90.オークション出品選定

 キャッキャウフフと鑑賞会をしている女性陣。


 俺の場面に移ると、これはないわぁ~とかヤジが飛ぶ。なんでや!


 完全な飲み会の雰囲気である。就業時間中とやらはどこ行った!


 気づけばもう飲み物がない。仕方がない、もう一度コンビニに行ってこよう。今度はお菓子ではなくホットスナックと冷凍食品の天心、ポテトフライをチョイス。お酒はワインと日本酒を瓶で買った。皿は顔合わせ会の紙皿があるしMyコップもあるからいらないだろう。


 コンビニの冷凍食品って意外と好き。レンジで手軽にチンして食べられる。クオリティーも高いし、何より安い。種類も豊富で冷凍庫に入れて置けばずっと保存できるのもいい。


 女性陣もなんやかんやとパクつきながら、お酒を飲んでいるので文句はないのだろう。小市民の味が勝利したとみていいな。


「それにしても凄いわね。特撮映画を見ているみたいだったわ」


 特撮映画というのが月山さんの年代らしい言い方だな。普通はCG映像って言う……月山さんから黒いオーラが……。


「が、画像処理してMeTubeで配信したら人気でそうですけどね」


「無理ね。組織として認可が下りた時の規約にそういう行為は禁止されているわ」


 だよなー。誰だって考えるよなそんなこと。でも、アウトサイダーや闇組織なんかやってそうだけどな。検閲みたいなことやっているのか?


「まあ、うちで使う分には問題ないでしょう。今後、増えるホルダーの教材にすればいいわ。なので、もう何度か撮影してほしいわね」


 正直、乗り気ではないが仕方がない。見せたくないところはカットしてもらおう。


 鑑賞会も終わったことだしそろそろ仕事の話に戻ろう。月山さんも星野さんもいるからな。


 ホルダー管理対策室に提出するドロップ品は麒麟美酔きりんびすいの髭でいいだろう。これが値段的にノーマルドロップ品だと思われる。


「問題ないと思うわ。向こうにこれを鑑定できる人がいるのでしょうから。それに明日になればあの場所の化生モンスターが消えていることがわかるはずだし」


 まあ、そうだな。


 なら本題に入ろう。オークションに出す品の選定だ。


「これをオークションに出したい」


 炎の胸当て、美酒散乱×3、そして問題の美酒満開。


「これは防具ね。そしてこれはお酒?」


 美酒散乱、美酒満開についてはまだ瑞葵にも麗華にも説明していない。なのでここで説明。


「「「「……」」」」


 性能を説明したところで反応を見ると、目が点となり全員終始無言。


 まあ、いい。説明を続けよう。


 ホルダーのショップでの値段を説明。炎の胸当ては110,000P、美酒散乱は770,000P、美酒満開はなんと40,000,000Pの値が付いていた。


 俺のショップ内で買える最高の武器である、光子剣 (+4000) 25,000,000Pが余裕で買える。俺が愛用している霊子ナイフが(+180)なのだから、単純計算で二十二倍になる。正直、この光子剣がどれほどの威力なのか想像もつかない。七等呪位程度なら無双できるのではないだろうか?


「この防具と美酒散乱についてはオークションに出してみましょう。でも、美酒満開についてはリスクが高すぎるわ。出展者の番号が伏せられているとはいえ、それがどこまで信用できるのかわからない以上、どこから情報が漏れるかわからないわ」


「そうですね。副所長の言うとおり、リスクは避けるべきだと思われます。この品はあまりにも危険すぎます。それにお金がポイントに変えられない以上、ポイントの貯金として取っておくべきではないでしょうか」


 星野さんの言うことは俺も納得。だけどオークションでは支払いはお金とポイントでもできるはず。ポイントでの支払いと条件を付けられないのだろうか?


「条件を付けることは可能のようです。ですが、条件を付けると落札額が下がる傾向があるようです」


 なるほど、そういうこともあるのか。条件が厳しいと落札希望者が減るということだろう。この美酒満開オークションに出せば間違いなく天井知らずになる可能性がある。だが、それをポイントで払えるホルダーがどれほどいるかってことだ。


 ショップで40,000,000Pなのだから、それが最低落札価格になる。普通に狩りをしているホルダーには到底無理な数字だ。金での支払いなら引く手あまただろうが。


 しかし、どうやらこのオークションサイトは海外のホルダーも参加できるようだ。世界のホルダーなら払える人もいるのでは? とも思ったが世界中から命を狙われるのは勘弁だな。やめておこう。


「恢斗、お父様に売ってみたら如何かしら? 一億くらいなら出すと思われますわよ?」


「それを言ったら、うちの研究所でもいくら出しても欲しがるぞ?」


「風速くん。こうなるのよ。まだ身内だからこの程度で済むけど」


「はぁ、死蔵しておきます」


「それがいいわ」


 残念だが、また一つ死蔵品が増えた。


 俺のエリクサー症候群は貪欲のようだ。



 



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