52.ユニークスキル

 この花咲、確かに強い。柿崎とは比べ物にならないほどにな。


 だが、それは技術的なことだけだ。おそらくスキルのレベルが高いところからきているのだろう。全体的な動きを見る限り俺よりステ値が高いようには思えない。こいつは適合率150未満だ。


 問題は固有ユニークスキル持ちかどうかだ。柿崎は持っていないと見ている。前回本気を出すと言っていた割にほぼ前々回と変わらない強さだった。使っていたのは身体強化のようなものだけ。それだって、この花咲も使っているところから、固有ユニークスキルとは言い難い。


 もしかすると、戦闘に使う以外の固有ユニークスキル持ちなのかもしれない。そもそもが、すべてのホルダーが固有ユニークスキルを持っているのかも不明だ。


 田村も火魔法は使っていたがオーブで覚えられるので固有ユニークスキルは持っていないか、戦闘以外の固有ユニークスキルだったのかもしれない。


 唯一、固有ユニークスキルを見たのは、木村の吸着というスキルだけ。


 瑞葵の引力、斥力、俺の加速は固有ユニークスキルっぽい。並列思考は有用だが固有ユニークスキルというには微妙だな。


「どうした? Lv63のホルダー1831 花咲充はなさきみつる。お前の実力はこんなものか? 出し惜しみせずに固有ユニークスキルでも使ったらどうだ?」


「すべてバレているのか。チッ、いつの間に鑑定札を使かわれた? 注意していたはずなのに……」


 鑑定札? そんなアイテムがあるのか。ドロップアイテムか? それともショップに出てくるのか?


「正直、君がここまでの実力とは思わなかった。なるほど、七等呪位を一人で狩れるはずだ。いいだろう。格下如きに固有ユニークスキルを使うことなどないと思っていたが使ってやろう。これで君の負けは確定することになる。まあ、真の強さというものを、己の身で味わい今後の研鑽に役立てたまえ」


 ほう。相当な自信があるようだ。あの言葉から間違いなく攻撃系の固有ユニークスキルだな。


「さあ、迷いたまえ。逆次元」


 攻撃系の《ユニーク》スキルじゃない? ん? 仮想空間の雰囲気が変わった?


 花咲が間合いを詰めて攻撃してくる。さっきと動き自体は変わっていない、いや逆に動きが悪くなっている? なんだ余裕で躱せる動きだ。メイスの動きを見て躱す。


 が、気づけば花咲のメイスで殴られて吹き飛ばされていた。


 何が起きた? 問題なく躱せるはずだった。


 花咲が間髪入れずに攻撃してくる。これも十分に躱せるはずの速さ、なのに躱すどころかものの見事に殴られて吹き飛ばされる。


 だが何が起きたかは、家政婦さんは見たばりに俺の並列思考さんも見ていた。メイスの動きに合わせて躱そうとした俺の体が、逆にメイスに向かって動いたことに。


 なぜ俺はメイスを躱すはずが、メイスに向かっていった?


 花咲がまた間髪入れずに攻撃してくる。焦っている? このスキルは短時間しか使えないのか?


 接近してきてメイスを振りかぶり俺を攻撃。並列思考で自分の動きをしっかりと確認、認識させて躱す。やはり自分からメイスに向かい殴られた。


 さすがにBPがヤバい。いったん、間合いを取って回復だ。


 後ろに下がったはずなのに、なぜ前に進んでいる!? なんだ、俺の体の動きがおかしい!?


 不味い! 取りあえずBP回復!


 また、メイスで殴られたがギリギリ回復が間に合った。すぐに起き上がり連続でBPを回復。


「回復スキル、厄介ですねぇ」


 いやいや、お前の固有ユニークスキルのほうが厄介だよ!


 だが、なんとなくわかった。その場でジャンプ。普通にできる。左にステップ。なぜか右にステップする。


 なるほどな。


「どうやら、気づかれたようですね。やはり、化生モンスターと人間では理解力が違いますね。ですが、わかったとしてもすぐに順応できませんよ。クックックッ」


 確かにこの固有ユニークスキルに順応するには時間が掛かるだろう。この固有ユニークスキルはおそらく空間自体を影響下に置いている凄いスキルだ。


 だが、逆にその花咲自身も影響下にあるようだ。それでも動けているのは何度もこの固有ユニークスキルを使い己を順応させた結果だろう。動きが悪いのはまだまだ修行不足だからだろうな。


 確かに普通のホルダーなら初見殺し的なスキルだ。だが、普通じゃないホルダーなら何とかできるかもしれない。IQが高い奴とか空間把握能力の高い奴、そして俺。


 こいつの固有ユニークスキルは前後左右の動きを逆にするスキルで上下は含まれない。間髪入れずに攻撃してきたのは、少しでもそれがバレるのを遅らするため。俺もBP回復をできなければ終わっていた。


 しかしだ、確かに厄介なスキルだが、よく考えれば俺はこのスキルの天敵なのだ。


 さて、あのニヤついている花咲を地獄の底に叩き落してやろうかね。







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