91.瑞葵独戦

 今日、水曜日は麗華が用事でお休みなので七等呪位の狩りはお休み。


 なので、俺はクレシェンテの事務所で今までレベルアップ時のステータス値をPCに落とす作業をしていると、瑞葵がノックもなしに部屋に入ってきて声を上げる。


「恢斗! 私一人で八等呪位を倒してみたいですわ!」


 何を言ってるんだ? このお嬢さまは。


「恢斗がホルダーになって初めて倒した化生モンスターが八等呪位なのですわよね? なら、今のわたくしのレベルであれば倒せるのではなくて?」


「うーん。ステータス的にはできると思うが、なんでやりたいんだ?」


「感謝はしているのですけど、いつも恢斗がサポートいるので自分がどのくらい強くなったのがわからないのですわ。一度、自分の力を把握しておきたいと思いましたの」


 なるほど、瑞葵の言っていることはあながち間違いでもないな。


「いいだろう。その代わり俺の不死の指輪を貸すから、そいつらにサポートさせるぞ」


「構いませんわ。それでは行きましょう!」


 どうやらすでに化生モンスターの場所は確認済みみたいだな。歩いても行ける柏木公園横の墓地近辺をテリトリーにしているようだ。


 九等、十等呪位はテリトリーを持たず自由に徘徊しているらしいが、八等呪位はある程度のテリトリー内を徘徊しているらしい。


 車で移動するより歩いて行ったほうが早いので歩いて向かう。西新宿駅のすぐ近くだ。人通りが多いので注意が必要かもしれない。


 墓地の周りをうろうろしながらレーダーを確認しながら歩く。そして見つけたのだが化生モンスターがいるのは墓地の中みたいだ。


「ぼ、墓地の中ですわね……」


「そうだな……」


 人はまったくいないが、俺もここにはいたくないなぁ。さすがに墓地の中で戦うのはなぁ。それと親指隠すことは忘れない。これ大事。


 化生モンスターの近くまで行くも戦う場所も狭い。これは戦い難い場所だ。


 自堕落天使ディソルートエンジェル 八等呪位 堕天使が更にさらに堕ち、すべてにおいて自堕落と化した天使。


 自堕落かよ! 日曜に頭に手を当て横になってテレビを見ているおやじの格好で、片翼が黒い天使がプカプカと浮いている。金髪の中性的な顔なのでもの凄く違和感を感じる。そのうえ、細目で眠たげな表情。やる気あんのか? こいつ。


「バトルフィールド展開」


「これといった情報はない。八等呪位で自堕落天使ディソルートエンジェルというらしい。召喚と指示は忘れるなよ!」


「了解しましたわ。死疾走狼プロンプトウルフ・UD骸骨戦士スケルトンウォリアー召喚! 死疾走狼プロンプトウルフ・UDはけん制、骸骨戦士スケルトンウォリアーは挑発ですわ!」


 二体は進化したおかげで動きが見るからによくなっている。


 特に死疾走狼プロンプトウルフ・UDはいい動きを見せている。罰当たりではあるが、墓石の上を自由自在の飛び回る。それ以外にも口を自堕落天使ディソルートエンジェルに向けると衝撃波のような攻撃を与えている。あれがエアファングなのか? 近距離だけでなく中距離攻撃も手に入れ使い勝手がよくなったな。


「いつまでそのような格好をしているのですか!」


 空中で横たわる自堕落天使ディソルートエンジェルが瑞葵の攻撃を煩わしそうにあしらいながら、骸骨戦士スケルトンウォリアーに炎の玉を投げつける。


 その炎の玉を青龍刀で斬る骸骨戦士スケルトンウォリアー。斬れるのかよ! ダメージはどうなんだ? よくわからない。今度、自分で試してみるしかないな。面白い。


 しかしだ、俺の危機察知が微少だが警鐘を鳴らした。何かあるのか?


 こうして戦いを見ている限り問題はなさそうに見える。足場は悪いが瑞葵の動きもいい。骸骨戦士スケルトンウォリアーによる挑発と死疾走狼プロンプトウルフ・UDの攻撃で、瑞葵に敵愾心ヘイトが向かないように連携しているところも上手い。


 自堕落天使ディソルートエンジェルが倒されるのは時間の問題だろう。


 さすがの自堕落天使ディソルートエンジェルも横になっていた姿から、立ち姿での対応を始めた。少しだけ目を開け気だるそうな表情に変わったな。


 と思ったら、どこからともなく長剣を出して、死疾走狼プロンプトウルフ・UDに斬撃を飛ばす。簡単そうにひょいっと躱す死疾走狼プロンプトウルフ・UDだが凄い反応速度だ。称賛に値する。進化って凄ぇ。


 その隙を突いて瑞葵の双剣水弧の水刃が自堕落天使ディソルートエンジェルを襲う。避けようとした自堕落天使ディソルートエンジェルだが、体が急に振られ水刃がクリーンヒット。


 スキルを使った二段構えの攻撃。瑞葵も成長したものだ。


 そして、苦痛に顔が歪む自堕落天使ディソルートエンジェル


 また、危機察知が警鐘を鳴らしている。これは何かあるな。


「瑞葵! そいつ、何か隠し玉を持っていそうだ注意しろ!」


「注意しろと言われましても、何に注意すればよろしくて!」


 そこは自分で判断してくれ。それも経験の一つになるだろう。


 自分で戦いたいと言ったのだからな。


 化生モンスターに目にもの見せてやるんだろう?


 頑張れ。


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