18.ホルダーの実力

『YOU WIN』


『ホルダーランクが上がりました』


『ホルダーにアイテムを送りました』


『470000ポイントが加算されます』


 ステータスを確認しようとしたら俺を光が包む。気づけばファミレスに戻っていた。


「う、嘘だろう……ランクが四百以上下がってやがる。一年分の成果がパァ……」


 ふふっ……坊やだからさ。舐め切ったお前が悪い。自業自得だな。


 しかし、放心状態とはこういうことをいうんだな。死んだ魚のような目をして、酸素を求めるかのように口をパクパクさせている柿崎が目の前にいる。


 スマホで時間を調べると言っていたとおり、さっきからまったく時間が経っていない。


 しかし、470,000ポイントかぁ……。四十七万円だぜ? 美味しすぎる。デザートも付けちゃおうかな。


 イチゴのパフェを追加注文して、ドリンクバーを二往復したところで柿崎が復活した。


「お前アウトサイダーのホルダーだろう? 俺は国のホルダー機関SHAA(secret holder administration agency)、通称シャアズに所属している。上からお前と接触、手合わせしてして、本物なら一度連れて来いと言われている」


 三倍速い赤い彗星か!?


 しかし、国かぁ、面倒だな。正直、日本の政府、政治家は虫唾が走るほど嫌いだ。


「強制か?」


「強制はしない。だが、これからお前はほかの組織からも目を付けられる。善悪関係なくな」


 善悪ねぇ。闇組織なんてのもあるのか? だから、国の首輪を着けろってか?


「今は断る」


「今は……か?」


 そう、今はだ。


「自分を売り込むなら高く買ってくれる所を選ぶ。当たり前のことだろう?」


 最初に国が出張ってくるということは、それなりの数の組織があるのだろう。ホルダーが何人いるのかは知らないが、最低でも4252人はいるはずだ。俺の最初のランクがその数字だった。


「いいだろう。こっちも無理やり連れて来いとは言われていない。どちらかといえば友好的な関係を望んでいる」


 意外とあっさり引いたな。


「正直、人手が足りなくて困ていてな、アウトサイダーでも頼りになるなら仕事を回したい。いい金になるぞ」


 なるほど、そういうことか。まあ、そういうことならお試しでやってみるものいいかもな。


 柿崎とメールのアドレスを交換した。


「こいつも渡しておく」


 シャアズの本部直送の電話番号らしい。


 そう言って席を立ち去っていった。


 何気に自分のドリンクバーのレシートを置いていきやがった!?


 それが儲けているホルダーの先輩のやることか!


 信用できない。話半分ということにしておこう。


 ランクが221アップした。柿崎は400以上下がったと言っていた。ランクは下がるのは簡単だけど、上がるのは大変なんだな。


 ランクが上がるとショップの品揃えが良くなるといってたな。確認するとショップの中にスーパーマーケットという欄が増えている。中身も日用生活品や食糧品などのラインナップだ……不思議アイテムが増えるんじゃないのかよ! 助かるけど……。


 ランクバトルで得たアイテムは中級BPポーションと鋼の大剣。大剣は攻撃力50のこれといった能力なし。アンクーシャやプチBP回復を持つ俺にはこれらのアイテムはありがたみがない。正直、しょぼいとさえ感じる。


 それにしても柿崎は弱かった。レベルが五倍以上あるのに、加速なしでも勝てた。装備はいい品そうで戦い慣れもしていたが、加速を使ったら瞬殺だったのではないだろうか?


 おそらくだが、柿崎では単独で七等呪位に勝てそうにはない。隠し玉の一つや二つは持っているだろうが、あれが本当の実力だとしたら八等呪位でなんとかって実力だ。


 ランクだって1700くらい上位だった。それなのにあの体たらく。中間層のホルダーってあの程度なのか? 


 それと国が管理するホルダーの組織と民間の組織があると言っていた。周知の事実ってことは……ないな。表には出ない、あるいは出せない知られざる事実なのかもしれない。


 組織がいくつかあるということは、それすなわち何かしらの利益があるってことだ。金にならないことを企業や裏の人間がするはずがない。


 考えられるのは祓い屋みたいなことをしているなどかな。化生モンスターが人間の生気を吸っているってことだから、下手をすると死人が出ているかもしれない。


 俺は無視しているけど、十等呪位や九等呪位は結構頻繁に遭遇する。しかし、それが金儲けに繋がるようには思えない。どちらかというと、奉仕活動に近いような気がする。


 二つ目は、ショップで買えるアイテムやドロップしたアイテム。


 初級ポーションはBPを回復するだけではなく、ある程度の怪我も治すことができる。ポーションのランクが上がれば大怪我どころか、欠損まで回復させることができるかもしれない。


 ゲームの定番なら死者蘇生ができるアイテムだってありうる。そんな、この世界の医療技術を遥かに超えているアイテムが、狙いと考えるほうが当りのような気がする。


 俺の持つアンクーシャなんか切り裂かれた腹を元どおりに治すくらいだし、BPさえあれば何度でも使用可能。医療関係者からすれば、喉から手が出るほど欲しがるアイテムだろう。正直ヤバい性能だと、俺も思っている。


 それとあと、わけのわからない錬金アイテムと思われるドロップアイテムの数々。何か使い道が確立していると考えれば、その素材を集める必要がある。


 そんな素材の中で唯一使用している魁猿カイエンの毛皮は、頭と手足の部分を切って部屋に敷いている。普通のハサミではまったく切れず、霊子ナイフだと切れすぎて四苦八苦しながら加工したのはいい思い出だ。


 それ以外はホルダーに死蔵されているけどな。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る