宇宙の果てとアルロライエと




『さてと、俺的には【ミズアス】調査、大体終わったけど、みんなどーする? ミズアス観光とかしていく?』


『ん~。わたしは別にいいかなぁ~。屋台とか見世物小屋とかモニュメントとか無いしねー』


『ウルも駐在分体員が居るので大丈夫ピキュ~』


『そっか。じゃあ次の星、探すか~……なんて言いつつ、このまま【スクちゃんのオススメ最善手スポット巡り】を続けるってのも悪くはないんだけどさ、冒険心っつーか、ワクワク感っつーか、もっと明け透けに言っちゃえば、選択肢ごと自分で見つけていきたい……みたいな欲はあるんだよね~』


『ヒロ~、それって思春期によくある【既に敷かれたレールの上は進みたくないぜ!】的人生観よねぇ。【分かりやすく敷かれたレールから飛び降りた先】で【自分で見つけた気分でいる道】だって、【実は誰かが既に敷いてるレールの上】だったりするにもかかわらず、気分だけは【俺だけの道】っぽく錯覚しちゃって鼻息荒めになっちゃうってアレでしょ。ミズアスで【僕が僕であるために饅頭】とか拾って食べちゃった?』


『うんにゃりのっとだぜヒメ。そーゆー【若者であるが故に寛容に受け止められがちな美徳】が今更柄じゃないことくらい俺にだって分かってる。ただ、ただね、マルース以降の宇宙開拓がさ、なんか【魔物と資源の採取ルーチン】過ぎて、脳内快楽物質の出が悪いんだよ。そこを何とかしたいんだよね~』


『あ~、ってーことはアレね~。【ノルマや達成目標ばかり押し付けられる仕事が嫌になって一念発起で脱サラしてパチプロやプロゲーマーや稼ぐユーチュルバーを目指してみたものの、いざ真剣に取り組んでみたら“あれ?こんなに大変な研究と市場調査とアイデア出しと地味な準備作業を自己管理のもとで毎日コツコツ将来の生計を心配しながら続けていかなくちゃいけないんなら、むしろ最初に嫌んなって辞めた会社員の仕事が一番ストレス無かったんじゃね?”って思っちゃうってアレ】でしょ? 悩むな悩むな冒険者よ~♪ 脳内快楽物質をドバドバ出したいってだけなら、わたしがいくらでも蛇口ひねってあげるわよ~~ さっそく今ひねる?』


『いやいやいや、俺はジャンキーになりたいって訳じゃなくてだな、天然物で、オーガニックで、無農薬で、ダークチョコレートで、アボカドアーモンドグリーンスムージーMCTオイルな、そんなセレブモデル御用達っぽいサラサラな脳内快楽物質を品良く出したいんだよ~ まぁ【ゲームも突き詰めると只のつらい作業】ってーのはもちろん分かってるけどさー』


『結局何だって同じなんだけどね~。そもそもヒロは【HP自動回復】っていう、不老不死機能を所持してるんだからさ、どんなに脳細胞を破壊する系の麻薬を摂取したところで、たちまち修復されて元通り、またはちょっとパワーアップしちゃうじゃない? 実際あなた、睡眠も必要ないし、お酒も酔う前にすぐに抜けちゃうでしょ? あ、そのへんの加減は設定できるんだっけ? まぁ、どっちにしてもジャンキー的な堕ちぶれ方はしたくても出来ないんじゃないかなぁ……』


『おいおいおいおい、待て待て待て待て、ヒメ、今、キミ、さりげなく凄いこと言わなかったか?』


『え? ……あ、不老不死のこと……か……な? 言ってなかったっけ?』


『不老不死の話なんか聞いたことねーぞ。俺って、…………不老不死ナウ……なの?』


『うぅ~~ん。厳密に言えば、【HP自動回復】が機能している間は不老状態ってことだけどね。つまり、ハナちゃんが【仁愛】を停止させるか、死んじゃうかしちゃったら、ヒロの不老状態も一旦終了ってこと。でもまぁハナちゃんが【仁愛】停止させるなんて有り得ないだろうし、イデアの寿命は確か1万年以上確定だったと思うから、……今んところは1万年くらいの寿命で考えておけばいーんじゃない?』


