マルースへ




『さて、現在俺がスコープで捉えられてる数多の星の中に、マルースがあるのかどうかも分かんないから、そこからやってみようと思う』


『え~? そんなこと分かるよーなスキルあったっけ?』


『うむ。俺の異世界転生者としての根幹をなす能力、いや機能、【異世界転生者支援プログラム】を発動しようと思うのだよ』


『……それってさ、最近性能が上がったっぽい【スクリーン】に向かって、質問投げまくるってだけじゃないの? リアクションがあるのをいい事に……』


『ゴホン。ま、まぁそーとも言えなくもない。そ、そう! 【スクリーン】のレスポンス性能を試す実験でもあるのだよ! ぬはーっはっはっは!』


『んじゃ~まぁ、やってみれば?』


『……よし。いくぞ』


 ヒロは精神を集中させると、己の視界にスクリーンを立ち上げ、同時にテキトーな方角にあるひとつの星を見つめ、真心を込めて訴えかけた。


『スクさん! マルースって、あの赤く光ってる星ですか!?』


 するとスクリーンに



《ぜんぜん違う》



 という文字が浮かんだ。


『ぜ、ぜんぜん違うのか……。てーことは……』


 ヒロは最初の星とは逆方向にスコープを走らせ、その中でも明るめな星を見つめた。


『あれですか!? スクさん! あれがマルースですか!?』


 するとスクリーンに《違うけど方向は合ってる》という文字が浮かんだ。


『よっしゃ! 使い方が見えてきたぞ! よぉ~~し♪』


 ヒロはその後、《近い》《惜しい》《逆、逆》《その右横》というレスポンスを得て、ついに《それ♪》を引き当てた。


『おりゃぁぁあああ! 簡単にマルースを特定できたぞ! なんつぅ進化を遂げてやがるんだよスクリーン! ヒメ、一瞬で答えに辿り着いたよ♪』


『……一瞬ねぇ。そんだけ会話みたいなやりとり出来るんならさ、最初から点滅する枠で囲んで教えてもらうとか出来たんじゃないのかなぁ』


 するとスクリーンに《仕様です》という文字が浮かんだ。


『ヒメ~、スクさんも進化の途中なんだよ~。そんな意地悪なこと言っちゃダメだぞ~』


 スクリーンに《ですです》と浮かぶ。


『なにこれ。(確実にアルロライエちゃんだわコレ)もーほぼ会話してるじゃないの…… あと【スクさん】って何よ』


『スクリーンの事を【スクリーンさん】とか【異世界転生者支援プログラムさん】とか言うの、なんか堅苦しいだろ? だから愛着を込めて【スクさん】と呼ぶことにしたんだ♪ その方がいろいろと話しを聞いてくれそうな気もしたしね♪』


 するとスクリーンに《できれば【スクちゃん】で♡》と出た。


『おおぉぉ、スクリーンは【スクちゃん】がお好みみたいだ! オーケー【スクちゃん】、よろしくな♪』


《こちらこそマスター♪》


 この時から、スクちゃん、またの名をアルロライエは、スクリーンに浮かぶ文字列を駆使し、ちょいちょいヒロファミリーの会話に参加することとなるのだった。




『そんじゃスクちゃん、ここから、あのマルースまでの距離を教えてよ!』


《現在は大体1億6千万キロほどです》


『うっわ~。やっぱ【テラース・ルナース間】とは桁が3つほども違うぜ~。計算するのもアホらしくなってくるなぁ。でもまぁ、所要時間だけでも割り出しておくかー』


 ヒロはスクリーンに目をやりながら、ふと思いついたことを念話にする。


『あ、そうだ! スクちゃん、俺ってさ、現在【アルロライエの手仕込みMPネクタール10によるMP回復速度10倍】と、【ステータスバフによるMP量アップ】と【スキルバフによるスコープ性能強化】の3つのバフを同時掛けし続けてるんだけどさ、もし良かったらでいいんだけど、スクちゃんの管理で、この3つのバフの効果時間が切れそうになったらさ、追い掛けしてもらうことって出来たりする?』


