54.手土産探し

 瑞葵は牙狼の小手を装備しているので、氷猿の小手は俺が装備することにした。


 魔玉は一度使って効果を確認してから考えよう。


 そして、俺がドロップした愴魁猿ソウカイエンの毛皮。またしても瑞葵が寄こせとうるさい。ほとんど見た目は俺の持つ魁猿カイエンの毛皮と違いはなさそうだが、腕の所に青色の模様があって映える。これをコートに仕立てたら絶対に格好いいものになる。


 すったもんだのあげく、貸しということで持っていかれた……。一見さんお断りの料亭で必ず奢らせる! 絶対だからな!


「それで今日のことはどうするのかしら?」


「どうもしない。あっちからまた接触してくるだろう。当然」


「そうね。その辺は恢斗に任せるわ。それより、日曜にお父様が恢斗に会うそうよ」


 日曜って明後日じゃねぇかよ! 


「ホルダーについては知っていたわ。さすがに私からその言葉が出て驚いていたけど。ふふふ」


 ホルダーについて知っていたとはいえ、詳しく知っていたようではないようだ。聞いたことがある程度らしい。


 そこで瑞葵の説明と俺が渡したポーション類の話を聞いて興味を持ってくれたそうだ。そこでホルダーに関して調べてくれることになり、明後日の日曜に俺を交えて話をすることになったみたいだな。


 こんなに早く会えるとは思っていなかったので、詳しいプランなどはまだ練っていない。しょうがない、行き当たりばったりでいくか。


 しかし、名家のご当主に会うのだから手ぶらで行くのは下手い。


「なあ、瑞葵の父の好きな物や好きな食べ物ってなんだ?」


「そうね。お父様は大の骨董品好きね。食べ物にはあまりこだわりはないわね。強いて言えばお酒が好きなくらいかしら」


 食べ物関係は駄目だな。桁違いのお金持ちだから俺が買えるようなものでは恥をかくだけだろう。


 そして、骨董品。あるじゃないか、ホルダーの中に死蔵されているものが。明日の土曜日も大きな骨董市に行く予定なので、そこでもいいものが見つかるかもしれない。価値の上限なしで探してみよう。


「了解だ。何時に行けばいい?」


「お父様も忙しい人だから、午前の九時でどうかしら?」


「問題ない。で、瑞葵の家ってどこ?」


「……」


 神薙家がどんなに有名な名家だろうが、家がどこにあるかなんて知るわけねぇだろ! 俺はストーカーじゃないんだからな!


 呆れ顔の瑞葵に住所を教えられその日は解散。



 今日は千葉県にある巨大イベント会場で行われる大骨董市に足を伸ばしている。骨董市でも有数の規模を誇るイベントらしい。


 あまりの人の多さと品物の多さに度肝を抜かれている俺。正直、TPがいくらあっても間に合わない。


 おもちゃ、時計、家具、西洋陶器いろいろある。刀や甲冑なんかもあって目移りしてしまうが、今回の目的は日本の陶器と掛け軸を探すのがメイン。


 それでもいくつか見つけた。


 一つ目が十代柿右衛門花鳥図皿五枚、価値五百五十万円、元値二十五万円。店主は箱が綺麗だったので、後から箱だけ作り直されたと知らずに新しいものと思っていたのだろう。有田焼の柿右衛門柄なら骨董品でなくてもこのくらいする。そこを値切って二十万で購入した。


 もう一つが横山大成の紅梅雪図の掛け軸。なんと価値二千二百万円、元値は十五万円。目を疑ったね。これも箱と表装が新しくされていて骨董品っぽくない見た目だった。店主曰く、表装代だけでこのくらいするらしく本紙自体は飾りとのこと。言い値で購入。


 ほかにもめぼしいものはあったのだが、元金額が百万円を超えるものだったので残念ながら見送り。


 上記二つがあれば手土産には十分だろう。


 残った時間で価値三十万前後のアンティークを買い集めた。さすが有数の大骨董市だけあって大量に仕入れることができた。ホクホク顔である。


 ついでにホルダーを二つ見つけている。骨董には関係ないがアパレル系の出店があり、脇下のガンホルダータイプのショルダーバッグだ。グレーが右に、ストロベリーピンクが左側にバッグがついている。実用性はともかく格好いい。


 そのほかにも結構な数の化生モンスターとホルダーがレーダーに映っていた。興味がないので無視していたが、これだけ人が集まると化生モンスターも生気を吸い放題ってことなんだろう。


 問題はその化生モンスターをどうやってホルダーが狩っているかだな。こんな人が多い場所でバトルフィールドを展開しても意味がないような気がする。


 俺みたいに通りすぎさまに一撃必殺で決められるホルダーが集まっているのだろうか? 正直、そんなホルダーが多くいるとは思えない。


 この前戦った花咲レベルでなんとかってところだ。柿崎クラスでは十等呪位ならできるかもしれないが九等呪位を一撃では無理だろうな。ましてや八等呪位なら尚無理だ。


 時間があれば戦っている所を見てみたかったが、時間的に無理。今日の目的は神薙家への手土産探しと、俺自身の金策がメインだから。


 ほかのホルダーに関してはまた今度だ。






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