ミズアスへ




 その後、ウルの蹂躙劇を暫く観戦したヒロ達は、次の行動について相談していた。


『ヒロ、こんなに早くマルース攻略が済んじゃったんだから、どんどん宇宙開拓を続けるべきよ~。行けるところまで行っちゃって、ウルちゃんに駐在してもらって、ウルちゃんワープの距離を稼ぎましょうよ~』


『ウルも賛成ピキュ! ヒロさん、宇宙の果てまで連れてってなのでピキュ~♪』


『う~~~ん。そう言うけどさ、いくら俺のスコープが馬鹿げた性能になってきたとは言え【宇宙のサイズ感】ってーのは、そんなレベルでどーにかできるもんじゃないと思うんだよな~。今、【ハナランドワープ】1回で飛べる距離は大体40万キロくらいだろ? これをそこそこ集中して繰り返せば、1秒間に10回くらいは発動できる。つまり、秒速400万キロくらいだ。この時点で既に光の速さの10倍以上で移動できるってことにはなるんだけどね、多分、その程度では全然足りない筈なんだよ。あ、そうだ! スクちゃん、ソルース系外で一番近くにある【生物の居そうな惑星】って、ここからどれくらいの距離なのかな?』


《それは知的生命体という意味ですか?》


『ん~~~。確かに、バクテリアとか微生物だけが居ても趣旨とはズレてるもんな~。でも、知的生命体ってほどイケてなくてもいーからさ、まぁそうだな、【魔物狩り出来るような惑星】ってことで教えてよ♪』


《大体12光年くらいです》


『オッケー! スクちゃんサンキュ~♪ ……ヒメ、ご覧のとおりだ。12光年だぞ? てーことは【意識高い系ハナランドワープ】を乱発しまくっても、ざっくり1年かかるんだぞ? 1年間もただひたすら真っ暗な宇宙空間をワープし続けるなんて、まさに、【退屈】だろ~?』


『……うん退屈。ヒメ、そんなんなら1年間ヒメルームに引きこもる。ヒロ、着いたら呼んで♪』


『ピキュ~! ウルは分体達と入れ替わりながら、狩りや観光や開拓やヒロシティでの生活を満喫するピキュから、心配ご無用なのでピキュ~♪』


『いや、俺がつらいんだっつーの! その1年間は延々と不眠不休で集中モードなんだぞ!? 実は【ハナランドワープ】には時間短縮を妨げる問題がひとつあってだな、ハナランドから実世界に出る時に、いちいち排出座標の安全確認をしなきゃいけないんだよ。特に未知の空間での連続ワープとなると、その確認作業も毎回生じるわけだ。その積み重ねも含めて、俺の精神に及ぶ負荷は、そこそこ人格変わっちゃうくらい酷いものになるはずなんだからな!』


『あ~~、だからヒロは、ハナランドワープの話になると、所要時間ちょっと多めで語ってたのね~』


『そう、空間情報が取得済みの一回きりワープなら、今や0.01秒切るくらいで出来ちゃうもんね~。それを10倍で見積もってるのはそーゆーことなんだよ。だから結論としては、【12光年も先へ進む気なんか全く起きない】ってことだ。悪いがこの件、諦めてくれ』


『え~~~~!? そんなに簡単に諦めちゃうの~~? ヒロ、ガンバだよ~!』


『ピキュピ~! ヒロさんの奇跡の一手、まだまだ出る可能性があるのでピキュ~!』


『…………俺、今、ちゃんと説明したよな?』


『それはヒロがスカスカの頭で考えた暫定的な結論でしょ? もーちょっと捻り出せば、とんでもない突破口が開けるかも知れないじゃん♪』


『ヒロさん捻り出すピキュ! 明日のために捻り出すピキュ! 肘を左脇から離さない心構えで、やや内側を狙い、えぐり込むようにして、捻り出すピキュ! 捻り出すピキュ! 捻り出すピキューーー!!』