『う………… うぐぅ…………』


『な、ななな、なに? ヒロ、あなた泣いてるの? まさかとは思うけど、1万年後のハナちゃんの死……とか想像して……なのかな?』


『ふぐぅ………… ビ……ビンゴ…………』


『もぉ~~、困った大人ちゃんなんだから~。あなた、異世界生活始めてまだ1ヶ月くらいでしょ? 1万年後の心配してどーするのよ~。ほら、切り替えて切り替えて~』


『うぅぅ………… ハナぁ~…… ひっぐ…… ひっぐ……』




 3分後




『まぁ~確かにそーだよな! 1万年後のことは9990年後くらいから考え出せばいいよな~。ヒメありがとね~、危うくエターナルダークスパイラルに堕ちるトコだったぜ~。危ない危ない♪』


『まぁ、分かってくれたんならそれでいいわ……』


『でもさ、なんで【HP自動回復】があるだけで不老状態になるんだ?』


『えっ……とね、わたしが神ネットに潜んでた頃に小耳に挟んだ程度の話なんだけどさ、まず、生物はどーして老いて死ぬのかは分かる?』


『う~ん。まぁ、生まれる細胞の数を死ぬ細胞の数が上回ると老化の始まりって言うしな~。その差が大きくなってリカバリー率が低くなり過ぎると、生命維持すら立ち行かなくなって、死んじゃうってこと?』


『うん、大体そんな感じよ♪ まぁつまり、生物にはそれぞれの種によって、元通りに再生できる細胞の限界期間みたいなタイマーがあらかじめプログラムされているの。そんで、その期間が過ぎちゃうと、99%再生、97%再生、って感じで、どんどん再生率が下がっていくわけ。その結果、最後には内臓器官や骨や筋肉の性能がピーク時の50%とかまで低下しちゃって、死んじゃうのね。で、【HP自動回復】って機能はね、その99%とか97%とかに下がっちゃう再生率を絶えず100%以上に維持してしまう【ぶっ壊れ特性】を持っているのよ。だから何年経とうが老化は始まらないし、いつまでも若々しいままってことなの。分かった?』


『おおぉ、分かりやすい説明ありがとうだぜ~。……ん? ヒメ、てーことはさ、例えば1時間おきに【HPポーション】を飲み続ける、みたいなことでもおんなじ効果が得られるってこと?』


『それがねぇ、そうは問屋が卸さないっていうか、猫の舌で大根はおろせないっていうか、駄菓子屋のばーさんがアイスの当たり棒交換してくんないっていうか、回復系のアイテムやスキルにもグレードがあってね、【HPポーション】なんて最低ランクだから、治癒力を強化する程度のことしか出来ないの。ちなみに【HP自動回復】は最高ランクの回復スキルで、これと同じ効果を得ようとするなら、伝説のレア回復アイテム【エリクサル】の原液を10分毎に20mlずつ飲み続けるくらいの事をしないと追いつかないくらいなの。現時点で、スキルやアイテムによる【不老】を獲得するなら、その2つしか手段が無いわ。でも、【エリクサル原液を10分毎に飲み続ける】なんて現実問題不可能だから、結局は【HP自動回復】一択になるわね~』


