86.酒は人以外も駄目にする
初っ端からぶち込んでくるなぁ、この人。
瑞葵と麗華が水島顧問に剣呑な視線を向けている。
どうせいつかはこうなることはわかっていた。こんなにすぐだとは思っていなかったが。
今回は麗華にBP回復の習得をさせようと思っていたが、水島顧問にアンクーシャは見せたくない。しょうがない普通に戦うか。
「構わない。ついでなので今回は戦っている所の撮影をしよう」
「「!?」」
「せっかくだ、クレシェンテのみなさんにもどういう相手なのか見てもらったほうがいい。いつものとおりの訓練だ。俺はサポートに徹する。瑞葵が前衛、麗華が後衛。TPが切れそうになったところで止めを刺すのパターンだな」
俺が本気を出す時はよほど危険になった時だけ。まあ、問題はないだろう。
「聞かせてほしいのだが、君たちのレベルはいくつだ?」
「まあ、そのくらいはどうせ鑑定されればわかることだから教えよう。俺はレベル14、瑞葵はレベル5、麗華はレベル2だな」
「レベル5とレベル2に七等呪位の相手をさせるのか! 自殺行為だ!」
「だから、俺がサポートすると言っている」
「君だってレベル14じゃないか! 素人に毛が生えた程度だろう。七等呪位を倒せると言っても運が良かっただけだろう!」
運がいい? 本当に何度も笑わせてくれる。俺のことを見下せば見下すほど、己の無能さが顕著になっていくんだぞ。
「俺がホルダーになって初めて戦ったのは八等呪位だった。それ以降、人助けでザコを何度か狩ったが、七等呪位を十三体倒している。そのうち九体は単独でだ。運で勝てるなら、お前は俺と同じレベルの時に七等呪位を何体倒した?」
「くっ……」
ザコとは違うのだよ。ザコとは!
「言っただろう。俺たちに古い考え方は必要ないと。手緩いんだよ、今のホルダー連中は。だから、強くなれない。関東四大派閥? そのうちクレシェンテが台頭してトップになり、関東四大派閥が平伏すだろうな」
「そこまで大口が叩ける恢斗は頼もしい反面、
「言っていることは正しいのだがな……」
そこの二人、なぜ呆れた目を俺に向ける。俺は間違っていないぞ!
「……いいだろう。見せてもらおうか、その実力とやらを」
鼻で笑って挑戦を受けてやった。
今日はこれまで。さあ、帰ろう。黄金街には興味があるが、いつでも来れるしな。明日に備え体調管理は大事だ。
翌日、ホームセンターで土嚢袋と砕石を買いホルダーに収納。ちゃんとクレシェンテで領収書を切る。これ大事。
クレシェンテに着くと瑞葵も麗華も揃っていたので出発。黒のワンボックスカーで移動らしい。運転手は赤星さんで元自衛隊通信科にいたそうだ。今日の撮影担当でもある。
車で移動すること十五分。国立競技場横の体育館がその場所。駐車場に車を駐めて撮影機材を持って移動。どんだけ持って来ているんだ? 聞けば三台用意してきたそうだ。
七等呪位がいたのは陸上競技場のトラック内のフットサルコートの横。動きやすいいい場所だな。
酒は人を駄目にするというが麒麟すら駄目にするらしい。
「雷と炎を操るぞ」
「なるほど。君が鑑定スキル持ちか」
それが何か?
瑞葵がバトルフィールドを展開し、赤星さんが三方向にカメラを設置して、そのうちの一台に取りついて撮影するようだ。二台は手元のタブレットで遠隔操作できるらしい。ハイテクだ。
「「ぷぷっぷ……」」
なに人の姿を見て、笑っているんだ! ごらぁ!
お前らが、忍者頭巾を装備しろと言ったんだろうが!
「よくお似合いですことよ。ぷぷっ……」
「そうだな。似合っているぞ。ぷぷっ……」
くっ、性能がいいだけに文句がいえない。
そうして、赤星さんが準備している間に麗華に買ってきた砕石を一袋分渡す。
「これは?」
「石だ。今日の目標は瑞葵は剣術、麗華は投擲の習得だ。いつもどおりスキルはどんどん使っていけ。瑞葵が剣で攻撃して疲れたら下がり、俺と麗華で石を投げつける。瑞葵が回復したら剣で攻撃。これを繰り返す。瑞葵のTPが切れたら止めを刺しにいく。OK?」
「今日は私の強さを思い知らせますわ!」
「投擲か、あまり自信はないがやってみよう」
「それと、瑞葵は奴の雷に気を付けろ。麻痺する可能性があるからな。麻痺したらすぐに言え」
「麻痺したら喋れるのかしら?」
揚げ足を取らんでいい。ジェスチャーでもなんでもいいからしろ。
「では、狩りの開始だ」
「「はい!」」
「
戦闘開始。麗華が勇撃の波動を発動。今回は絶対に口に出すなと厳命したので、ちゃんと無言でスキルを使ったようだ。
これで水島顧問にはわからないはず。
できるだけ、俺たちの情報は渡したくないからな。
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