『チチサマ、無理に無理を重ねてもがき苦しみながら脳を絞るのです!』


『……………………』


 その時、ヒロのスクリーンに文字が現れた。




《ヒント。亜空間プレミアムプラン♡》




『な、なにぃぃぃいいいーーー!?』


『ほらぁ~ヒロ、突破口が開けたじゃないのよ~♪』


『ピキュピキュ~! スクちゃんさん! ヒントありがとうなのでピキュ~♪』


《いえいえ》


『……なんつーか、…………スクちゃんありがと』


《いえいえ~♡》



『てかさ、【亜空間プレミアムプラン】って何だったっけ?』


『何言ってんのよ~、このハナランドに追加できるオプションのことじゃないの~。今のところはスタンダードプランで十分だなって事で、なんにも追加はしてなかったけどね~』


『あーーー! 思い出した! 【びわゼリー屋】とか【てこね寿司屋】があった、あのリストかぁ~』


『そうそう、凄いオプションほど消費MPも高くなるって、アレよ♪』


『そんなの完全に忘れてたよ~。まさかこんな近くに突破口の隙間があったなんてなぁ……』


『ピキュ! これぞまさに【灯台ごとクラッシュ!】なのでピキュ~♪』


『ウルさん【下暗し】ね。つーか、スクちゃんがヒントとして出すくらいなんだから、その有用性はきっと高いはずだぞ! さっそく見てみるか~♪』


 ヒロは超久しぶりに【亜空間プレミアムプランのオプションメニュー】を表示させてみた。




亜空間プレミアムプランのオプションメニュー

※詳細は項目を念クリック


□システムオプション

■持ち出し設定各種

■時間経過設定各種

■空間サイズ設定各種

■環境設定各種

■他設定各種


□アイテムオプション

■生物

■魔物

■人間

■ラベンダー畑

■びわゼリー屋

■てこね寿司屋

■出雲そば屋

■異世界東京ドイツドッキリ村

■アウトレットモール

■プロ野球チーム

■コンビナート

■温泉

■異世界タワー

■異世界ツリー

■異世界ハダカデバネズミーランド

■異世界ハダカデバネズミーシー

■金山

■カジノ

■異世界悶悶太郎ランド

■異世界学園

■火山

■海

■天変地異

■国家

■キング貧乏神

■キング大富豪神

■永久機関

■宇宙

■各種ゲート

■精霊

■天使

■神




『……思い出したよ。相変わらずふざけたメニューだな~。とは言え、この中にヒントが有るってこと……あ! これじゃねーか? 【各種ゲート】ってやつ!』


『ヒメもそれ気になる~♪』


『ウルは【異世界悶悶太郎ランド】が怪しいと睨んでいるのでピキュ~』


『よし、【各種ゲート】を念クリックだ!』




□各種ゲート

■転移ゲート[既知]

■転移ゲート[既知&未知]

■亜空間ゲート

■異界への門

■新世界への門

■精神世界への門

■空想迷宮への門

■無限螺旋快楽迷宮への門




『おぉぉ、なんだか物騒な気配のやつも混じってるけど、これは迷うこと無く……』


『無限螺旋快楽迷宮ピキュ~♪』


『【転移ゲート[既知&未知]】だな♪ おりゃ!』




□転移ゲート[既知&未知]

■扉型

■門型

■ポール型

■埋設リンク型

■カスタム設定型




『ん? 特に説明も無いままに、形状の選択肢になっちゃったな。……とりあえず、【埋設リンク型】にしてみっか~』


 ヒロは【埋設リンク型】を念クリックしてみた。

 すると


《【埋設リンク型転移ゲート[既知&未知]】をこの空間に設置しますか?》


 という質問が表示された。


『いや、ちょっと待ってスクちゃん、って、あれ? これもスクちゃんでいいのかな?』


《はい。スクちゃんです♡》


『じゃあスクちゃん、まず、【転移ゲート[既知&未知]】について具体的に教えてもらえるかな?』


《了解しました》




■転移ゲート[既知&未知]

亜空間に設置できるオプションアイテムのひとつ。

ゲートを使用すると、任意の座標に瞬間移動できる。

使用者が今までに到達したことのある座標に加え、未到達座標にも転移が可能。既到達座標への転移は一律1回1000MPを消費する。未到達座標に転移する場合は、その距離により消費MPが変化する。また、使用者のレベルやステ値やスキルによっても距離の限界点が変化する。