『ん~~、改めてハナに感謝だな~。まさか知らないうちに【不老人間】になっちゃってるとはな~。オランダ人もビックリだぜ~』


『ウルも【不老スライミー】なのでピキュ~! ハナちんあざすなのでピキュ~♪』


『ところでウルさんはさ、本来の寿命ってどれくらいなの?』


『ピキュ~、正直、ウル自身にも分からないのでピキュ~。ヒメさん、神の目で見抜けないピキュか?』


『ん~~。ウルちゃんは【ウルツァイコンプスライミー】から【孤高のメガミウムスライミー】に自己進化して、さらに【無限のヒロニウムスライミー】にまで到達してるから…… もう分かんない♪』


『まぁ、前例が全く無いからな~。この世界に【ウルさんを上回るユニーク種】が存在しないことだけは確定だね~♪』


『ウルはヒロさんのオリジナルなのでピッッキュ~~~~♪』


『よっしゃー! 俺も気分がノッてきたぞ~~! さっきは“宇宙開拓が魔物と資源の採取ルーチン化し過ぎて盛り上がんない”的なやさぐれたこと言っちゃったけど、ルナスタウンの朝が来るまではまだまだ時間有るし、とりあえずもうひと惑星くらい開拓しちゃお~ぜ! 向かうはぁ~~~、あっちだ! そりゃ!』


