82.顧問採用について
瑞葵と麗華が席を移動して俺の正面に陣取る。
今度は俺の面接か!?
「か、顔合わせ会の準備を手伝ったほうがよくないか……な?」
「月山さんに任せておけば、問題ありませんわ」
「ほかにも人はいるのだから問題ない」
そ、そうですか……勝手に決めたことが、そうとうお気に召さなかったようだ。
「さっきも言ったが、正直顧問としては期待していない。欲しいのは俺たちに欠けている知識。どうせ、誰を雇ったところで獅子身中の虫になる。それならまだ、はっきりと自分はホルダー管理対策室側の人間だと表明した水島氏は見どころがあるんじゃないか?」
「そんな簡単に決めていいこと? 何人かと会って話を聞いたほうがよくなくて?」
「恢斗の言いたいことは理解したが、私も瑞葵に賛成だ」
瑞葵と麗華の言うこともわかるのだが、こうして組織を立ち上げた以上実績作りと資金繰りは急務なのだ。これからクレシェンテでは大きな金が動き出す。
そこから、その金の動きでその内情を見られたくないのだ。
「スポンサーであるご当主がホルダー管理対策室と良い関係を築くと言った以上、必ずどこかで折り合いをつけねばならない。遅かれ早やかれどこかでクレシェンテにホルダー管理対策室の人間が入ってくる。ならば、ホルダー管理対策の面目を潰さず、経営に関わらない顧問として雇ったほうがいいと考えた」
「だからといって、急ぐ必要はなかったのではなくて?」
「そうだな」
「今回はご当主の要望での顧問の紹介だったが断れば、次はクレシェンテ中枢部に人を送り込んでくるぞ? それもどんどん断り切れなくなり、結局経営にまで口をはさむ立場の者を送り込んでくるかもしれない」
「「……」」
要は今回の顧問はお試しだ。墓穴を掘ればホルダー管理対策室への手札になるし、いい人材であったならばでホルダー管理対策室との関係が良くなると思えばいい。
「なら、二人目の顧問は二人に任せる。そっちの決定権は二人にしよう。それで、手を打たないか?」
顧問は二人と最初から決めていた。最初からまともな顧問を得られるとは思っていなかったので、二人を競わせようという話になったからだ。
いい感じに競い合ってくれれば御の字。駄目ならどちらか駄目なほうを切る予定にしている。
「いいですわ。納得できる方を雇いますわ」
「そうだな。こちらの意を汲んでくれる方が理想だな」
要するに紐付きじゃない人ってことだろう? 正直、難しいんじゃないか? まあ、瑞葵父の人脈を使えばなんとかなるのかもしれないから、期待はしていいのかも?
「それで、恢斗。あの質問の意図はなにかしら?」
麗華が水島氏が言ったことを書き留めたメモを差し出してくる。
「この情報から知りたかった、いろいろなことが見えてきた」
一つはレベル。俺はレベル100でカンストと思っていたが、水島氏はレベル128まで上げたという。この話は今回の一番の収穫かもしれない。
レベルが100までだと思っていたので、そこでステータス値の上昇も終わりだと思っていた。上げるのが大変だろうがレベルに関して気にしなくていい感じだ。これで、更に俺たちの優位性が上がることになる。
なにせ、俺たちは適合率チートだ。レベルが上がれば上がるほど、補正値で差を付けることができる。
二つ目は適合率。適合率は戦っているとたまに上がることは知っている。実はこの適合率にも経験値があると俺は思っている。俺と瑞葵、麗華とでは適合率の上がり方が違うからだ。おそらく、ハイランクキラーが関わっていると思われる。
まあそれはさておき、水島氏は二十二歳の時に適合率141%。引退した五十歳の時に適合率226%。二十八年間で85%上昇したことになる。単純計算で年3%上昇したことになるのだ。
俺は18%、瑞葵は4%、麗華は2%、この短時間で上がっている。
これは、間違いなく格上と戦っているからに違いない。そのうえで、ハイランクキラーの恩恵も受けていると考えれば、この数字はおかしいものではないと思われる。
何度も言うが、適合率チートだとレベルが上がれば上がるほど、補正値でほかのホルダーに差を付けることができるのだ。
ホルダーは適合率150%からが本番。適合率200%でハイランカーを目指せるのではないだろうか?
俺は既にハイランカー以上、瑞葵も麗華もそれほど時間をかけず適合率200%に届くと思われる。
水島氏が何歳の時に適合率200%を超えたのか知らないが、計算上十九年はかかっていることになる。
この差はデカいぞ。俺たちが水島氏が引退した五十歳までホルダーを続けたとして、瑞葵と麗華は彼のステ値の二倍以上、俺は三倍、四倍……いやそれ以上になっている可能性がある。
そして、三つ目、ハイランクキラーの獲得数。ハイランクキラーについては知っていた。おそらくその恩恵についても知っているだろう。のにも関わらずだ、演技でなければ生涯獲得数は十回前後。
これだけ有用な称号を十回程度しか取っていないのは、その取得方法を知らないのと、手緩い育成方法で育てられてきたからに違いない。
この程度で水島氏は引退時ホルダーランク247まで上がった。
笑ってしまう。
ホルダーランク1、間違いなく手が届く!
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