未知領域に転移する場合は、ゲートを使用する際に、方向と消費MPをイメージする必要がある。



■埋設リンク型ゲート

転移の際に使用する転移ゲートの一種。

使用者の肉体の通過を前提とした扉型や門型と異なり、ゲートをイメージするだけで転移が発動する進化型ゲート。亜空間内であれば、どこに居てもイメージするだけで転移ができる。利便性が高い代わりに消費MP量も多い。ゲート設置時に1000MP。1回の使用でゲート使用基本消費1000MPに加えて埋設リンク型ゲート追加使用で最低1000MPを消費する。




『……設置に1000、行ったことある場所に行くなら1回1000、未知の場所ならMPと能力次第ってことか……。思ってたより消費MPが少ないな……』


『ヒロ、それはあなたがMPに特化したバケモノに成り果ててるからであって、一般人にとっての1000MPってのはね、ヘルペスのバッキンバーキンが何個も買えるくらい凄~い数値なのよっ。そのへん、冷静にね!』


『そっか~。俺、現在値でも毎秒33万MP使えるんだもんな~。1000や2000って言われても逆にピンとこないわ~。よし、まぁいいや、とりあえずこれで行ってみよう♪』


 ヒロは改めて


《【埋設リンク型転移ゲート[既知&未知]】をこの空間に設置しますか?》


 に対して【はい】と念を送った。



テッテレー!


《【埋設リンク型転移ゲート[既知&未知]】が設置されました》



『簡単だな~おい。もう使用できるのか~』


『やったねヒロ! ちょっと1回試しに飛んでみようよ♪』


『おろろんピキュゥウ~~~。ウルは…… ウルは、このゲートの登場により【ウルワープ】が不要となってしまう寂しさをヒシヒシと感じているのでピキュ~。ポケベルさん! ビデオデッキさん! フロッピーさん! パピコンさん! 赤チンさん! 和式トイレさん! ドムドムンさん! グリコアンさん! ウルはキミたちの気持ちが痛いほど分かるのでピキュ~! でもヒロさんのため、そんな思いは心の奥に仕舞い込み、明るく喜ぶのでピキュ~! 顔で笑って心で号泣なのでピキュ~! ヒロさん! 転移ゲート獲得、おめでとうなのでピキュピキュ~!!』


『ダダ漏れしてるよ~ウルさん。いや、【ウルさんワープ】は、【俺以外の人間の仲間達】にとってはこれからも【めっちゃ頼りにされ続けるワープ】なんだからさ、需要は伸び続けると思うよ? たくさんの仲間達から頼りにされてるんだよ、ウルさんは♪』


『ピキ! ピキュ~! 確かにそーだったのでピキュ~~! ポケベルさんたちごめんピキュ! ウルは、ウルは、ウルはまだまだ現役だったのでピキュ~~♪』


『ウルちゃん良かったね~♪』


『ピキュピキュピキュ~~♪』


『さぁ、そんじゃいっちょやってみっか♪』


 ヒロはテキトーな方向へビシッと視線を送り、埋設リンク型転移ゲートに呼びかけるイメージで念じた。


『とりあえずあっちの方角へ全MP消費で行けるとこまで転移!』



 次の瞬間、ハナランドから見た実世界[宇宙空間]の景色が変わった。



『ん? マルースが無くなったな。てことは、転移自体は成功したってことか……。それにしても星ってこんなに…… 星の数ほどあるんだなぁ~』


『言い得て妙ねぇ。むしろマルースが見えなくなっちゃった分、銀河の壮大さが際立って見えるわね~。360度、どっちを向いても天の川の中に居るみたい。チレーねぇ~。なんか酔いそうなくらい……』


『ピキュ~。マルース周辺と比べると、眩しいくらいの星々なのでピキュ~♪』


『あとさ、俺達、ハナランドの中に居るよな。考えてみりゃ当たり前田のタイソン大麻畑なんだけどさ、この転移ゲートって、実世界に移動するんじゃなくて、ハナランドの座標を実世界に応じて移動させてるだけってことなんだよな?』


《そうです♡》


『そ、……それは改めて凄いぞ! だってコレ、一度も実世界に戻ること無くワープし続けられるじゃないかよ! てーことは、ワープ先の安全確認もしなくて済む! これは画期的な進化だぜ!♪』