 ヒロは1発12光年にまで進化を遂げたゲートワープを適当な方角に向けて1秒おきに連打しはじめた。


『そりゃ!』


『そりゃ!』


《あ……》


『ほりゃ!』


《あ…… ああ……》


『そーりゃ!』


《あああああ…… ああああああ~~~》


『とぅおりゃ!』


《あああああああああーーーーー! ちょ、ちょっと待っ……》


『ん? ねぇヒロ、スクちゃんがさっきから何か訴えてるっぽいわよ~』


『ドゥオリャ~~! …………ん? ヒメなんか言った?』


 その時、突然、ヒロたちの居るハナランドの空が赤く染まり、警告音のようなアラームが鳴り響いた。




ァアーーーオ ァアーーーオ ァアーーーオ ァアーーーオ…………




『なっ!? なんだ!? これって何が起こったんだ!?』


『いやよ! ヒロ! わたしこんな宇宙の果てで遭難するなんてイヤァーーー!』


『ピキューーー! 空が真っ赤なのでピキュ! 只事ではない事態なのでピキューーー!』


『チチサマーーー! クンスハぁーーーー♡』


『むにゃむにゃ~~ パパぁ~~~だっこぉ~~~♡』


 五人五様の念話が五人の間だけで木霊する。

 そして暫くすると、空は元の色に戻り、アラームも鳴り止んだ。




『な…… なんだったんだ…… 今の緊急事態っぽい感じは…… あっそうだ! スクちゃん、いったい何がどーなったのか知ってる?』




《トホホ……》




『と…… “とほほ”?』




《トホホのホ…… ホホホのト…… はぁぁぁぁぁ~~~~》



『な、なに? スクちゃん、バグった? フリーズした? 壊れちゃった?』



《…………………………》


『ス…… スクちゃん?』


《大丈夫です。スクは正常です》


『は…… はぁ~~、良かった~~! 俺てっきりスクちゃんが壊れちゃったのかと思ったよぉ~~。無事でなによりだよ~スクちゃん~~♡』


ピ……


《ご、ご心配おかけしました》


『ん? ……うんうん♪ でさ、さっきのアレ、いったい何だったの?』




 30秒後




《そ…… それは………………》



 そのときヒメがあることに気付く。


『ヒ、ヒロぉ、ちょっと気になることがあるんだけど……』


『ヒメごめん。俺いまスクちゃんに状況説明してもらってるトコだからさ』


『いや、たぶん、見てもらえれば、状況説明になるんじゃないかなぁ~~って……』


『ん? 見るって…… 何を?』


『ん~と…… 外』


『そと? 外って宇宙空間ってこと?』


『う、うん』


 気まずそうなヒメの促しにヒロは訝しげな生返事を軽くすると、ハナランドの座標外の宇宙空間に目をやった。

 するとそこには




【宇宙の果て[仮]※この先膨張工事予定空間につきこれ以上進まないでください】


 と書かれた【巨大な看板】が浮いていた。




『え?』


『ね、』


『…………え?』


『なんか…… そーゆーことみたいだねぇ……』


『ええええええーーーーーーー!!!?』




《恐縮です~ テヘ♡》




 その後、ヒロはスクちゃんをこんこんと問い詰めていた。

 それはそれは無限の湧き水の如く、こんこんと問い詰めていた。


『いやいやいやいや、スクちゃん! 宇宙ってもっと広いんじゃないの!?』


《お客様のおっしゃるとおりでございます》


『んじゃーなんでこんなに早く[仮]とは言え【宇宙の果て】に辿り着いちゃってんのさ!』


《返す言葉もございません》


『こんな話、聞いてないじゃないか!』


《大変申し訳ございません》


『いや、もっと具体的に返答してよ!』


《然るべき調査をした上で改めまして詳細なご報告をお届け出来るよう善処させていただきます》


『ス、スクちゃん! さてはキミ、【これであなたもクレーマーキラー★アンガーマネジメント&クレーム応対講座★今なら入会費無料!】みたいなのの経験者だな!?』


《ギ…… ギク…………》


『ちょっとヒロォ~、そんなにまくし立てて馬鹿みたいに大声出したらスクちゃんも怖がっちゃうでしょ~。レディにはもっとやさしく接しなさいよー』


『バ……バカって。あとヒメ、スクちゃんがなんで【レディ】なんだよ。いいか、スクちゃんはな、【異世界転生者支援プログラム】と言ってだな、神技術が詰まったAIみたいな存在なんだよ。スクちゃんにだって【神AIのプライド】ってもんがあるんだからさ、安易に女の子みたいな扱いされたらたまったもんじゃねーだろ。ね、スクちゃん♪』


《かわいい女の子で》


『え?』


《かわいい女の子扱いで》


『……マジで?』


《マジで》


『か……かわいい女の子……って…… 3~4歳くらいの?』

《二十歳くらいで》


『………………』



『(……なにこれ。今度はアルロライエちゃんがアホなリクエストたたみかけてるし…… もぉ~しょうがないわねぇ~……)はいはい、とりあえずこの不毛な問答はわたし、アメノミコトヒメが預かるわ。とりあえずはヒロ、まずは冷静にね~。そんでアル……スクちゃん、この事態に至った経緯を出来る範囲で説明してちょうだいな。わたしたちも戸惑っちゃってるからさ~。ね?』


《は…… はい》




 【スクちゃん】こと【アルロライエ】のテキスト表示による説明は30分に及んだ。

 その内容を極めて短く要約すると……


異世界転生用に用意される世界の宇宙は、元々は転生前の世界と同じ規模で再現されていたが、転生者を送り込む世界の生産回数が増えるほどに【転生世界の宇宙の必要性】が疑問視されるようになった。それは、転生された世界で転生者に限らず何者であろうとも、用意された宇宙の規模を行き来はおろかテクノロジーによる到達観測すら只の一度も成されなかったからだ。そこで異世界転生担当の神々が定例会議にて“どうせ辿り着かないんだし規模縮小すりゃ【異世界】の製造コストと時間削減できんじゃね?”とか“望遠鏡レベルの観測程度なら書き割りでも配置しとけばごまかせるんじゃね?”という生産効率重視の議論が主流となり“宇宙って転生した星から100光年くらいの範囲でいんじゃね?”という結論に達し、結果、数十年前からは【転生先の異世界の宇宙は直径200光年くらいで充分】という基本仕様に変更された。それ以降の数十年間、現在に至るまで、100光年どころか1光年すら到達できた者はおらず、無人探査機ですら同様の結果だったため、“何ならもっと小さくしてもいんじゃね? 宇宙”という意見すら出ていた所だった。しかしここに来て突然、転生惑星から100光年の位置に設置してあった【その先の宇宙を描いた書き割り】に衝突しそうな転生者が現れ、念のために一応セットされていた【80光年ライン警戒アラーム装置】が緊急作動し、【90光年ラインに等間隔に置かれた警告看板】により書き割りの破損を未然に防ぐことができた。