《おまかせください♡ 違和感なく遂行します♪》


『おおおぉぉ、やったぜ! これでバフ切れを心配すること無くのびのび行動できるぞ! ……あ、でもアルロライエちゃんのネクタールだけはポーション系だから、実際に俺が飲まなくちゃいけないのか~』


《それもお任せを♡ アクセス権限さえ頂ければ、ネクタールをインベントリから直接ヒロさんの胃の中に配置して効果を継続できますので♪》


『うおっほ~♪ そんな離れ業も出来るの!? ヒメ~! スクちゃんに【ネクタールのフォルダ】へのアクセス権限渡してもいい?』


『……ん。まぁ、別にいいけど……』


『サンキュー! これで完全自動のバフ継続が実現したよ! こりゃもはや【バフ】っつーより【基本性能】だね~。特にアルロライエちゃんのネクタールは効果時間が全く分からなかったからさ、いつも頭の片隅で切れてないかを気にかけてたんだよ~』


《もう大丈夫です。ちなみにこれはわたくしスクちゃんが小耳に挟んだ噂程度の話ではあるんですが、アルロライエさんという女神は、それはもう仕事のできる優秀な女神との話です。オマケにスタイル抜群で容姿端麗。そしていいにおい。性格も良く、弱きをすごく助け強きを挫くってほどは挫かない全能感の持ち主で、数多の生物が彼女を恍惚と崇め奉っているそうですよ。あ、あくまで聞いた話なので、本当は親しみやすい幼馴染の恋人のようなタイプなのかもしれませんけどね》


『へぇ~~、そーなんだ♪ 確かにアルロライエちゃんって超高性能なアイテムくれるし、なんか、無理も聞いてくれそうな優秀さが滲み出てるんだよねぇ~。あと! アルロライエちゃんの握った寿司は最高なんだよ! スクちゃんに言っても食べ物のこととか分かんないだろうけどさ、もぉ~、アルロライエちゃんの寿司はサイコー! アルロライエちゃん! 毎日食べてるよありがとぉーーーー!!!』


ピロピロピロピロロロロロロローーーー………………


『ん? どしたの? スクちゃん? 変な音出てるよ~』


 この時、アルロライエは久々にやってしまっていた。

 しかし、日々鍛錬を重ね、数々の強化パーツ[超薄型ミラクル吸収パッド付き神パンツを含む]を装着した現在のアルロライエは、数秒間白目を剥きながらも、わずか10秒ほどでサラサラ状態を維持したまま現場復帰できるほどの成長を遂げているのだった。


《なんでもありません》


『そ、そうか。ならいいけどさ、突然変な音出るからバグっちゃったのかと思ったよ~』


《平気です》


『そっか、なら良かった♪ これからもずっと一緒に歩んで行くんだからさ、あんまり負荷がかかるような無理はしないでね♪ 俺の大切なスクちゃん♡』


《ンハァ………………………………》


 アルロライエは、これ以上ヒロの強い思念を受け止めると自分がどうなるかを咄嗟にシミュレートし、痙攣する全身を押さえつけ、たぷたぷに膨れたミラクル吸収パッドを新品と交換し、神パンツの紐を引き締め直し、恍惚とした表情はそのままに、努めて淡白な返答を表示させた。


《はい!》




(……アホだ。こいつら二人とも完全にアホだわ。も~好きにやらせとこっと)


『ん? ヒメ、何て?』


『うんにゃ~? なんも言ってないわよ~。それよりヒロ、マルースまでの所要時間、計算しないの~?』


『お~とそーだった。計算計算っと。え~、距離が大体1億6千万キロだろ、そんで俺が今、1度のハナランドワープで飛べる距離が、リミッターかけ気味で約12万キロだ。で、1回のハナランドワープにかかる時間は、集中モードだと0.05秒くらい……いや、連続使用ってことでワープ先の障害物確認の時間とかも考慮するとして……ちょっと余裕めに見積もって0.5秒としておこう。そーすっと……あれ? 11分弱で着いちゃうな……』