《喜んで頂けて何よりです♪》


『……でもヒロ、肝心の距離はどーなの? これで20万キロとかしかワープできてないんなら、宇宙開拓に関しては使えないわよ~』


『お~っとそうだ。スクちゃん、ここはマルースからどれくらい離れたところなの?』


《ざっくり3光年くらいですかね……》


『え?』


『は?』


『ピキ?』




『えぇぇええええーー!? 1回のゲートワープで、ささささ3光年~~~!?』


《この世界の仕様が組み上げられた時点で、まさか百万を超えるMP値を持つ人間が現れるとは想定されておらず、一般的な人類の限界値を基準に100倍程度の補正で設定してしまったため、こんなことになってしまいました》


『…………め、めちゃめちゃラッキーだぜ~』


『や、やったわね、ヒロ。これで毎秒3光年ずつ移動できるわよ♪』


『ヒ、ヒロさんは、やはり宇宙の王だったのでピキュ~。ガクブルジュワ~なのでピキュ~』


『ん~~~~。1分で180光年かぁ~。これはマジで宇宙開拓ができるかもな~』


『できるも何も、これでスクちゃんが言ってた【大体12光年くらい離れたところにあるっていう、魔物狩りが出来そうな惑星】に数秒で行けちゃうじゃないの~!』


『いよいよ宇宙の海を股にかけた宇宙海賊物語が始まるのでピキュ~! 宇宙~の海は~ヒロファ~ミリ~の海~なのでピキュ~! 冒険の桁が上がってきやがったのでピキュ~♪』


『よっしゃー! スクちゃん! その星の方向を教えてくれ! とりあえず行ってみるぜー!』


《了解しました。ではまずその姿勢から9時の方向に向き直ってください》


 スクちゃんの指示は細かい微調整も含めると数回繰り返された。

 そして目安となる星を都度指定されつつ、ヒロのゲートワープは4回と調整用の1回、わずか1分ほどで終了する。



 気付けば目前には、見たことのない真っ青な惑星が浮かんでいた。



『おおぉぉ、岩石型個体惑星だ! おおおっ! 水も大気もあるっぽいじゃないか! おおおおお! 生き物が! 生き物がいるってばよおおおお!』


《この星は、環境がテラースとかなり近いです》


『ざっと見た感じ、海がテラースより大きいな。あと、二足歩行の生物は見当たらない。ねぇスクちゃん、この星は何て名前なの?』


《基本的に、人類未踏、人類未発見のものには名前が付いていません。名前とは、確認されて初めて生まれるものです。この星に名前を付けますか?》


『いや、ゼロモニア大陸やダンジョンでも言ってたことなんだけどさ、大概の生き物やら星やらに、第一発見者の俺が毎度毎度名前付けてたら頭パンクしちゃうと思うから、スクちゃん、今も、これからも、全部名前つけてよ♪ スクちゃんのセンスで♡』


ピッ……


《……そ……それに関しましては、この世界の担当神が承ります。伝えておきますね。ちなみにこの世界の担当神は、絶世の美女で、神界有数のお嬢様カレッジを卒業しており、凛とした大和撫子系清楚女神で、同時に積極的で好奇心旺盛なお転婆娘要素もチラ見せできる、汎用性に極めて優れた、尽くしまくる高嶺の花タイプで、親しみやすさが1番のアピールポイントらしいですよ》


『ふ、ふ~ん。なんか凄いね! じゃ~まぁ、よろしく頼むよ~♪』


《はい。そのまま20秒ほどお待ち下さい》


(アルロライエちゃんてば…… もう後戻りできないくらいアホなアピールが溢れ出るようになっちゃってるわ……。しかもこんなに丸出しなのに気付かないヒロもヒロね。やっぱアホアホコンビってことなのかしら……)


《ゴホン。スクちゃんです。担当神にお伝えしました。今後、人類未発見のものには全て、名前を付けておいて下さるそうです。ちなみにこの星の名前は【ミズアス】だそうですよ》


『おおぉ、【ミズアス】かぁ~。ねぇスクちゃん、【ミズアス】ってさ、なんかやたら魔素が濃いような気がするんだけど……』


《ビンゴ》


『やっぱり! もうなんかね、俺のスコープとステ値が上がりまくってるからなんだろうけどさ、以前に比べると【魔素】の濃度とかも分かるようになってきてるんだよ~。この星はさ、“えっ!? 嘘だろ?”っつーくらい大気中の魔素濃度が高くってさ、まずはそこにびっくりさせられたよ~』


