7.強敵

 心は決まった。


 ホルダーから霊子ナイフを取り出し骸骨スケルトンに向き直る.


 骸骨スケルトンも動きを止めて俺を見据える。


 肌をヒリヒリと刺す感じ、間違いなく格上。強者の風格が滲み出ている。


 といっても、俺は今回で化け物と戦うのは二回目だから格下がいるのかも知らないけど、間違いなく白猿とは比べものにならないほど強いと思われる。


 鎧を着こみ、ヒーターシールドとサーベルを構えた骸骨スケルトンの姿に正直尻込み。


 なんでこんなことになっているんだろうなぁ……。もっと楽に経験値稼ぎさせろよ。


 なんて並列思考で考えながら骸骨スケルトンの隙を窺う。


 不意に世界が動き出す。加速が切れた……。


 そんな俺の隙を骸骨スケルトンが見逃すわけもなく、鋭い斬撃が襲ってくる。加速を再度使用しなんとか躱し続ける。一瞬でも気を抜けば斬られそうだ。


 くっ、盾が厄介だ。盾が邪魔で俺の霊子ナイフが骸骨スケルトンに届かない。それに、俺の持つナイフとサーベルではリーチの差がありすぎる。


 懐に入るにも盾に邪魔され、その外から攻撃するにもナイフじゃ届かない。


 そもそも、戦闘でのナイフの使い方なんて、特殊部隊のじゃないんだから知るわけない。


 そんな俺の苦悩をよそに骸骨スケルトンはサーベルを振るってくる。勢いの乗ったサーベルの攻撃をナイフで受けるなんて、到底無理。受けるどころか、避けることで精一杯で反撃もままならない。


 ナイフとサーベルのリーチの差が、戦力の決定的差ということをまざまざと教えられる。


 骸骨スケルトンが急に止まり剣を頭上に掲げる。


 嫌な予感……。俺の全身がゾワリとしこれは絶対に危険、是が非でも躱せと脳内でアラームが鳴り響く。


 骸骨スケルトンが俺に向け剣を振り下ろすと同時に横っ飛び。俺の横を何かが通りすぎる。


 俺が元いた場所の地面が5mほど一文字に抉られている。


 マジかよ!? 飛ぶ斬撃かよ!


 骸骨スケルトンがまた剣を掲げ構える。連発できるんかい!


 二度、無様に転がりながら躱したが、三度目を躱しきれずでもろに斬撃を受けてしまった。


 い、痛い……痛くない? あれ?


 それと、なぜか骸骨スケルトンの動きが止まっている。


 ステータスを確認するとBPが200も減っている。B……バリアってことか!? これがゼロになったらどうなるんだ? 考えるだけでも恐ろしい。あんなのを生身で受けたら真っ二つ、即死だな。


 動かない骸骨スケルトンから逃げるように移動しながら、ショップからポーションを五本買う。ホルダーに送られたようで、取り出すと薄赤色の液体が入った一口サイズの小瓶だ。


 飲めばBPが回復するのか? えぇーい、ままよ。一気にポーションを飲む。BPが100回復した。味は薄いイチゴ味だ。意外と美味い。


 じゃなくて、すぐにもう一本飲み干す。もう一本をシザーケース側に入れようと取り出したところで、骸骨スケルトンが動き出した。焦ったせいでポーションを落としてしまう。チッ。


 切れた加速をもう一度使用し逃げようとするが、攻撃を初めて受けたことで動揺しているのか足が震えて思うように動けない。動け俺!


 すぐに骸骨スケルトンに追いつかれるが、飛ぶ斬撃を使ってこない。今の俺にはそれを使うまでもないと判断されたか……。


 口惜しいが、そのとおりだ。畜生、ここまでか……。


 パリンと音がする。


 急に骸骨スケルトンが苦しみ始め、足元からシューシューと白い煙が上がっている。


 な、何が起きた!?


 何か起きたのか知らないがこれはチャンス!


 なんとか心に喝を入れ、体を動かし骸骨スケルトンの持つヒーターシールドを蹴りつけると、簡単に転ばすことができた。


 あ、あれ、軽い? 骨だけだからか? 君、骨密度に問題あるんじゃない? 健康診断受けてる?


 軽口を叩けるくらいには心が回復した。以外と俺って図太いな。なんて並列思考で考えている俺がいる。


 何か起きているのかわからないが、ここを逃せばまた俺が不利になる。意を決し転がり回る骸骨スケルトンに近づく。演技じゃないよな? ないよね?


 転がりのたうち回る骸骨スケルトンの首を霊子ナイフで斬りつけるが、頭と胴に分かれたのまだ動いている。致命傷にならないのかよ!? 頭か? 体か? 本体はどっちだ?


 奴の赤々と光る眼と俺の目が合う。恐怖から体が震える。


 こいつは俺に教訓を与えてくれた。油断するな気を抜けばそこですべてが終わるゲームだと。


 お前は強かったよ。


 赤く光る右目に霊子ナイフを突き刺す。


 骸骨なのだからスカスカのはずなのに、俺の手には何とも言い難い嫌な感触が伝わってくる。霊子ナイフを刺せるだけ奥に差し込み。グリグリと中身をかき回すように動かす。 


 爛爛と赤く光っていた左目の光が消えた。




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