『ヒロ……それって…… え? 光の速さって、秒速30万キロくらいじゃなかった? てことはさ、ヒロが本気出したら、光より早く目的地に到着できるってこと?』


『………………まぁ、そーなるっぽい』


『あのさ、確か、光の速度って世界の絶対基準的な最高値なんじゃなかったっけ? あくまでも基礎宇宙理論物理科学者エナジーコル・エムシスケア博士の提唱した理論上の説とは言えよ? ヒロどーすんのよ、あなた時空の枠組みぶっこわしちゃってるわよ~』


『ん~でもさ、ハナランドワープに関しては、【移動】ではなく【亜空間ワープ】なんだからさ、そもそもの土俵が違うって感じじゃないかなぁ。だからこの世界の【光】や【摂理】に怒られることはないと思うぞ♪ なんかほら、【亜空間】ってさ、時空の辻褄無視してるっぽくてスゲー感じするし♪』


『…………はぁ~~。ま、いっかぁ』


『そうそう、摂理なんぞに捕らわれてたら、異世界生活が満喫できないだろ? だから悩まず進もうぜ♪』


『ピキュ~! ではではマルースに行くのでピキュ~!』


『おいやさーーー♪』

『はいは~~~い』


 ヒロは【ルナ泉邸プー部屋】に監視員のウル分体を残し、何かあったら秒で帰還できる準備を整え、ハナランドへと移動した。

 そして【流星4号★要塞★999迷彩】に乗り込み、6万キロ毎のインベントリへの出入り、つまりハナランドワープを毎秒2回ほどずつ繰り返しながら、結果的に秒速24万~26万キロほどの速度にあたる亜空間移動でマルースへと着実に向かっていくのだった。




 約十分後。

 マルース面付近の亜空間、ハナランド内。


『どあーーーーーー!!! マジかよ! 火星……いやマルースに、生物がいるじゃねーかよ!!!』


『すごぉ~~い! おんなじ姿の奴がいっぱい居るよ~♪』


『ピキュピキュ~! 宇宙人なのでピキュ! ウルは興奮しているのでピキュ~!』




■カセイジン[S5級]

ソルース系第4惑星マルースにのみ生息する魔物。

体長は1mほどで、下膨れの頭部から細長く柔らかい足が真下に5本生えており、胴に当たる部位は無い。体色はピンク。アーモンド型で黒光りした大きな目にはまぶたがなく、視線もよく分からない。魔法攻撃に特化しており、物理攻撃や物理防御については無能とも言える。しかし魔法能力は強大で、トーキョートッキョドームを一撃で吹き飛ばせるほどの破壊力を持つ。

頭部や足の肉は美味で、脳もおいしく、捨てるところがない食材である。




『なんだこのツッコむことしか許されないような情報は。まずマルースだっつってんのに名前が【カセイジン】ってどーゆーことだ。次に【ジン】っつってんのに【魔物】とはどーゆーことだ。あと、人間と遭遇したしたこと無いはずなのに、食材としての情報があるのはどーゆーことだ。あとこれで最後にするが、こいつ、【昭和の火星人のイメージ】を踏襲し過ぎてねーか?』


『ホントよね~。まるで鼻水垂らした馬鹿ガキが得意気に描いた落書きみたいだわ~。それとヒロ、このカセイジンって奴、こいつらだけは“トーキョーサマランドのプールかっ!”てくらいの密度でウヨウヨ湧いてるのに、なんか……ほかの生物が、全然見つかんないんですけど……』


『それな~。俺もけっこーマジで探してるんだけどさ、居ないんだよね~、カセイジン以外の生物が……』


『ヒロさん、小さな虫みたいのすら居ないピキュか?』


『まぁ厳密に言えば、もう一種類だけは今見つけたよ~』


『やったじゃない! 情報見せて~♪』

『ピキュ~! 楽しみピキュ~♪』




■ザザカセイジン[S7級]