《テラースの27倍の平均魔素濃度です》


『す、すげーな~。つーか、【魔素】って全宇宙に共通して存在するモンなんだね~』


《どこにでもあります。窒素や二酸化炭素や酸素より遥かにありふれています》


『ん? てーことはだよ、この【ミズアス】には、テラースより強い魔物が居がちってことなのかな?』


《超ビンゴ。【ミズアス】には、文化交流できるような理性的な知的生命体こそ居ませんが、戦闘力だけで言えば、テラースの魔物の平均値を上回るツワモノが跳梁跋扈しています》


『おおおお、おら、わっくわっくしてきたぞ~。果たしてそんなスーパーヘビー級の魔物達にインベントリ戦法が効くのか否か、と、とりあえず【かけつけ3万杯】って感じでやってみよっかな~♪』


 ヒロはおもむろに、目についた魔物に意識を集中した。


(フレーム)ピ(成分変化★水)(インベントリ収納)※この間0.001秒


『うん、できた♪』


『ピキュ~! 遥か彼方の未知の星でもヒロさんの瞬殺戦法はブイブイ言わしてやがるのでピキュ~!♪』


『なになに~、【ミズアス】の魔物ってどんなやつなの~?』


『えっとな……』




■毛饅頭[けまんじゅう][S9級]

全身が灰色の体毛で覆われた饅頭型の魔物。体長3m。

目や耳や鼻や舌のような感覚器官は無く、フサフサの体毛に張り巡らされたレーダー器官によって対象の位置や動きを感知する。HPとVITが非常に高く、並大抵の物理攻撃ではダメージすら受けない。

肉は極めて美味で、体毛は柔らかく、皮膚は保温性に優れ、素材としての価値は高く捨てるところがない。




『け、けまんじゅう? なによそのなま……あ、そっか、名前は担当神が付けてるんだったわね……。ヒロ、こいつってS9級だけどさ、他にもこんなハイレベルなのがいろいろ居るの?』


『う~ん、そうだな。こうしている間にもジャンジャン狩ってるんだけどさ、どーやら、この星の最高レベルは、S11級……っぽいかな~。あと、今のところフレーム魔法が効かない魔物は居ないなぁ……』


『そ、そっかぁ。階級が上がれども、未だヒロのフレーム瞬殺狩りは健在ってことなのね~。ちなみにインベントリ狩りは?』


『とーぜん問題ない。瞬殺マクロだ♪』


『ピキュ~! S11ってとんでもないクラスなのでピキュ! そいつがダンジョン種になったらS13級なのでピキュピキュ~♪』


『いやウルさん、それがさ、この【ミズアス】には、どーやらダンジョンがひとつも無いっぽいんだよね~』


『ピキュ!? こんなに魔素が濃いのにピキュか?』


『いや、魔素脈はあるんだよ。大体地下3000mより深場にたくさん分布してる。当然【魔素クリスタル】もいっぱいあるね~。でも、地下2000mくらいに、なんだか貫通できない分厚い層があってさ、そのせいで魔素脈の魔素が地表まで届いてないみたいなんだ。で、唯一の例外が火山……っつーか【魔素山】でさ、陸地の何箇所かにあって、そこから膨大な魔素がとてつもない勢いで吹き出してるんだわ。当然【魔素山】の噴魔口近くや山肌、裾野には強い魔物が多く集まってる。さっきの【毛饅頭】は、裾野のザコキャラって感じかな~』


『ザコって言ってもさ、S9級よ? この星にはF級とかC級とかの魔物は居ないってことなの?』


『うん。今のところ発見した魔物の中の最低レベルは、S5級だ』


『うわぁ~~エグい。なんてえげつない戦闘地帯なの~』


『ピキュ~! これはウルも、ふんどしを締めてかからねばやられてしまうかも知れないのでピキュ~。久々にウルの中のウルコア器官で、青白い炎と迸るスパークが原子融合し始めたのでピキュ~。コー…… ホー…… コー…… ホー……』


