増えているようだが、六等呪位以上の討伐は増えておらず、今年はまだ数体しか討伐できていない状況のようだ。
上位の
最後に新たに加わったクレシェンテの話と、逆に継ぎ手がなく解散した組織の名があげられる。ホルダーは世襲制ではなく、完全な才能が必要な世界。そのホルダーの才能がある者を見つけられなければ、組織は成り立たない。
そのホルダーの才能を見つけ出せるのが鑑定なのだが、そのスキルを持つ者は多くないと水島顧問から聞いている。多くないというより、どの組織もスキル保持者を公表したがらないのが実情らしい。
鑑定ができるアイテムもあるそうだが、そういうのは国が管理しているそうだ。もし、オークションに鑑定スキルのスクロールがでれば億越えは間違いないという。
俺は億越えのスクロールを使ったのか……。後悔はしていないが。
沢木管理官の話が終わると烏丸呪印会の会長という人の音頭で乾杯があった。ここからが交流会の本番が始まるらしい。
俺は飲み食いに来ているだけなので、表に出るつもりはない。その辺のことは月山さんや麗華に任せる。
「やはり、神薙家の瑞葵くんじゃないか。こちらの世界に入ったと聞いていいたが本当だったとはねぇ」
「お久しぶりです、丸武先生。先生もこちらの方だったのですね。知りませんでしたわ」
「これでも先祖に何人かホルダーがいてね。まあ、私には才能がなかったのだけどね。ハッハッハッ!」
どこかで見た顔だと思えば、政治家だな。さすが神薙家のご令嬢。さっさっとその場から離れる。巻き込まれたくない。
普段、食べたことがない高級料理に舌鼓を打ちつつ、普段飲んだことがないお酒を飲む。
「お久しぶりだね、水島くん。この世界に復帰したと聞いて喜んでいたのだよ」
さっき乾杯の音頭を取った烏丸呪印会の会長と二十代と三十代の男性を連れた、俺と一緒にいた水島顧問に声を掛けてくる。
「どうだね。君の知識と経験を活かすならクレシェンテなどより、うち来ては。君ほどの人物、もったいなかろう」
おうおう、ここに俺がいるのを知りながら、最初から見下したようにぶちかましてくるねぇ。
「鳥島会長。クレシェンテとは縁がありお世話になっています。その件はご容赦ください」
「そうか残念だが仕方がない。だが、困ったことがあったらいつでも声を掛けてくれたまえ」
全然、残念そうに見えない。水島顧問を引き抜く気満々だな。見た目といい狡猾そうな老人だ。
「初めまして、
「高島君か。君の噂は聞いている。次代の守護、いや神将にもなれる逸材だと」
「先達に負けないように粉骨砕身、精進していきます」
三十代の男だ。おそらく、レベル的に俺と同じくらいのステータス値になると思う。戦ってみたい。
で、守護、神将って何?
「
二十代半ばくらいの男。こいつは間違いなく格下だな。
「水島君。君の傍にいる子を紹介してくれないかね」
「クレシェンテのエースで風速君です」
「ほう。君が噂の子か」
噂ねぇ。どうせろくでもない噂だろう。それに俺のことを知ってるくせに、わざと聞いてきたなこの爺。
無視していると、
「おい君! 会長が話し掛けているんだぞ! 挨拶くらいできないのか!」
近藤という奴が怒った様子で絡んできた。
「ザコに興味はないので」
ザコには興味が無いのだよ。ザコには。
ついでに爺にも。
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