ソルース系第4惑星マルースの【ザザダンジョン】にのみ生息する魔物。ダンジョン固有種。

体長は1mほどで、下膨れの頭部から細長く柔らかい足が真下に5本生えており、胴に当たる部位は無い。体色はピンク。アーモンド型で黒光りした大きな目にはまぶたがなく、視線もよく分からない。魔法攻撃に特化しており、物理攻撃や物理防御については無能とも言える。しかし魔法能力は強大で、トーキョートッキョドームをコーラッケンホールもろとも、いや、もはやトーキョートッキョドームシティ全エリア丸ごと一撃で吹き飛ばせるほどの破壊力を持つ。

頭部や足の肉は美味で、脳もおいしく、捨てるところがない食材である。




『………………ヒメつまんない』


『ウルも正直がっかりなのでピキュ~』


『しょ~がないでしょ~に! 俺に言われてもどーにもなんないよ~。これが事実、ありのままのマルースなんだからさ~。あ、【ブブカセイジン】ってのも居たぞ! ……おっと、【ゲゲカセイジン】も発見した~♪』


『それってつまりは、マルースでダンジョン見つけるたびに発表される亜種でしょ~? 全部カセイジンじゃないのよ~』


『ヒロさん! マルースのダンジョンにも【魔素クリスタル】はあるピキュ?』


『うん、めっちゃめちゃあるよ~♪ もうたくさん採取してるから、食べるの楽しみにしててね~』


『ピキュピキュ~! やったのでピキュ~♪』


『ウルちゃんはいーわよねぇ~。【魔素クリの食べ比べ】っていう楽しみがあるからさ~。わたし、宇宙旅行って、もっとロマン溢れる幻想体験の数々を夢見てたのに……。なによこの赤土だらけの荒野のカセイジンだらけの惨状は。こいつらどんだけ居るのよ。こんなのただの養殖場じゃないのよ~。おろろ~ん。おろろ~ん』


『まぁまぁヒメ、このテラース目線で異常と思える状況こそ【ロマン溢れる幻想体験】とも言えなくもないだろ? ようは気持ちの持ちようだよ。知らなかった景色が見られてるってだけでも楽しいじゃないか♪』


『わかったわよ~。ちょっと愚痴ってみただけよ。もう吹っ切れたわ~。ところでヒロ、こいつらにもヒロの瞬殺魔法は通用したの?』


『まぁ、何の問題もなくゲットできたな。サクサク収穫できたよ♪』


『そーなんだ。なんかさ、魔力特化型みたいな情報だったからさ、魔法に対する防御力もすんごいのかと思ってたんだけど、杞憂に終わったみたいね~』


『ヒメ、それについてなんだが、多分、この世界には【魔法防御力】っていう概念そのものが無いんだと思うよ』


『え? どゆこと?』


『そもそも【魔法】って言うけどさ、実際にフレーム内で起こっていることは【物理変化】でしか無いだろ? 別にこの世界に限らなくてもいーのかも知れないけど、例えば【温度上昇】でも【火】でも【炎】でも【炎獄】でも【ファイヤー!】でも、全部【物理現象】じゃないか。だから、どんな魔法を食らっても、それに対して有効なのは【物理防御】ってことなんだと思うんだよね~。例えそれが【水】でも【土】でも【風】でも【雷】でも【メテオ】でも、物理攻撃であることに変わりはない。【精神】とかがあったとしても結局は【脳内シナンプルス】を精密に改ざんする物理攻撃と解釈できる。まぁ【闇】とか言って【闇に葬る】とか【影に潜る】なんてことになると、俺にはちょっとファンタジーすぎて定義や法則がさっぱり理解不能な【それって個人の主観によるだろ的疑惑の珍魔法】って別カテゴリになっちゃうんだけどさ……』


