45.ホルダー交流

「このまま負けるわけにはいかねぇんだよ!」


 剣の炎を消して純粋な剣技での攻撃に切り替える、柿崎。


 最初からそうしていれば少しはまともに戦えたのにな。もう遅い。まともに相手にする必要はない。


 柿崎にBPを回復する術がない以上、先ほど仕掛けた罠のせいでもうほとんどBPは残っていないはず。何もしなくても、もうすぐ自滅する。


「ち、ちくしょうー!」


 BP切れのようだ。俺の完全勝利だな。



『YOU WIN』


『ホルダーランクが上がりました』


『ホルダーにアイテムを送りました』


『390000ポイントが加算されます』



 俺が仕掛けた罠はこれ。


 霊子ナイフ+3(風 呪い) (+180) 風属性。風切りTP20 一定の確率で呪い(命奪)を与える。


 黒曜こくようからドロップした命奪の短剣を霊子ナイフ+3に合成させた。上手くいけば呪いが発動すると思って試したが、見事に発動。俺が予想していたとおり、BPを徐々に削る効果だったようだ。


 この呪い(命奪)だけで柿崎のBPをゼロにしたようなものだ。呪いは解呪できないのだろうか? それとも時間で解呪されるのだろうか? 呪い、怖いな。


「3000番台まで落ちた……」


「あら、終わったの。もちろん勝ったのよね?」


「あたりまえだろう。どこに負ける要素があった?」


「そう。じゃあ、行きましょう。今日のノルマはまだよ」


 柿崎……このままにしておいてやろう。ちなみにランクは197アップしてホルダー3624になった。


 会計を済ませ外に出る。瑞葵はいつの間にかどらちゃんを抱っこしている。


「で、ノルマってなんだ?」


「なにって、ホルダー交流として、私もランクバトルをするに決まっているでしょう!」


 レベル上げじゃなくそっちか。しかし、化生モンスターを探すよりそっちのほうが大変だと思うぞ? それにレベル上げのほうが大事なんだが……。


 なので、ホルダー探しがメインではなく、あくまでも七等呪位を探す間にホルダーを見つけたら接触するということで納得してもらう。数時間とはいえ一日を無駄にしたくない。


 ホルダーだって毎日化生モンスターを狩りに出ている保証はない。今日は休みってこともある。


「見つけたわ!」


 いるのかよ。なんて、間の悪い……。


 レーダーを見ながらその場所に移動。昨日の児童公園の近くだ。


「なに!? この気持ち悪い感じ」


「バトルフィールドの効果だ。人が近づかなくなる」


「こういう感じになるのね。納得だわ」


 空き地で化生モンスターと戦っているのは五人。相手はでかい蛇だな。戦いの邪魔にならない場所に移動して、ペットボトルのお茶を飲みながら観戦。


 鈴大蛇ベルアナコンダ 九等呪位 人食い大蛇が長い年月をかけ化生モンスター化したもの。鈴の音に似た音で幻覚を見せるといわれている。


 まあ、ザコだな。注意するのは幻覚くらいだろう。でも、九等呪位だしなぁ。


「可愛くないわ! 醜い化生モンスターは滅殺よ! ねぇ~、どらちゃ~ん」


 そのどらちゃん、瑞葵に体をスリスリとして同意の意志を見せている。お前の同族だぞ? それでいいのか?


 五人組は男三人に女二人。十代半ばから二十代前半くらいの集まりだ。リーダーらしき男は二十代前半の顔長の優男で平安時代の狩衣姿。まさに陰陽師って感じだ。動き難くそうだが。


 陰陽師っぽいってことは田村と同じ土屋陰陽会って組織の奴らか?


 ホルダー3337

 木村巧きむらたくみ Lv29


 レベル的に田村より少し強いくらいか? 俺のプチ鑑定だとホルダーの適合率が見えないのが残念だ。プチが取れれば見えるようになるか? ほかの情報より、適合率って正直一番大事な情報だからな。


 ほかのホルダーはレベル10台の者ばかり。瑞葵の相手にはちょうどいい相手ばかりだ。このリーダーの木村以外は力押しで勝てそうだ。


 それにしても長い。いつまで戦っているんだ? たかだか九等呪位だぞ?


 全員が田村が使っていた札と錫杖のような武器を使い化生モンスターと戦っているが、いまいち攻撃力に欠ける。


 そのうち三人が何もない所に攻撃を繰り出し始める。どうやら、幻覚にやられているようだな。実質二人での戦いになった。


 だとしても九等呪位に苦戦って、どーなのよ?


「ねえ、これが普通のホルダーの戦いなのかしら?」


「どうなんだろうな。ほかのホルダーの戦いを見たのは俺も二回目だからな。わからん」


「恢斗に比べて、洗練されてないわ。それに余裕もなさそうね。あれでどのくらいのレベルなの?」


 化生モンスターの呪位と五人のレベルとランクを教える。


「恢斗の倍であの程度なの……」


「レベルより適合率がものをいうからな。あのリーダー以外なら瑞葵でも力技で勝てると思うぞ」


「私はレベル2よ?」


「それでもだ。基礎ステは少し劣るが、装備しているものが違う」


 装備のおかげでBP、TP、INT、AGIが爆上げされている。相手も瑞葵と同じ性能の装備を持っていれば違うが、それはこの戦いを見ていてわかるがあり得ない。


「高いAGIで逃げながら、高いINTでのダークバレットで完勝だな」


「それは美しくないわ」


「蝶のように舞い、蜂のように刺す。これ以上ない佳麗な戦術で勝利だと思うが?」


「詭弁ではなくて?」


 勝てば官軍。問題ない。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る