『ウルさん、もーちょっと待ってね~。あと少しで市場調査を兼ねた各サンプルの【インベントリ回収】と【マクロ・シナンプルス締め】が終わるからね~』


『ヒロってばもぉ、戸井の活〆マグロみたいに言うわね~。【ヒロのシナンプルス締め魔物】って書いたタグかステッカーでも作ったら?』


『悪目立ちしたくないって常々言ってる俺が、俺のブランド立ち上げてどーすんだよ~』


『まぁそーよね。あと、ヒロの場合、S5級くらいより上になると、漁場を完全に独占しててライバル不在の状態なんだから、特に差別化を図ったりブランド化に力を入れる意味はないのか~』


『ま、そーなるな。特に宇宙産のトレトレでキトキトな魔物は、今のところ俺しか漁場を知らないからな~』


『ピキュ~! こんなことがテラースの権力者共に知れ渡ってしまったら、ヒロさんは冒険なんてしてる場合じゃなくなってしまうのでピキュ~。極秘事項なのでピキュ~』


『結局そーゆーことになるよね。と、そーこー言ってるあいだにサンプル狩猟が大体終わったよ~。見てみる?』


『見たい見たあ~い♪』

『ピッキュピキュ~♪』




□【ミズアス魔素脈】での採掘結果

■ミズアス魔素クリスタル 1億トン


□【ミズアス】での狩猟結果

■[S5] 底喰                  ×10

■[S6] 圧蟲                  ×10

■[S7] ミズアスドラゴン            ×10000

■[S7] ミズアス陸クジラ            ×10000

■[S7] ミズアスエンシェントタランチラ     ×10000

■[S8] はぐれカーボランサースライミー     ×10000

■[S8] ミズアスギラギラドラゴン        ×10000

■[S8] 宇宙恐竜プテラノテラノ         ×10000

■[S8] 宇宙巨大蛭ヌパヌパ           ×10000

■[S9] はぐれカーボランサースライミーキング  ×10000

■[S9] はぐれウルツァイコンプスライミー    ×10000

■[S9] 毛饅頭                 ×10000

■[S9] 宇宙線虫チュルル            ×10000

■[S9] ミズアストゲトゲドラゴン        ×10000

■[S9] 宇宙円盤アダモスキ           ×10000

■[S10]はぐれウルツァイコンプスライミーキング ×10000

■[S10]はぐれグラフメルトスライミー      ×10000

■[S10]回転甲羅饅頭              ×10000

■[S10]宇宙甲虫ダンガガ            ×10000

■[S10]ミズアスモジャモジャドラゴン      ×10000

■[S10]ビリビリマカロン            ×10000

■[S11]はぐれグラフメルトスライミーキング   ×10000

■[S11]宇宙怪獣バラモンガ           ×10000

■[S11]宇宙怪獣ヒドラドン           ×10000

■[S11]宇宙龍ゴッドバハルムント        ×10000

■[S11]宇宙龍フェニックスドラゴン       ×10000




『まだまだたくさん種類は居たんだけど、もう収拾つかないからこのくらいにしておいたよ』


『なんか……さ、変わった名前の魔物が混じってきてるわねぇ~』


『まぁそーとも言えるけどさ、所詮名前なんて分類さえできれば何だっていーとも言えるっしょ? 【ビリビリマカロン】なんて、上手く特徴を言い表してる名前だなぁ~って感心しちゃったりもしたけどねー』


『きっと、マカロンみたいな形してて、ビリビリいわす魔物なんでしょうね~』


『ピキュ~! ここへ来て【上位鉱物系スライミー種】のお出ましなのでピキュ~! ヒロさん、今回もレベルが相当上がった筈なのでピキュ~! 体の芯がブルブルしてるのでピキュ~♪』


『無理もないよウルさん。だってさ、これだもの……』




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:0/851837


Lv:21041[11669up]

HP:100000[70000up]+ 53951

HP自動回復:1秒10%回復

MP:870000[505000up]+ 56358【倍リング + STB効果:8337222】

MP自動回復:1秒100%回復【ネクタール効果】


STR:100000[70000up]+ 56270

VIT:100000[70000up]+ 66078

AGI:100000[40000up]+ 70992

INT:100000[40000up]+ 68537

DEX:100000[40000up]+ 63655

LUK:27905 [16837up]+ 54525


魔法:【温度変化】【湿度変化】【光量変化】【硬度変化】【質量変化】【治癒力変化】【錬金】【トレース】【物質変化】


スキル:【スコープ[SKB]923,000km】【インベントリ(ヒメのなんだからね!)】【必要経験値固定】【迷彩】【ショートカット】【メモ】【アイテムドロップ[アルロライエのセンスで]】【召喚】【スキルバフ】【ステータスバフ】【変身】