『あとピキュ、【死者蘇生】の魔法がホントーに何十兆個の細胞の情報と秒間5千兆回くらいのシナンプルスのやり取りを正確に記録&再現しているのかも疑惑ピキュ~。そんなの神サーバーの援護が無いと無理筋ピキュ~』


『それを言うなら【アンデッド】って魔物もわっかんないわよね~。そもそも【アンデッド】って何? 死んでんの? 生きてんの? 生きてるとしたらホネホネボディとかぐちゃぐちゃボディでどーやって運動や思考を支えてんの? 脳だけはみんな無傷で残ってる? 血液……あ~この世界で言うと【魔素】か。の循環供給も無く? そんな訳ないわよね。相手してんのは実体のあるリアル人間でしょ? だとしたらその人間にとって辻褄の合う前提が必要でしょ? 上から飛行型の魔物が糸で操ってたりしてるのかなぁ。あ、【魂が動かしている】とかは無しよ。【魂】なんてのは【感情表現のための形容アイコン】のひとつでしかなくて、実在しないものだからね。あと、そんな【アンデッド】に有効と言われる【聖】よ。【聖】って何? わたし神だけど、そんな成分【魂】と一緒でさ、カックイーくするためだけの表現であって、実在する成分としては聞いたこともないわよ? そもそも【聖】だの【邪】だの【正】だの【悪】だのって、超~相対的な定義じゃん? 国や地域や人種や信仰や時代や個人の気分によってコロコロ変化しちゃうものよね? そんなブレブレな状態を【魔法という絶対的法則】として定義させちゃっていいわけ? いや、敢えて言うわ。そんな魔法、ほんとーに存在するの?』


『…………ヒメ、ごめん。俺がうっかり【闇や影なんていう、光の強弱でしかないグラデーション領域を明確に線引きするっていう不可解さ】についてちょっとソフトタッチしてしまったばっかりに、こんな惨状を招いてしまって……マジ反省してる。だからもう、……忘れよ♪ 魔法の違和感のことは全て忘れて俺の異世界生活を一緒に楽しも♪ ね♡』


『んくっ……。ま、まぁ、ヒロがそー言うんだったらそーしよっかなぁ~。わたしもさ、勢いで言っちゃっただけで、別にホントはどーだっていいって思ってることだからね♪』


『それでこそヒメ! 助かるよ~♡』


『えへへへ~♡』





『ヒロさん、結局カセイジンどもはみんな弱弱だったってことピキュ~?』


『あぁ、その件な。実際にマルース面に身を晒して戦えば、あいつらも超高火力な魔法を撃って来るんだろうけどさ、試しに撃ったフレーム魔法はフツーに効いたなぁ。まぁその後の、インベントリ収納&シナンプルス締めに至っては抵抗のしようが無いからな~。結果的には弱弱だったね~』


『今頃あいつら、“仲間が宇宙人にさらわれた~!”とか言って大騒ぎしてるんでしょうね~♪』


『ヒメ、なんてシュールな解釈なんだ。目から鱗だぜ……』


『えっへん♪ で、もしヒロがさ、【魔晶】だけを抜き取ってボディを残してたりしたら、“カセイジンミューティレーションだ~!”って、……あ、違うわ。“ワレワレハ、カセイジンダ。カセイジンミューティレーションハ、コ・ワ・イ・ノ・ダ”とか言ってるんでしょうね~♪』


『…………ちょっと俺、タバコ吸うわ』


 ヒロはおもむろに魔ショットホープを取り出して吸い始めた。

 すると、ヒメとウルとヒロリエルによる【ワレワレハカセイジンダ合戦】が始まり、息を呑む攻防がつづく。

 結局、【ワレワレハカセイジンダ合戦】が幕を閉じたのは、魔ショットホープが3本消費された頃だった。


『おまえら長ぇ~よ、ビブラート合戦。俺、後半アタマおかしくなりそーだったし……』


『そんなこと言っちゃって~、ヒロだってホントは参加したかったんでしょ~?』


『そ、そんなことないもんね……』


『あ~~~、やっぱりやりたかったんだ! よしよし、次の大会には参加してね♪』


『………………』


『ところでピキュ、こーやっている間にも、ヒロさんは各種カセイジンを大規模乱獲しているピキュ~? ウルはなんだか……さっきからグングンパワーアップしているような気がするのでピキュ~』


