16.接触

風速はやかぜ 恢斗かいとで合っているか?」


 何者だこいつ? どこかで会ったことあったか? と疑問に思いながら男の顔を見る。知らないな。


「ホルダーという言葉に聞き覚えは?」


 肩をすくめて見せる。


「そうか。非協力的」


 男は手帳に何か書いた後、


「リクエスト、ホルダーランクバトル」


『ホルダー2542よりランク戦の要請がありました。受けますか?』


 急に声が聞こえたので、一瞬ビクッとしてしまった。ぬかった。誤魔化せるか? 男はニヤリとしたところを見るとバレたな。俺の馬鹿野郎!


 仕方がない……だがしかし断る!


「おいおい、マジかよ!?」


 マジだよ! 知らないおじちゃんと喋っちゃ駄目って習わなかったのか?


「お前、わかって断ったのか?」


「俺になんのメリットもない」


「マジか……本当に何も知らないトーシローかよ……」


 素人で悪かったな。


 男を鑑定してみる。


 ホルダー2542

 柿崎かきざき 将樹しょうきLv48


 レベル高けぇ~。俺の五倍以上かよ。しかし、情報が少ない。適合率もステータスもわからない。


「はぁ~、知らないようだから教えてやる。格下にとってランクバトルにデメリットはない。格上に勝つとランクが上がるし勝ち負け関係なく、ランク差を踏まえた試合内容でアイテムとポイントがもらえるんだよ」


「じゃあ、格上は?」


「負ければランクが下がる。勝っても負けても参加賞程度のアイテムとポイントしかもらえない」


 意外とおしゃべりな奴で質問するといろいろと教えてくれた。


 ランクバトルは仮想空間で戦うのでどこにいても問題がない。仮想空間での時間はこちらの世界では数秒。仮想空間での戦いはどちらかが死ぬまで行われ、痛みを感じ怪我もするがこちらに戻れば何事もなかったように普通に戻る。


 ランク戦は一日に二回挑戦できるが、同一人物には連続で挑戦できない。十日ほどリキャストタイムが必要らしい。


 挑戦はさっきのように断ることも可能で二回まで断れる。が、三回目は必ず受けさせられる仕組み。格上から格下に挑戦するのはメリットがないので、まずないとのこと。


 ランクが上がるとショップに並ぶ品揃えが良くなるそうだ。


「いいか。受けてやるから俺にバトルを挑め」


 しょうがないな。正直、乗り気ではない。この柿崎という男はどこかの組織の人間だろう。俺の実力を測りに来たと考えるべきだ。


 加速は絶対に見せたくない。アンクーシャのような特殊アイテムから出た武器防具も見せたくない。


 加速とアンクーシャは封印でどこまで戦えるか試してみるか。でも、このレベル差じゃなぁ~。これぞ、無理ゲーじゃね?


「リクエスト、ホルダーランクバトル」


『ホルダー2542がランク戦の要請を受けました。仮想バトルモードに移行します』


 何もない白い地面と青い空だけの広い空間。どこまで広いかは不明。


 柿崎という男いつの間にか鎧や兜、それに剣と盾を装備して俺の前にいる。


「お前、装備はどうした?」


「そんな格好で町を出歩いたら、お巡りさんに職質されるだろう? 普通」


「マジか……そこからかよ」


 バトルに入る前に柿崎から、ステータスについて教授された。


 ステータスの下のほうにconfigurationというのがあってその中にencounterというのがある。encounterは化生モンスターとエンカウントした時にどういう状態で戦うかを決めておける設定。


 そうそう、化生モンスターのことはいろいろと呼び名はあるようだが、一般的にモンスターって言うらしい。合っていたようだ。どうでもいいけどな。



 それはさておき、そこで設定しておけば武器防具を装備した状態にしたり、最初から能力を発動した状態で戦うこともできる。


 そして一番大事なのがバトルフィールドの展開というのがあり、自分を中心に半径300mにバトルフィールドが展開され人が近寄らなくなるそうだ。


 知らんがな! 俺は説明書を読まないでゲームをする派なんだよ!


 encounterにはそのほかにもステータスの色を変えたり《言語》を変えたりといろいろできるらしい。まんま設定だな。


 ん? 言語を変える? まあ、今はいいか……。


「時間をやるから、ちゃんと設定しろ」


「必要ない。後でやる。今装備しても感覚が変わって闘い難くなるだけだ」


「お前がそれでいいなら、始めよう」


 水流槍を左手に霊子ナイフを右手にを出す。何度か化生モンスターと戦って導き出した俺のバトルスタイル。


 じゃあ、始めようか。





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