2.ホルダー

 その日、いつもと違う時間にいつもと違う道を通り家路についていた。


 ふと、道端に黒いシザーケースが落ちているのを発見。美容師さんなどが腰に着けているウエストベルトタイプのものだ。ハサミ専用というわけではなく、小物も入るタイプ。革製でなかなか格好いい。


 道端に落ちているだけに少し汚れているし中身は空。落とし物か捨てられた物か判断に苦しむ。交番に届けてみるか。


「うーん。これは拾得物というより、不法投棄じゃないかな?」


「じゃあ、もらっていいですか?」


「そうだねぇ。いいとは私の口からは言えないから、見なかったことにするよ」


 このお巡りさんぶっちゃけたな。


 近くのホームセンターで革製品のメンテクリームを購入。三千円もすることに驚きを隠せない。痛い出費となってしまった。


 住んでいるアパートに戻り、ウエスを使って汚れを拭いて、メンテクリームを塗って磨く。


 すげぇ、ピカピカになった。見違えたな。新品といっても過言じゃない。自分の腰に着けてどんな感じになるか鏡の前で確認してみる。


 突如、脳内に無機質な女性の声が流れ始める。


『解析……ホルダー適合率240%』


『ホルダー申請……承認』


『ホルダー最適合能力申請……承認。賦与されました』


『ホルダーランク申請……ホルダー4252に該当。承認』


『Good Luck Holder4252』


 一瞬、眩暈がしたかと思ったら、目の前にステータスが表示されている。


「ゲームか!?」


 つい、叫んでしまった俺は間違っていないと思う。


 これは夢か? 夢であっても覚めないでくれ!


 俺がゲームのキャラを操作するのではなく、おそらく俺自身がゲームのキャラになったのだ。


 これは俺に与えられた最高のゲームに違いない。


 そう、俺が主人公!


 ゲーマー魂が燃え上がるぜ!


 取り敢えず、飯食って風呂入って寝よ。




~~~~~~~~~~~~~~~

 ステータス情報


 風速 恢斗 Lv0

 ホルダー4252

 ホルダー適合率240%


 BP 290(50+240)

 TP 290(50+240)

 STR 25(1+24)

 VIT 25(1+24)

 INT 25(1+24)

 AGI 25(1+24)

 DEX 25(1+24)

 LUK 25(1+24)


 並列思考 Lv1

 加速 Lv1

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