『おおぉ、ウルさん敏感だね~! 確かにここに着いてからというもの、魔素クリ以上に各ダンジョンのカセイジンをめっさ狩りまくってるのは事実だよ。ただ、全体の数が多すぎて、減ってるって感じは全然しないけどね~』


『ピキュ! この、チカラが湧き上がるような感覚は、今までに味わったことがないのでピキュ~。多分、過去に経験したことのないレベルの能力上昇が起こっているのでピキュ~♪』


『そんじゃ、そろそろ確認して……みる前に、ちょっとスクちゃんに訊いておこうかな♪ スクちゃん! マルースにはカセイジンとそのダンジョン変種以外に、違う種類の生物は居ないの?』


《居ません》


『なんつ~簡単な答え。そしてわかりやすい。よし、もう狩りに関しては思い残すこともないぞ! レベルとポイントの確認だ!』




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:311418


Lv:9272[4266up]




『………………』

『………………』

『………………』


『さ、さてと、ス、ステ振りしよっかな~』


 ヒロはポイントの桁を何度か見返しながらステータスにポイントを振った。




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:0/311418


Lv:9372[4366up]

HP:30000[10000up]+ 24075

HP自動回復:1秒10%回復

MP:365000[220000up]+ 25124【倍リング + STB効果:3300449】

MP自動回復:1秒100%回復【ネクタール効果】


STR:30000[10000up]+ 25036

VIT:30000[10000up]+ 29412

AGI:60000[20000up]+ 31610

INT:60000[20000up]+ 30513

DEX:60000[20000up]+ 28347

LUK:11068[8718up] + 24649


魔法:【温度変化】【湿度変化】【光量変化】【硬度変化】【質量変化】【治癒力変化】【錬金】【トレース】【物質変化】


スキル:【スコープ[SKB]206,000km】【インベントリ(ヒメのなんだからね!)】【必要経験値固定】【迷彩】【ショートカット】【メモ】【アイテムドロップ[アルロライエのセンスで]】【召喚】【スキルバフ】【ステータスバフ】【変身】




名前:ハナ

種族:神獣イデア[幼獣]


Lv:10869[5210up]

HP:24075

MP:25124


STR:25036

VIT:29412

AGI:31610

INT:30513

DEX:28347

LUK:24649


固有スキル:【忠誠】【仁愛】【智伝】【義憤】【礼拝】【光線[NEW!]】




名前:ウル

種族:無限のヒロニウムスライミー


Lv:12784[6359up]

HP:47822

HP自動回復:1秒10%回復

MP:28088


STR:26852

VIT:39915

AGI:54238

INT:26825

DEX:40374

LUK:13580


固有スキル:【神速移動】【神速変形】【神速変質】【神速変色】【神速飛行】【神速分裂】【神速合体】【神速通信】【神速転移】


固有技:神速刺突 神速斬撃 神速防御 ヒロニウムメイデン 爆散刺突 竜巻微塵 神速吸収




『クゥ~、目に染みるぅ~。MP3百万オ~バ~。しかもスクちゃんが気を利かせてくれてスコープ距離表記してくれてる~~。なんと20万キロオ~バ~~』


『ピキュ~! やはりピキュ! みんなステ値が倍増しているのでピキュ~♪』


『ヒロ、ハナちゃんが新スキルおぼえてるよ! 見せて~♪』


『おぉ~ホントだ♪』




■光線[こうせん]

