94.新宿中央公園中央

「私は詳しく知らないが、古くから金を出せば錬成を請け負う集団がいるそうだ」


 ホルダーとして化生モンスターを狩るのではなく、錬成を生業にしている組織か。面白い。そこら辺は追々調べてもらおう。クレシェンテ専用の錬成部署を作る必要もあるだろう。


「月山さん。オークションで錬成スキルのスクロールを見かけたら落札をお願いします」


「わかったわ。今後、必要になってくるものね」


 使うか売らないと錬成アイテムが山積みになっていく。何が出来るのかは知らないが、秘匿されているくらいだから錬成には期待したいところだ。


 ということで、俺は帰る。俺の仕事は終わったからな。夕食は冷凍庫に眠っているオードブルを解凍して食べよう。



 講義の合間や昼時にできるだけ多くの人を鑑定する。ぎりぎりホルダーに引っかかる人を数人見かけたが興味なし。適合率150%以上か少し下くらいまでが許容範囲だな。


 クレシェンテの事務所で麗華を待つ間に瑞葵に、


「明日は東城兄妹の話がありますから、家のほうに来てくださる?」


 と言われる。


「いいぞ。なんの話だ?」


「母親が見つかりましたわ。その件と契約の件ですわね」


 見つかったのか。まあ、母親のほうはすぐ見つかると言っていたからな。親権を放棄させれば問題はないだろう。


 そうなると契約の件だな。妹の翔子のほうは保留にしておいて、兄の勇樹はきっちりと契約で縛ってしまおう。そうして、土日に連れ出して、レベル上げをさせる。将来的にクレシェンテに入るから英才教育を施す。


 それと、誰かが急に用事などで抜けた時の予備人員として参加してもらってもいい。ホルダーは随時増やしていくつもりだがなかなか難しいので、予備人員として参加できるくらいまでレベルを上げておきたい。


 そうこうしていると麗華が事務所に着いたので、新宿中央公園に出発。今日も狩りの撮影を行うようなので撮影機材を車に積み込む。


 近くの駐車場に車を停め新宿中央公園に入る。レーダーを確認しながら進むといたな。


 ただ、場所が問題だ。東京都庁のすぐ横になる。東京都庁から丸見えなのだ。木が生い茂っているから見え難くなっているがどうする?


「やるしかないですわ」


「そうだな。依頼が出ている以上、猶予がないのだろう? やるしかないと思うが?」


 確かにそうなんだが……。


「やるのはいいが、時間をずらそう。今の時間帯はバトルフィールドを展開しても目立ちすぎる」


 今の時間は十九時。まだまだ、人通りが多い。特に東京都庁から丸見えなのが不味い。


「どこかで飯でも食って時間を潰そう」


 瑞葵がスマホでお店を検索。赤星さんとあーでもない、こーでもないとお店の選定。どこでもいいから早く決めてくれ。


 決まったお店はイタリアンレストラン。歩いてすぐの所にあり、広くて美味しい料理を出すと評価されている店らしい。


 店に入った瞬間、お店にいたお客さんやお店のスタッフがこちらを注目。なんでだ? と思っていたら、赤星さんが答えてくれた。


「瑞葵さんと麗華さんをモデルだと思っているんですよ。そして、私たちは撮影スタッフって感じじゃないですか?」


 な、なるほど。そう見えなくもない……か? 俺と赤星さんは撮影機材を担いでいる。それに対して、瑞葵と麗華は美人で背も高くモデル体型といえなくもない。


 お店のスタッフも気を利かせてくれ角席を用意してくれた。


「酒は駄目だからな」


「うっ……。し、仕方がないな」


 やっぱり、麗華は飲む気でいたな。最初に釘を刺しておいて正解だった。


 お酒禁止を出したら、女性陣は食い気に走った。それも本気モードだ。


 生ハムとルッコラのサラダ、フォアグラのテリーヌ、ガーリックシュリンプから始まり、コンソメスープ、ミネストローネ、ガーリックトーストと続き。


 鴨のロースト、和牛のポワレ、そしてビアンコペスカトーレ、ウニのクリームソース スパゲッティーニ、ミートソースタリアテッレといったパスタ類を頼む。


 最期の締めはクリームブリュレ、ティラミス、ガトーエピス、季節のシャーベットといったデザート。


 これから化生モンスター狩りをすることを忘れているのではないだろうか?


「問題ありませんわ」


「腹ごなしにはちょうどいいだろう。狩りの後のお酒は美味いから、さっさと済まそう」


 た、頼もしい限りだな。


 時間は二十二時。新宿中央公園に戻るとさすがに人通りは皆無。東京都庁にまだ点々と明かりがついているのが不安。


「バトルフィールド展開」


 目的の化生モンスターがいる場所は意外と狭く戦える場所が固定されるな。やり難い。まあ、昨日の墓場に比べればまだいいか。


 精霊・逆波せいれい・さかなみ 七等呪位 水の下位精霊が闇に堕ち化生モンスター化した。物理、水無効


 な、なにぃぃぃぃ!?


「ちょ、ちょっと集合!」


 なんてこった、こいつは強敵の予感。


 なんでこいつが倒されず残っていたのがわかった。


 物理無効かよ!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る