79.組織名
やっとかと思ったが、違う用事かもしれないのであまり期待はしないで行こう。
土曜は早めに家を出て銀座に寄る。有名なフルーツパーラーでフルーツサンドを買っていく。お昼は老舗の天丼屋でかき揚げ丼を食べた。想像していたかき揚げと違ったけど旨かった。四千円の海老天丼、いつか食ってみたい。
今日も勝手口からご訪問。瑞葵に呆れられるが気にしない。気が楽なほうがいい。
手土産を渡すと、
「フルーツサンドね。私これ好きよ!」
それはようござんした。神薙邸に来るときはお土産が一番気を使う。
瑞葵の部屋に行くのかと思ったら、瑞葵父の所に直行。麗華も待っていた。勇樹と翔子は部屋にいるみたいだが、この場には呼ばれていない。
「今日来てもらったのはほかでもない。組織の認可が下りた。名前は悪いが瑞葵に付けさせた」
「構いません」
「クレシェンテ。イタリア語で三日月、成長を意味しますわ。神薙家の家紋が三日月なのでそこから付けさせてもらいましたわ」
いいんじゃないのか。わかるかは知らないが、神薙家が後ろに付いているとの意思表示にはなる。
「場所は新宿区歌舞伎町。新宿区役所近くのビルの四階フロアーを借り切った。人の手配も済んでいる。明日からでも始められる状態だ」
凄い場所だな。俺の近くの駅からでも三十分くらいの通いやすい場所だ。
「ホルダー管理対策室はなんと?」
「認可を早めてくれたのがホルダー管理対策室だよ。すぐにでも依頼を出したいそうだ」
「それはいいいな。月曜から始めたいが、瑞葵と麗華はどうだ?」
「私はいいわよ」
「私も問題ない」
なら決まりだな。実績になり、なによりお金が稼げる。俺はそこから給料をもらえるようになる。保険や税金はクレシェンテで対応してくれるので面倒もない。良いこと尽くめだ。
「ではそのように連絡しておこう。明日はその事務所で働く者たち顔合わせをしてほしい。それと、君の望んでいた顧問候補と会ってもらいたい」
こちらで望んでいる顧問は二人。情報元は多いほうがいい。
「早いな。それもホルダー管理対策室か?」
「そうだ。ホルダー管理対策室には一名頼んでいる。こちらの望みどおり、元ホルダーランク200台にいた者を紹介してくれることになった。顧問にするかは君たちに任せる」
こちらの条件どおりだな。あとはお前たちで見定めろということか。もう一名はホルダー管理対策室を通さない人材にするようだ。
どうやら、前回の
「了解した」
午前中に その顧問候補と面談して、お昼はクレシェンテで働く方たちと立食形式での食事会を行い顔合わせ。一度、この組織を立ち上げた以上、雇われる人も簡単にはもう辞めますとは言えない。言わば、一蓮托生の仲間になるのだ。
表の組織ならまだしも、裏の組織なのでいろいろと制約があるらしい。事前に言われていたが、俺に関しても家族構成から学歴、友人関係、犯罪履歴などまで調べられると言われていた。隠すようなこともないので気にはしていない。
唯一、調べられないのがホルダー能力。これは秘匿していいらしい。だが、鑑定持ちがいればバレるし、何度か一緒に戦えばある程度はわかると思う。ホルダー管理対策室だって調べていないわけがない。建前上のことだろう。
すべては明日からだ。
「成り行きとはいえ、東城兄妹を保護していただきありがとうございます」
「勇樹はまだ慣れず緊張しているようだが、翔子は物怖じしない性格のようでみなに可愛がられている。安心したまえ」
確かに翔子はほぇ~として物怖じしない感じだな。勇樹は頑張って慣れるしかないだろう。
「さて、風速君。それでは勝負といこうか」
勝負? なんだそれは?
瑞葵父が俺の前に細長い木箱を差し出してくる。これは、そういうことか? 瑞葵は呆れ顔。麗華は苦笑い。どうやら、このことを知っていたようだな。
「拝見します」
箱を空け中を確認。掛け軸だな。広げてみる。豪快な虎の絵だ。
「円山派の円山応脚。本物ですね」
瑞葵父がホッとした顔を見せる。意外と無難なところを持ってきたってところか。
「価値は百五十万」
ピックっと瑞葵父の眉が上がる。瑞葵はクスクスと笑っている。
「ま、まあ、だ、妥当な価値だろう」
まったくそうは見えない。まあ、前回ほど価値が離れていたわけではないようだが。
次回からは白手袋とマスクを持参したほうがいいかもな。
今日のところはこれで退散。
明日が楽しみだ。
雇う雇わないは別として、俺たち以外のホルダーの話が聞けることは重畳。
今夜寝れるかな?
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