67.恐怖の克服

 久しぶりに講義の後、自由な時間となった。


 部屋に帰り掃除をする。冷蔵庫の中は空っぽだ。最近、夜は外で食べていたので朝くらいしか食べない。といっても、食パンにジャムくらい。料理なんて、休みの日にたまにやるくらい。


 たまにはスーパーに行って買い物でもするか。ホルダーのショップは店舗価格より二割から三割くらい安いが、お弁当やお惣菜は売っていない。それと特売品にはやはり勝てない。


 行きつけのスーパーに行って特売品を物色。トイレットペーパーが安い買いだな。時間的にお弁当やお惣菜に値下げシールが貼られる時間帯。買うかは別として行って見てみよう。なんか気になるんだよねぇ。


 百円引き二百円引きのシールが貼られている。半額シールはあと一時間くらい後にならないと貼られない。今が一番選り取り見取りだ。


 そんな所を高校生くらいの二人がうろうろしている。


 気になったので鑑定してみた。


 東城勇樹とうじょうゆうき 適合率172% ホルダー登録可


 東城翔子とうじょうしょうこ 適合率168% ホルダー登録可


 兄妹だろうか? それにしても、きたー!


 でも、どう見ても高校生くらいにしか見えない。さすがに高校生じゃなぁ。声を掛けるか迷ったが今回はやめておいた。名前は記録しておいたので機会があれば話をしてみたいな。


 その日は値引きされたお惣菜を買って帰った。夜はスケジュールを共有できるアプリの作成をする。複雑な機能は必要ないので単純な機能だけでいいだろう。今週中までには稼働できるようにしたいな。


 最近、忙しく動いていたので、ほんの少しの自由な時間だったが充実した時間だった。



「さあ、探しますわよ!」


 なぜか、やる気に満ちた瑞葵。仲間が増えて嬉しいのか? それに比べ麗華は冷静そのものだな。七等呪位を探すのは二人に任せる。


 この駅裏の七等呪位も近場にはいなくなってきた。いちいち、探す時間が面倒。国の機関は七等呪位以上の化生モンスターの場所を管理している情報が欲しい。喜んで狩ってやるのにな。


「見つけましたわ!」


 駅前からはだいぶ離れた場所の空き地。


 ・影暗殺者シャドウアサシン 七等呪位 暗殺者が怨念に呑まれアンデッド化した成れの果て。素早い動きと多彩な技で相手を翻弄する。


 来ました、ボーナスステージ!


 おそらくこいつは闇騎士ダークナイト並みに強いはず。普通に戦ったら苦戦は免れない。瑞葵と麗華の訓練にはちょうどいい。危なくなったらアンクーシャを使えば一発逆転できる。


 そして、せっかくのこの状況なのでもう一つの検証もやってみる。


 二人に化生モンスターの情報と、今回の作戦を説明。


「私と麗華だけでは七等呪位とは戦わないと言ってなかったかしら?」


「恢斗は戦わないということか?」


「どちらも違う。今回、俺はPT《パーティー》から外れて参加してみる。二人の守りに徹して攻撃はほとんどしない。メインは二人だ。危険と感じたらアンクーシャを使え」


 そう、俺がPTから外れている状態で戦闘に参加した場合、どうなるのかを知りたい。


 戦闘に参加したと認識され経験値がもらえるのか。戦闘には参加したとは認められず経験値がもらえないのか。あるいはそれ以外なのか。


「おそらく今回の化生モンスターからは半端ないプレッシャーを感じると思うが、気圧されるなよ。名前からしてスピードタイプかもしれない。動き回って攻撃しろ」


 おそらく、この化生モンスターには闇系の魔法は効きにくいだろうから、麗華の黒魔導士の杖を水流槍と交換。といっても、麗華は勇撃の波動がメインだけどな。


「じゃあ、始めますか」


「バトルフィールド展開!」


『バトルフィールド展開』


 今回も麗華が気合の入った声で、バトルフィールドを展開。


 だから、大きな声を出さないでください。てか、気に入ってしまったのか?


死草原狼グラスウルフ・UD骸骨スケルトン召喚! けん制に専念しろ。瑞葵

と麗華の邪魔をするな!」


 影暗殺者シャドウアサシン闇騎士ダークナイトと同じで赤い霧のようなものを纏っている。強者の風格を醸し出しているようだ。


「す、凄いプレッシャーを感じるのだが……」


「足が竦んで動けませんわ……」


「死にたくなければ動け! ほら来たぞ!」


 影暗殺者シャドウアサシンは挑発を使った骸骨スケルトンに狙いを定めたようだ。


 予想はしていたが動きが速い! 加速!


 小太刀で骸骨スケルトンを攻撃しようとした間に入り込み、霊子ナイフで小太刀を受け止め蹴りを入れて弾き飛ばす。


「ほら何してる! 攻撃のチャンスだぞ!」


「「は、はい!」」


 従姉妹だけあって息がぴったりだな。


「勇撃の波動!」


「やぁー!」


 恐怖に打ち勝つってのなかなかに大変なことだ。闇騎士ダークナイトと戦った時は本当に運がよかっただけだ。あの戦いで感じた恐怖は俺の意識を大きく変えた。相手に呑まれたら終わりだってことに。


 二人はこの戦いで恐怖を知り、その恐怖というプレッシャーをどう乗り越えて戦うかを学んでほしい。


 恐怖に呑まれず、恐怖の中でも冷静に判断しどう戦うか。あるいは、その恐怖をどう受け流すか乗り越えるかをだ。


 そう、恐怖を克服する大事さをな。






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