30.協力者
神薙先輩は前のめり気味になり、早く次言えよって目で睨んでくる。きつめの目美人に睨まれると、背筋がゾクリとする。威圧スキルでも持ってるのかよ。俺はそういう趣味はない。たんに怖ぇよ。
「なれる、なれないでいったらなれる」
「意外と簡単に言いますのね」
そりゃそうだ、神薙先輩がホルダーになれる素質があるのは確定なのだから。そのホルダーになれる未登録のホルダーも俺は所持している。
「そのホルダーってなんですの?」
「非日常の世界で
「正義のヒーローと悪の秘密結社とモンスターの三つ巴ってことですわね」
妙に正義のヒーローにこだわるな。この人。正義のヒーローに憧れがあるのか? 意外な一面だな。
「なりたいか?」
「なりたいわ」
一切の躊躇なく答えたな。
「ただし、条件がある」
「条件? それは素質という意味? それとも、私の体が狙い……」
体なんか狙って狙ってねーよ! 今のは冗談!? 冗談なのか? わからん。この人少し天然入ってるっぽいからな……。
冗談はさておき、そう条件だ。俺が未登録のホルダーを渡せば、ホルダーにはなれる。だが、ただで渡すでは俺にメリットがない。
「素質はあるから問題ない。あなたの体にも興味は……な、ない。俺が神薙先輩に出す条件は……俺の協力者になってほしい」
「一瞬、間があったのが気になるところですけど、仲間じゃなくて協力者?」
そう、協力者だ。まさかここまでの優良物件を見つけるとは思っていなかった。神薙先輩はただの仲間で収まってもらうわけにはいかない。協力者、いや是非ともパートナーとなってもらいたい。
「今はソロでやっているが限界を感じるし、今後組織から圧力がかかると思っている。だが、国や民間の組織は正直信用できない。なら、既存の組織の圧力を跳ね返せる新しい組織を作ればいいと考えた」
「それが私とどういう関係があるのかしら?」
不審者を見るかの如く睨まれる。美人なだけに怖さが割り増しだな。まさに女王の威圧。
「神薙先輩の家にバックについてもらいたい」
「私ではなく、私の家……?」
「神薙先輩の家は古くからの名家で政財界にも強い影響力を持っていると聞いている。もしかしたら、神薙先輩のお父さんはこのことを知っているのでは?」
「……あり得るわね」
政財界に強い影響力を持っているということは、裏の世界にも影響力を持っているということだ。綺麗事だけで強い影響力を持てる世界だとは思えない。
仮にホルダーに関して何も知らないとしても、政治家への圧力はかけられる。政治家どものパトロンだからな。
「それでどうするつもりかしら?」
「これ以上は協力者になったら話す」
「そう、断ったらどうするつもり? この場で私を消すつもりかしら?」
平静の表情を装っているが、声が強張り恐怖の色を隠しきれていない。
「どうもしない。二度と接触することもない。そっちは二度と心躍る、命を懸けたゲームに参加できなくなるだけだ」
「やるわ」
あれ? 即決!?
悩むなら考える時間を与えるつもりだったのだけど……。
「いいんだな? 一度ホルダーになると簡単には抜け出せないと思うぞ?」
ホルダー同士だとすぐにわかってしまう。
「えぇ。覚悟のうえよ」
どんな覚悟をしたのかは彼女しか知らないことだが、まあいい。ホルダーから未登録のホルダーを六つ出す。
「好きなのを選んでくれ」
神薙先輩が選んだのは赤のベルト付きの革製のシザーバッグ。
「どうすれば……!?」
どうやら登録が始まったようだな。
少しの時間が経ち、神薙先輩は虚空を見つめている。おそらく、登録が終わりステータスが現れていつ頃だろう。
「ホルダーの後の数字ってなにかしら?」
「ホルダーランクだな。いくつだ?」
「6453ですわ」
俺よりランクが二千も下で始まった。6453かぁ。ということは、ホルダーは六千人以上いるってことか。
「あなたはおいくつ?」
「そういえば名乗っていなかったな。
「結構離れているわね。それだけ経験の差があるのかしら? いいわ、あなたのこと恢斗て呼ぶことにするわ。私のことは瑞葵と呼んでよくてよ」
「了解だ。それと言っとくが、俺がホルダーになったのはつい最近だ。ホルダーになった時点でランクは四千台だった」
瑞葵は納得いってないような顔をしている。この二千の差はなんだ? 考えられるのは適合率くらいだな。適合率がいい分アドバンテージがあったのかもしれない。
そう考えると、瑞葵は適合率178%でランクが六千台だから、ホルダーは一万人くらいはいそうだ。意外とホルダーって多いのかもしれないな
「詳しい話は後でしよう。次の講義の時間がせまっている」
「そうね。今日は15時以降は講義がないから連絡を頂戴」
そういってスマホを出してきたので、お互いに登録を交わす。
「基本、会うのは学外にしてほしい」
「あら、私と校内で会うのはお嫌なのかしら?
意外とユーモアあふれる人のようだ。
「瑞葵と一緒にいると目立つ以上に
「みんな良い人たちですわよ?」
取り巻き連中にホルダーの適合者はいなかった。相当に優秀な人材なら別だが、一般ピーポーには興味がないし、邪魔でしかない。
あえて何も言わず、歩きながら手を振って別れた。
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