87.不思議な踊り

 骸骨スケルトンが俺の傍に来たので聖耐性のスクロールを渡す。


「使ってみろ」


 骸骨スケルトンがスクロールを開いた後、俺をジッと見てくる。


「覚えたか?」


 コクコクと頷く。


 化生モンスターの場合、あの頭痛はないようだ。羨ましい。


 死草原狼グラスウルフ・UD骸骨スケルトンのどちらに使うか迷ったが、元がレア種の骸骨スケルトンに使うことにした。これで骸骨スケルトンの強化になればいいな。


 そうこうしている間にも瑞葵が、麒麟美酔きりんびすいに剣技とはとても言えないど突き合いを繰り広げる。死草原狼グラスウルフ・UDがいい感じで麒麟美酔きりんびすいの後ろ脚に噛みつき瑞葵を援護。


 今、俺たちは瑞葵、俺、麗華でYの字の形にフォーメーションを組んでいる。俺と麗華の間に骸骨スケルトンを配置させる。


「瑞葵。そろそろ骸骨スケルトンの後ろに下がれ。骸骨スケルトンは挑発だ。麗華、準備はいいな?」


「問題ない」


「じゃあ、下がりますわ!」


 死草原狼グラスウルフ・UDが再度、麒麟美酔きりんびすいの後ろ脚に噛みついた時を見計らい瑞葵が下がり、骸骨スケルトンが挑発を発動。


 麒麟美酔きりんびすい敵愾心ヘイト骸骨スケルトンに向いたところで、俺と麗華が投擲開始。石を投げて投げまくる。


 後で拾い集めるのが面倒だな~と思いながら投げる。陸上のトラック内に放置はできないでしょう~。できるだけ拾って帰るつもりだ。


 麗華は自信がないと言っておきながら、百発百中。さすが才女は違う。それに対して俺れはというと、たまに外れて麒麟美酔きりんびすいの後ろ脚に噛みつき攻撃をしている死草原狼グラスウルフ・UDにぶつかっている。ごめんな~。


 投擲攻撃のせいで思うように前に進めない麒麟美酔きりんびすいが業を煮やし前方に手当たり次第に炎や雷を放ってくる。狙いが適当なので見当違いの方向に飛んでいく。


 こいつ、あまり頭が良くないな。


「回復しましたわ! 行きます!」


 瑞葵が再度突貫。


 その間に崩れたフォーメーションを組み直す。


 それを二度繰り返したところで、瑞葵の動きに変化が訪れる。先ほどまでのど突き合いから、多少だが双剣を上手く扱い始める。


 これは覚えたか。と思ったら今度は不思議な踊りを踊り始める。麒麟美酔きりんびすいが驚き戸惑っている。あいつそんなスキルまで覚えたのか? 


 なんて、思っていると骸骨スケルトンが瑞葵を担いで逃げ始める。何が起きているのかわからないが、援護したほうがよさそうだ。残っている石を全部投げつけた後に、麒麟美酔きりんびすいの前に出る。


 用意した石も投げ終わったことだし、そろそろいいか。


「少し遊んだ後、こいつを抑え込む。止めは任せる」


 踵落としからの回し蹴りその攻撃にプチサンダーも追加。並列思考様々。


 炎を吐こうとした口をアッパーカット! 上空に炎の柱が立つ。


 その後も少しばかりいろいろな動きでの攻撃や忍者刀影縫いを麒麟美酔きりんびすい相手に試す。二足歩行の化生モンスターと四足歩行の化生モンスターとでは戦い方が変わってくるので、なかなかに楽しい。


 忍者刀影縫いは影縫いが発動すると、少しの間相手の動きを止める効果がある。麻痺とは違いすぐに解けるようだが、結構頻繁に発動していたので使える。霊子ナイフの最期の枠に合成しようと思う。


 少しの時間戦いを楽しませてもらった後、ステップからの裏拳を喰らわてできた隙に、霊子ナイフと鬼殺の剣で前脚を攻撃。すぐに武器をホルダーにしまい、麒麟美酔きりんびすいの角を持ってブルドッギング・ヘッドロックをかましてやる。そのままヘッドロックで抑え込む。


「今だ!」


 麗華が最後の勇撃の波動を使い、死草原狼グラスウルフ・UD骸骨スケルトン、そして不思議な踊りを踊っていた瑞葵も参戦。


 定石どおりフルボコに。


『レベルが15になりました』


『レベルアップに伴いSPステータスポイントを得ました各項目に振ってください』


『アイテムをドロップしました。ホルダーに収納します』


『ハイランクキラー達成により比率が加算されました』


『小エリアボス討伐達成ボーナスによりホルダーランクが追加上昇しました』


『小エリアボス討伐達成により特殊アイテムを獲得しました。ホルダーに収納します』


使役化生モンスターのレベルが上がりました』


『使役アンデッドのレベルが上限に達したので進化できます』


 まあ、こんなものだろう。


 それより、使役アンデッドがレベルカンストして進化できる。これは楽しみだ。


「恢斗! あなた、麻痺したら助けると言ってましたわよね! なぜ、助けに来ないのですか!」


 ん? なんのことだ?


 どうやら、麻痺すると声が出なくなるらしく、痺れた体で助けろというジェスチャーしたのがあの不思議な踊りだったらしい。


「ははは……すまん。まあ、骸骨スケルトンが助けたんだ。結果オーライ?」


「笑いごとで済ませようなどとしても許しませんわ! 貸し一つですわ!」


 へいへい。今回は俺が悪いので甘んじて受けましょう。


「はーい。全員集合!」


 なんだなんだと、赤星さんも水島顧問も全員集まる。


「今から、石の回収を行います。全部拾ってください。以上」


 全員が先ほどまでの戦場を見れば、俺と麗華が投げた石が散らばっている。このまま帰ったら明日のニュースに載りかねない。悪質ないたずらとして。


 そのことに気づき、全員渋々と石を回収し始める。


 意外と死草原狼グラスウルフ・UD骸骨スケルトンが頑張ってくれたので早く終わった。死草原狼グラスウルフ・UDは死んでるくせに鼻が利くようだ。一番の功労者かもしれない。


 後でちゃんと進化させてやるからな。




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