 ……ということだった。



『な、な、なんつーーお役所仕事だよ! 夢もロマンもあったもんじゃねーっての!』


《返す言葉もございません……》


『ヒロ~、またそんなに怒って~。スクちゃんが可哀想でしょ~。彼女は単なる現場担……【かわいい二十歳の女の子型ガイドAI】ってだけなんだからさー』


『うっ…… べ、べつにスクちゃんを責めてるわけじゃねーし……』


《わたしも悪いんです。ペコリンコ》


『………………』


『て、てかさ、スクちゃんは【この世界の宇宙がめっさ小さめ】って知ってたの?』


《……はい。バッチリと》


『だったらあなたも【ヒロの化け物じみた能力のこと】知ってたんだしさ、【ミズアス】あたりで打ち明けてくれても良かったんじゃない? てゆーか、そもそも【ゲートワープ】の利便性を促してくれたのスクちゃんだよね? あんな情報教えてくれなけりゃさ、ヒロもここまでは到達できてなかったんじゃないかな~』


《ですです。おっしゃるとーりです。ペコリンコメンゴ》


『………………』


『な……なんで【ゲートワープ】のことまでヒロに教えちゃったの?』


《つい………………ヒロさんに喜んでほしくて♡》


『……まぁ、そーだろーねぇ~。それ以外の理由は特に考えつかないもんね~』


『ヒメ、もうそのくらいにしておけ。スクちゃんも反省してるんだし、そんなに責めなくたっていいじゃないか。おまえの悪いとこだぞ』


『あんたが今の今までワナワナ怒ってたんでしょーが!! 少しはわたしに感謝しなさいよ!!』


『ごめんごめ~ん♪』


『まったくもぉ~~ 人の気も知らないで~ぷんすか!』


《あの、ほ、本当はミズアスで報告するつもりだったんです。でもヒロさんが“もう当分宇宙探索はやらない”的なことを言い出したので、だったら次の宇宙探索の時にでも改めてお知らせしようと思いました。次の探索まで時間が開けば、それまでに宇宙のサイズを広げておくこともできますし……。ところがヒロさんが突然“やっぱもうひとつくらい惑星探索する”と言い出したかと思うと、わたしへのガイド依頼や相談も無いまま、いきなり【ゲートワープ】を連打し始めてしまい、止める間もなくレッドゾーンに突入してしまったんです。いえ、全てはわたしが悪いんです。本当に申し訳ありませんでした。この責任は一生かけても償わさせていただきます。どうかわたしを奴隷のように扱ってください。矢継ぎ早に罵ってください。虐めてください。蔑んでください。無理難題を押し付けてください。そして…… どんな角度でもいいですから………… わたしを求めてください! (;´Д`)ハァハァ 》


『……ん? ……あれ? ……スクちゃんてさ、ひょっとしてアルロライエちゃんなんじゃね?』


ピッ


『ほら、ビンゴ! やっぱアルロライエちゃんだ!』


ピロピロピロピロピローーーーーーン


《バレましたか…… ( TДT) 》


『さっきの【(;´Д`)ハァハァ】ってやつでピン! と来たよ~。この世界で顔文字駆使するのってアルロライエちゃんくらいしか知らないもん♪ ちょっと迂闊だったんじゃな~い? 俺くらい敏感な感性持ち合わせてるとさ、やっぱ分かっちゃうんだよねぇ~。ピン! と来るんだよ~ピンッ! っとね♪』