神獣イデアがレベル1万になると発現するスキル。

目から【イデアビーム】という光線が出る。その性質と威力は謎に包まれているが、古い神の残した一節には【銀河荒らし】【星割り】【滅神光】などの形容が残されている。




『怖っ! ハナちゃんてば、目からビーム出して、星割っちゃえるのね~。神様……ハナちゃんが暴走モードとかになりませんように……(合掌)』


『ヒメ、神が神に祈るんじゃないよ。あと、星くらい俺だって割れるもんね~♪』


『ひーたんも余裕なのです♪』


『お、おまえらは……。ふたりとも、そんな実力は死ぬまで隠してなさいよね~。まったく、なんて物騒なファミリーなのかしら……』


『ヒロさん! ウルはこんなにレベルアップしたの、初めてなのでピキュ! どれくらい狩ったのでピキュ~?』


『ふふ。ウルさん、それはね、』




□【マルースザザダンジョン】での採掘結果

■ザザ魔素クリスタル 1000万トン

□【ザザ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ザザカセイジン ×1000000


□【マルースブブダンジョン】での採掘結果

■ブブ魔素クリスタル 1000万トン

□【ブブ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ブブカセイジン ×1000000


□【マルースゲゲダンジョン】での採掘結果

■ゲゲ魔素クリスタル 1000万トン

□【ゲゲ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ゲゲカセイジン ×1000000


□【マルースギギダンジョン】での採掘結果

■ギギ魔素クリスタル 1000万トン

□【ギギ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ギギカセイジン ×1000000


□【マルースドドダンジョン】での採掘結果

■ドド魔素クリスタル 1000万トン

□【ドド・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ドドカセイジン ×1000000


□【マルースズズダンジョン】での採掘結果

■ズズ魔素クリスタル 1000万トン

□【ズズ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ズズカセイジン ×1000000


□【マルースボボダンジョン】での採掘結果

■ボボ魔素クリスタル 1000万トン

□【ボボ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ボボカセイジン ×1000000


□【マルースガガダンジョン】での採掘結果

■ガガ魔素クリスタル 1000万トン

□【ガガ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ガガカセイジン ×1000000


□【マルースジャジャダンジョン】での採掘結果

■ジャジャ魔素クリスタル 1000万トン

□【ジャジャ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]ジャジャカセイジン ×1000000


□【マルースデュデュダンジョン】での採掘結果

■デュデュ魔素クリスタル 1000万トン

□【デュデュ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]デュデュカセイジン ×1000000




『ピキ……ピキ……ピキュ~~。魔素クリ1億トン……。カセイジン1千万匹……。う、う、宇宙の支配者が……現れたのでピキュ~~~アフアフアフ~~~』


『ねぇヒロ~、わたしはもう【ヒロの収穫量の膨大さ】に驚いたりしない体質になって来たからさ、ウルちゃんみたいに意識は失ったりはしないけど、この10個のダンジョンの収穫量が全く同じなのって、どーやってんの~?』


『あぁ、それな~。今の俺の採り方や狩り方ってさ、最初の頃と違って、まずはインベントリに収納しちゃうって段取りだろ? だからテキトーな【ターゲット密集エリア】をドデカいフレームで囲って、【ザザ魔素クリスタルの手頃なのを100万トン収納!】とか【ザザカセイジンの程好いやつ見繕って10万匹収納!】とか指定してるだけなんだよ。ん~で、魔物の場合はそのあと粛々とマクロ締めるって感じかな~。実際、魔素クリもダンジョン系カセイジンも、こんなもんじゃない、桁違いの量や数がまだまだ残ってるんだけどさ、キリが無いからちょこっとだけにしておいたんだ~』


『なななるほど。こここれで【ちょこっとだけ】って訳ね。りりり理解したわ……』


『まぁなんだ、ハッキリくっきりエゴイスティックに言っちゃえば、【マルースは経験値と食材と魔素クリの宝庫】ってことだな。テラース生活で能力や資源に困ったら、とりあえずマルースに来ればどーとでもなるってことだ♪』


