110.ハメ技

 できれば中の本体にもダメージを与えたいところだが、俺って一撃必殺的な攻撃技って持っていないんだよねぇ。ちまちまと攻撃して削っていくしかないよなぁ。俺の攻撃って地味なんだよねぇ。


 できればこう、ばーん! ってな感じで大ダメージを与える技が欲しい。ゲームやヒーローものなどもそうだが、やはり必殺技は必要だろう。見せる戦いは必須だと思う。


 まあ、それはいいとして、霊子ナイフには風属性が付いている。なので、霊子ナイフに風属性をつける。堕罪の剣にもまた闇属性を付け一本踏鞴いっぽんだたらの懐に飛び込み二刀流で斬りつける。


 刃が短い霊子ナイフはまったく本体まで届かない。堕罪の剣でもギリ届かない。残念。水の一本踏鞴いっぽんだたらの中に手を突っ込めば届くと思うが、危機察知がやめろといっているので怖くてできない。アンクーシャがあれば治ると思うが、そこまでリスクを冒す必要もない。


 一本踏鞴いっぽんだたらの懐にいるので、間合い的に一本踏鞴いっぽんだたらが大槌を振るい難そう。それでも強引に振るってくるので避ける。体が大きくなった分動きが少し遅くなっているが、大きくなった分攻撃範囲が広くなっている。


 余裕を持って躱したはずなのに吹き飛ばされた。何が起きた? こういう咄嗟の判断のときに並列思考がまだ上手く使えない。せっかくの二思考が同じことを考えてしまう。まだまだ精進が必要だ。


 もう一度一本踏鞴いっぽんだたらの懐に飛び込み連続攻撃。また、大槌を使って反撃してきたので躱す……か、躱せない!? 咄嗟に大槌に体重を任せて衝撃を緩和し勢いのまま飛ばされる。


 今回はちゃんと並列思考が上手くできた。躱せなかった理由もわかった。躱したと思った大槌が形を変えて襲ってきたのだ。水で出来たものなので形は自由にできるようだ。


 変化自在とはやってくれる。


 間合いができたことで瑞葵たちの戦をチラっと確認。瑞葵も骸骨戦士スケルトンウォリアーも骸骨武者といい勝負を繰り広げている。麗華と骸骨スケルトンが援護に回っているので、若干こちらが有利って感じだ。


 あの骸骨武者は八等呪位クラスだろう。七等呪位が喚びだしたのだから、ここで七等呪位が出てきたら反則だよな。骸骨武者は任せても大丈夫そうだな。ちょうどいい訓練になる。


 さて、じゃあ俺のほうも行きますか。加速!


 切れた加速を再度使い一本踏鞴いっぽんだたらの攻撃を躱しつつ接近。武器の形や長さが変わるのは本当に厄介だ。加速と並列思考があるからなんとか躱せている。両方あってできる芸当だ。どちらかが無ければ無理!


 剣撃で削っていくのもありなのだが、一つ手を考えついた。


 一本踏鞴いっぽんだたらの攻撃を躱した後にその腕に手をそえる。ここで、プチサンダー連発! 本来なら触れなくとも1mくらいなら届くのだが、念には念を入れて触れて発動させた。これはランクバトルで柿崎に使ったこともある技。


 水の中の本体である一本踏鞴いっぽんだたらがビックっと痙攣して水の一本踏鞴いっぽんだたらも動きを止める。


 プチサンダーは威力が弱いのでたいしてダメージは与えられない。代わりに相手が耐性をもっていないと高い確率で痺れを起こし麻痺させる。


 効果があるとわかればこっちのもの。堕罪の剣をしまい、右手は霊子ナイフで一本踏鞴いっぽんだたらを攻撃、左手でプチサンダーを連続打ち。


 必殺技ではないが上手く決まればハメ技となる。


 瑞葵のほうも一体を倒し終わり、骸骨戦士スケルトンウォリアーのほうに加勢している。


 だいたいこういうパターンだと、召喚されたモンスターを全滅させると、再召喚が繰り返される。声を掛けておいたほうがいいだろうか? うん、掛けておこう。ちょうど、加速が切れた。


「そいつは倒さず、けん制だけにしろ!」


「なんでですの!?」


「理由は後で」


 加速。


 まだまだTPには余裕がある、霊子ナイフに風属性を付け、斬って斬って切り裂きまくる。水で出来た一本踏鞴いっぽんだたらがバッシャっとただの水に戻る。


 本体が後ろに飛び退るが、逃がすと思うか! 


 顔面を蹴り上げのけ反り宙に浮いたところを、真下から上に蹴り上げる。


 獅子連撃!


 某忍者漫画のパクリだ。左手に堕罪の剣を持ち直し、俺もジャンプして空中にいる一本踏鞴いっぽんだたらを連続斬り。下に落ちる前にサマーソルトキックの要領で再度蹴り上げ再度連続斬り。また落ちてきたところで渾身の回し蹴り。


『レベルが17になりました』


ーーーー

ーーー

ーー


 一本踏鞴いっぽんだたら、強敵だった。


 これといった弱点もなく物理寄りだが魔法も物理攻撃も強力。俺もプチ雷魔法を持っていなかったら苦戦していた可能性もある。


 まあ、負けることはないと思うがな。








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