46.ランクバトル(瑞葵)

 幻覚にかかっていた三人がやっと復活。二人でちまちまと化生モンスターにダメージを与えていたところから、五人揃ったところで化生モンスターを囲み五人全員が札を掲げる。


「「「「「五行印絶!」」」」」


 おぉー、合体技か!


 化生モンスターの頭上に五芒星が現れ、五芒星が収縮して光の玉になり化生モンスターを穿つ。化生モンスターが黒い霧となり消えていく。


「派手ね。なんで最初からこの技を使わないのかしら?」


「さあ?」


 なにか使えない理由でもあるんだろう。あるいは、ここの戦闘訓練を主題としていたのかもしれないし。


 化生モンスターとの戦いを終え、俺たちのほうへ歩いてくる五人組。


「どこの組織のホルダーかは知らないけど、戦いを盗み見るのはマナー違反だぞ」


「盗み見? 言いがかりはよしてほしいわ。私たちは堂々と見ていたのよ」


 木村の抗議に対して瑞葵が答える。俺と田村の時とまったく同じ状況。あの時、瑞葵はいなかったはずだが……。


「それは言葉の綾で、他人のフィールドの中に入るのがマナー違反という意味だ」


「そうか、それは知らなかった。ならばそれについては謝罪しよう。俺たちはホルダーになったばかりでな、ほかのホルダーと交流を持ちたくて来ただけだ。戦闘技術を盗むとかいう他意はない」


 盗めるような技量も持ってそうにないけどな。


「ふーん。君たちはアウトサイダーのホルダーだな。組織に入りたいなら紹介するが?」


 御免だな。


「今は組織に入る気はない。だが、アウトサイダーでやっていくのも限界がありそうだからな。こうして交流をもっておこうかと思ったんだ」


「なら、どんな交流を望む?」


「彼女はまだランクバトルをしたことがなくてな、同ランク帯のホルダーとランクバトルをやってみたいそうだ」


「君とやればいいのでは?」


 まあ、そう言うのが普通だな。


「俺とではランク差がありすぎて勝負にならない」


「君と彼女のランクは?」


「俺は3642。彼女は6441だ」


「ほう。珠代と同じくらいだな。珠代、相手をしてやれ」


「えー、私ですかー。まあ、木村さんが言うなら、仕方ないですねー。リクエスト、ホルダーランクバトル」


 瑞葵が俺をチラっと見たので、頷いておく。


「勝ったわ」


「ま、負けました……」


 本当に一瞬だった。


「珠代が負けた? ランクに500も差があったんだぞ? ランク偽称してたんじゃないだろうな?」


「失礼ね。リクエスト、ホルダーランクバトル」


 相手にランクバトルを挑むとこちらのランクが相手に知らされることを利用して疑いを晴らしたか。そんなことを咄嗟に思いつく瑞葵ってすげぇ。とも思うのだが、珠代って奴に聞けばいいんじゃね? 


 それにだ、相手が二回ランク戦を拒否ってたら、強制バトルになっていたってことに気づいているのだろうか? まあ、負けてもデメリットないけどな。


「むっ。確かに今回勝った分が上がったとすると間違いないか。珠代、どういった経緯で負けたんだ?」


「動き回りながら闇系の魔法で絶え間なく攻撃されました。あと私が攻撃しようとすると、何かに邪魔されました。結局、何もできずに終わりました……」


「彼女の装備は? それと闇魔法の大きさは?」


「黒いローブに杖でした。闇魔法の大きさは野球ボールくらいです」


「彼女の固有ユニークスキルは阻害系。攻撃はダークバレットが使える魔杖ってところか? 装備での強化とはやってくれるな」


 こいつ、意外と頭が切れるな。その状況分析は侮れない。


 それと聞きなれない固有ユニークスキルってのが出てきたな。もしかして、最初からあるスキルって固有なのか? 唯一無二ってことか?


「僕たちはまんまと嵌められたってわけだ。意外と君たち策士だね」


「何をもってそう言うのかわからないが、彼女はレベル2だぞ? 死なないように装備を良くするのは普通じゃないのか?」


「レベル2!? なるほど、そのとおりと言いたいところだけど、魔杖が一体どのくらいすると思っているんだい。オークションに出たとしたら初級のダークバレット付としても二百万は下らないぞ」


 二百万? ショップでは売ると十七万ポイントになっていたはず。そしてまた聞きなれないオークション。あるんだろうな。そこに出せばショップより値が高くなりそうだ。そのオークションの情報が欲しい!


「恢斗。たかだか二百万如きで文句言われてましてよ! そもそも、あの装備はわたくしには不釣り合いですわ! もっといい武器を寄こしなさい! 魔法戦士系の装備を!」


 だから、そんなのねぇよ! それに周りを見ろ、こいつらの呆け顔を。瑞葵の金銭感覚の違いに呆れているぞ? たぶん。


「自分の金で買ってくれ……」


「これだから吝嗇家は……。いいわ。そこのあなた!」


「な、なにかな?」


「そのオークションはどこでやってるの。教えなさい!」


「い、いや、教えろって言われても……そう簡単には教えられるわけがないですけどぉ……」


 ちっ、惜しい。そのまま答えればいいものを。瑞葵は意図して使ったわけではないようだが、おそらく王女の威圧を使ったはずだ。一瞬、ピリッとした感覚がした。


 怖ぇーな。瑞葵の王女の威圧。







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