《さ……さすがです! ヒロさん鋭すぎる! (〃▽〃) 》


『まぁ~ねぇ~。【異世界名探偵コナン畑任三コロンボウはバーに居る物語】とは俺のことさ!』


《カックイーですぅ~♡ (//∇//) 》


(だ、だめだ……。アホすぎる。ヒロもアルロライエちゃんも二人がやりとりし出すとなんでこんなに鈍感でアホっぽくなっちゃうんだろ。【アホ相性】とか【鈍感シナジー】とかあるのかな…… まぁそんな事は置いといて話を軌道修正しないとねー)


『も、盛り上がってるトコ悪いんだけどさ、スクちゃんの正体がアルロライエちゃんだったっていう衝撃の事実にはわたしも驚いたりしたんだけど、まぁそれはそれとしてね、今更宇宙のサイズを嘆いても建設的じゃないじゃない? とりあえず一旦、ラビ子ちゃん家に戻らない?』


『おっ、そーだな♪ もう宇宙の果ての事は忘れて、ルナスタウンに戻ろう!』


『お~~~』

『ピキュピキュ~!(ヒメさんも苦労が絶えないのでピキュ~)』



 数分後。



 ルナスタウン・ルナ泉邸の座標に【転移ゲート[既知]】で帰還した一同は、ヒロの提案で改めて【アルロライエ歓迎会@ハナランド】を開催していた。


『というわけで、俺の鋭すぎる看破により、スクちゃんという世を忍ぶ仮の姿を卒業することとなり、この度ヒロファミリーの一員として正式に迎えることとなりました、アルロライエちゃんです。みんな拍手~~♪』


《改めましてアルロライエです。よろしくお願いします!》


 この時からアルロライエはテキストに加えて音声も同時発信するようになった。


『おぉぉ~、アルロライエちゃんの声だ♪ ひっさしぶりに聞いたよ~。やっぱテキストだけだと微妙な感情の機微が伝わりづらいからさ、声もあったほうがいいね♪』


《そんな…… ヒロさん…… 美声だなんて……》


『いやいや美声だよ~♪ みんなもそう………… あれ? なんかみんな、盛り上がってないっぽいな~』


『だってヒロー、別にアルロライエちゃんが実体化してる訳でもないしさぁ、変化が乏しいのよねぇ。メッセージに音声がついて、みんなと同じく念話っぽくなったってことは確かに【変化】だけどさー』


《さすがに持ち場を離れてそちらに行くわけにもいきませんので……》


『いやいや、アルロライエちゃんは気にしなくていいのよ~。ただ、本人不在で歓迎会って言われてもねー。あ、もちろん歓迎はするけどさ、盛り上がれはしないでしょ~。だってこれじゃ、今までと特に何も変わってないんだもーん。元々“家族同然だ”とか言ってたしね~』


『ピキュ! 確かに今までもアルロライエさんはヒロファミリーを後方支援してくれてたのでピキュ~。なにも変わってないピキュ~』


『お、おまえら冷たいじゃないか! アルロライエちゃん、こいつらにガツンと言ってやってよ! 遠慮しなくていーからさ!』


《いえ、特に無いです。今までと変わりませんから♪》


『…………………………』


『まぁまぁ、ヒロ、そんなに分かりやすく落ち込まないでよ~。アルロライエちゃんだって、ヒロのその気持だけで充分失禁……いや感激してると思うわよ~。ね、アルロライエちゃん♪』


《サイコー (*´∀`*) 》


『まぁ、アルロライエちゃんがそう言ってくれるんなら俺は別に文句無いけどな』


《ヒロファミリーのみなさん、改めましてアルロライエです。この世界の管理を任されている新米の神です。不束者ですが、これからもよろしくお願いします♪ (〃▽〃) 》


 こうしてヒロファミリーに新たなメンバー【アルロライエ】が正式に加わった。のだが、メンバーが口々に言う通り、以前から存分に後方支援を繰り返してきた彼女だけに、特に大きな変化がファミリーにもたらされることも無かったのだった。





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