『そ、そんな事態にはまず陥らないとは思うけど、改めてそんな風に考えると、マルースへの到達は画期的なことだったのかもね~』


『ピキュ! ヒロさん、はやくウル分体をマルースに下ろして欲しいピキュ~! ウルは早く戦ってみたいのでピキュ~♪』


『お~~、行ってくれるかウルさんよ! でもね、いつも言ってることだけど、つらくなったら、いつでも実家である俺の処に戻ってきていいんだからね♪』


『ピキュ~! いつも言ってることピキュが、ウルは絶えず全ての分体のあいだで意識や体を交換アップデートし続けてるのでピキュ~。今そこにいるウルが、数分後には違う場所にいることもあるのでピキュ! だからいつも、実家であるヒロさんの元には、全てのウルが定期的に帰省してるのでピキュ~。 全ウルが【ヒロさんの表面巡回警護】と【おしゃべり担当】をやりたくて、行列が出来ることは日常風景なのでピキュ~♪』


『そーだったね~♪ でもまぁ、気をつけて。健闘を祈ってるよ!』


 ヒロはそう言うと、待ちきれずにブルブルと武者震いするウル分体をインベントリ経由でマルース面にそっと置いた。

 しかし、凄まじいレベルアップにより完全透明化にも磨きがかかったウルの存在は、どのカセイジンにも気付かれることはなく、その状況を確認したウルは、静かに目を閉じるとカッと見開き、矢庭に攻撃を開始する。


『おおぉ、早速到着するなり200体くらいに分裂して切り刻みまくってる! さすがウルさん♪』


『ウルちゃん凄いわ! あっちでは刺しまくって、そっちでは殴りまくって、いちばん効率のいい殺り方を模索してる! どれも瞬殺よ!』


『おぉぉ~~っと! 脳の位置を把握した! 刺突だ! 彼は刺突を選んだ~~! 次々とカセイジンの脳めがけて効率よく【神速刺突】を繰り出していくぅ~~! しかも刺突が脳に達した瞬間、形状を変化させて撹拌までしているぞぉ~~! これにはカセイジンもたまらない~~! 為す術もなく倒れて……いや、倒れることさえも許されない~~! 次々とウルさんの亜空間ポケットに消えていくーー! 一方的だ! あまりにも一方的すぎるぅー! これはまさに! 暴虐極まりない領星侵犯だぁーー! この星に神は居ないのかーーー!!!』


『……ヒロ、ちょっと興奮しすぎじゃない?』


『あ…… ごめんごめん。ウルさんのスペックが段違いすぎてつい……』


『まぁでもウルちゃん、私のような【美しさと満ちる慈愛だけが取り柄の女神】から見ても強くなってるわねぇ~。しかもヒロが見てるからって張り切っちゃってるし。かわいい♪』


『ピキュ~! ヒロファミリーが見守る中で戦える機会なんて滅多に無いのでピキュ~! 今こうしてヒロさん警護にあたっているウルにも、あの、戦場で舞い踊るウル分体達の荒ぶるバトルソウルが伝わってくるのでピキュ~! 我ながら、凄まじい闘魂なのでピキュ~♪』


『カセイジン戦に関しては、ウルさんの存在に気付かれなかった時点で結果は見えてたよね~。あいつら防御力はかなり低いみたいだからさ、感知されなきゃこっちのもんだよ。てっきり感知能力とか高スペックだと思ってたんだけどねー』


《カセイジンの感知能力はとても高いですよ。魔物の中でも高レベルです》


『おっスクちゃん♪ って~ことは、そんな高性能レーダーにも感知できないほど、ウルさんは【消えている】ってことなのか~♪』


《そうです。魔物の超越した感覚器官を持ってしても、ウルさんを触ること無く感知するのは不可能なレベルに達しています》


『だってさ~! ウルさんすごいね~♪』


『ピキュ~! これもすべて、ヒロさん達のお陰なのでピキュ~♪ ウルはこれからも【超戦略級宇宙忍者ウル】として成長し続けるのでピキュ~!』


『ま、まぁ遠からずっちゃ遠からずなのかもね~♪』


『ウルちゃん凄~い♪』


『ピキュピキュピキュ~♪』





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