亜空間プレミアムオプション:【埋設リンク型転移ゲート[既知&未知]未知MAX:12光年】




名前:ハナ

種族:神獣イデア[幼獣]


Lv:24449[13580up]

HP:53951

MP:56358


STR:56270

VIT:66078

AGI:70992

INT:68537

DEX:63655

LUK:54525


固有スキル:【忠誠】【仁愛】【智伝】【義憤】【礼拝】【光線】




名前:ウル

種族:無限のヒロニウムスライミー


Lv:27786[15002up]

HP:62824

HP自動回復:1秒10%回復

MP:43090


STR:56856

VIT:84921

AGI:104459

INT:56829

DEX:85380

LUK:28582


固有スキル:【神速移動】【神速変形】【神速変質】【神速変色】【神速飛行】【神速分裂】【神速合体】【神速通信】【神速転移】


固有技:神速刺突 神速斬撃 神速防御 ヒロニウムメイデン 爆散刺突 竜巻微塵 神速吸収




『な…… なんかさぁ、宇宙へ出てからというもの、レベルの上がり方が倍々ゲームになってきてるわよねぇ。わたし神だけど、こんなステ値の人間、いや生物、見たこと無いわ……』


『ピッッキューーー!! ウルも我ながら思うピキュ! まず間違いなく、ヒロさんもウルも【種族中最強個体】なのでピキュ~! そしてヒロさんは【世界最強個体】なのでピキュ~♪』


『ウルさん、気持ちは分かるけど、油断は禁物だよ。【俺達が強い】なんてのは、あくまでも今まで遭遇した魔物よりもたまたま強かったってだけのことだからね~。上には上が居るもんなんだよ。絶対に過信は禁物だ。あくまでも慎重に、自惚れること無くやっていこうぜ!』


『ピキュピキュピキュ~! さっっっすがヒロさんなのでピキュ~! ウルはちょっとレベルが上った程度で得意になっていたのでピキュ~! 反省したのでピキュ~!!』


『うし、それでこそ我が息子、そして我が友だ! まだまだ成長していこうぜ!』


『ピキュピキュピキュ~!』


(つーかヒロもウルちゃんも、もう、過信しても、油断しても、自惚れても、得意になっても、よそ見しても、手を抜いても、何者にも負けないような気がするんだけどな……)


『ところでウルさん、【ミズアス】には駐在する?』


『もちのロンギヌスなのでピキュ~! すぐにでも投下してほしいのでピキュ! 早く【はぐれグラフメルトスライミーキング】の野郎に、【スライミーの何たるか】を叩き込んでやるのでピキュ~! ヒロさん、お願いするのでピキュ~!』


『おぉぉ、勇ましいねぇ~。んじゃあ行くよ! ほれっ♪』


 ヒロが【ミズアス】の適当な大地にウル分体を投下すると、それはそれは嬉しそうに完全透明体のまま音も無く飛んでいくのだった。


『飛んでったな~』


『飛んでったわね~』


『お忘れかも知れないピキュが、ウルはその気になればヒュンヒュン飛べるのでピキュ~♪』


『そっか~。折りに触れ、ウルさんが地面をピョンピョン弾んで移動するのは、あくまでも様式美っつーか、キャラの見栄えを重視してのことだったんだね~。よっ! プロスライミー♪』


『ホントよね~。【丸ノコのチップソー型】でも【巨大トゲ鉄球型】でも、もはや原型を留めないほどにどんな形状にでもなれる上に、完全透明体でかつ高速飛行できるっていう【バケモン・オブ・バケモンズ】にまで上り詰めておきながら、普段は【あの頃のスライミー感】を醸し出し続けるウルちゃんって、初心忘るべからずって感じで立派よ~♪』


『て、照れるのでピキュ~~♡』


 ファミリーコミュ担当のウルは、黒光りするわらび餅ボディをフルフルと揺らしながら恥じらうのだった。





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