28日目 海底ダンジョンと海の幸




『さて、そんな訳で俺達も、冒険者らしく冒険に出掛けたいと思う』


『ピッキュ~! 待ってましたなのでピキュ~♪』


『今回は、ダンジョン探しだ♪』


『な~にが“今回は”よ~。【今回もまたまた】でしょ~(苦笑)』


『まぁまぁ、そーなんだけれどもな~』


『で、目的地は?』


『確信は無いんだが、予感はする、みたいなところだな』


『ふぅ~ん。着くまで秘密のパターンなのね?』


『いや、【和能呉呂島】方面だ♪』


『おおぉぉぉ、わたしとヒロのふるさとじゃないのぉ~♪』


『まぁ、厳密には【ふるさとに似たところ】だけどなー』


『そうね、ここは異世界だったわね~』


『ピキュピキュ~! 【和能呉呂島】にはウル分体駐在員もいるのでピキュ! それなりの情報は既に掴んでいるピキュよ~♪』


『おぉ、一応聞いておこうか♪ ウルさん、どんな感じなの?』


『ピキュ! 今のところのウル情報は……』


■【和能呉呂島】は4つの島からなる地域なのでピキュ。

■国と呼べるほど統治されてはおらず、各地域に【トノ】と呼ばれる領主がおり、その領土ごとに仲良くしたり争ったりしているのでピキュ。

■和能呉呂エリアの人間は、殆どが【ヒト】ピキュが、【サムライ】と【シノビ】という【固有種族】も僅かに存在するのでピキュ。

■【サムライ】と【シノビ】の情報は少ないピキュが、特有の技を使う【魔法能力者】で、額に角が生えているらしいのでピキュ。

■【サムライ】と【シノビ】は戦闘員として特化しているらしく、【トノ領】同士の戦いでは勝敗を左右する重要な戦力らしいのでピキュ。

■和能呉呂エリアには温泉が多く、ウルはとても気に入っているのでピキュ。

■和能呉呂エリアには世界組織である【冒険者ギルド】も【クリスタル教】も足を踏み入れておらず、その結果、グローバルな価値観には染められておらず独特の文化や様式が保たれているようなのでピキュ。

■【エド】という領土が一番人口が多く、賑わっている町の数も多いのでピキュ。

■【ヒト】【サムライ】【シノビ】以外の人種は1人としておらず、完全ガラパゴス状態なのでピキュ。


 ウルからもたらされた【和能呉呂島】情報は大体そんな感じだった。


『キタこれ。魔法能力者の凄腕戦闘種サムライ&シノビ! 角生えてるってよ~♪ 強そ~だな~♪ 俺ワクワクすっぞ♪』


『おおぉ、なんか楽しみだねぇ~。神社とかあるかなぁ♪ 鳥居にスリスリした~い♪』


『ただな、』


『ん?』

『なにピキュ?』


『あとで散策してもいーんだが、今回の目的地は、海なんだよねぇ』


『海~?』

『海ピキュ?』


『とりあえず向かおうか』


 ヒロは【ウルワープ】でまず【エゾ】上空に飛び、ヒロニウム製に生まれ変わった【流星4号★要塞★999迷彩】に乗り込むと、一目散に東の沖合200kmあたりの上空まで移動する。


『よーし、この辺りだな~♪』


『何が? 辺りって言われても、辺り一面海なんですけどー』


『えっとな、この辺りの海は超深いんだよ。海溝って言うんたけど、その海の底の深い溝は、ずーーーっと南まで続いてるんだ。つまり、俺が今回ビンビンに受信してるのは、世界トップレベルの深海周辺を探しまくれば、ダンジョン有るんじゃね? っつー予感なんだよ♪』


『おおぉ、極端な地形やシンボル的スポットにダンジョンの気配あり! の法則ね♪』


『マジそれな。だから今回は、このエゾ東沖の海溝あたりをスタート地点とし、南へどんどん移動&探索していくルートを取りたいと思います!』


『すご~い! ヒロ、わたしたち、海に潜るのね~♪』


『いや、潜んないよ。【スコープ】で底まで見えてるし』


『あ…… そーだった。ヒロは100km先まで見えるんだったわ。ちなみに一番深い溝って……』


『多分だけど、10kmくらいだと思うんだよねー。まぁ例え深さ50kmだったとしても見えちゃうんだけどさー』


『くぅぅ~、なんつーロマンの無さよ! こーゆー時ってさ、海中旅行を存分に楽しんだりするんじゃないの? そんで仲間の1人がトラブルに巻き込まれて海の底で死にかけるんだけどさ、心優しき海底人に助けられてさ、そんで海底大戦争に巻き込まれてさ、最後は“母なる海って大事だよね♪”みたいな教訓エンドでいい思い出♪ みたいなのが冒険でしょーに! 海上500mを飛行しながら【スコープ】でダンジョン見つけてインベントリ収納してハイ終了~じゃないわよ! も~ぐ~り~た~い~。ヒメ海の中、旅しぃ~たぁ~いぃ~。ねぇヒロぉ~~』


『わーった、わーったから。もっと南の方行ってから潜るから。それまで黙っててくれ』


『わ~~~い♪』

『ピキュピキュ~♪』


 ヒロは“やれやれだぜ”と“まぁそれも一興かな”を胸に、海上上空500mを飛行しながらサクサクと海底探索を進めるのだった。


 3分後


『おっと早くも見つけたぞ♪ ……あぁ、でもこれ【魔素クリスタル】の鉱脈だけだな~。ダンジョン化はしてないわ。魔物がいないもん』


『そっかー、魔物が入り込める入口が開通しないと【ダンジョン】と呼べる魔窟には成長しないんだもんねー。でも魔素クリゲットおめ♪』


『あざ♪ でもできればダンジョンがいいんだよなぁ。レベル上げたいし。……つーかさ、この海溝付近の地下に巡ってる【魔素脈】って、【魔素クリスタル】の量が凄そうなんですけどー』


『ヒロって確か、もう何百万トンも魔素クリ持ってるわよね。要る?』


『それは要る。だってハナとウルさんの好物だもん。特にウルさんに関しては明確なエネルギー源ってことが分かってるんだから、いくらあってもいい。だから見つけたらゲットなんだぜ!』


『ピキュピキュ~! 嬉しいのでピキュ~♪ ヒロさんのくれるヒロニウムと魔素クリがあるからこそ、ウルはフルスペックのままどんどん分裂できるのでピキュ~。たくさん有るに越したことはないのでピキュ~♪』


『そんじゃーどんどん行くぜ!』


『ピッキュピキュー!』


 ヒロは宣言通り、高速飛行を続けながら海溝付近の地中に眠る天然魔資源【魔素クリスタル】を次々と発見し、次々とインベントリ収納していった。

 そんなランガン採掘を繰り返すこと1時間。

 ついにその時が来る。


『キターーー! ダンジョンだ! ついに魔物の巣窟発見! 水生の魔物が跳梁跋扈してやがる! こいつぁ~狩り甲斐があるぜ~♪』


 ヒロが初の深海ダンジョンを発見したのは、スタート地点から遙か3千キロほども南の海だった。

 そして浮かれ気分で高レベル魔物のみを選定狩りした結果……。




□【マリナ・ダンジョン】での狩猟結果

■[S4]マリナオリハルコンスライミー       ×1000

■[S4]マリナオーディンマーメイド        ×10000

■[S4]マリナ玄武                ×1000

■[S4]マリナ青龍                ×1000

■[S4]マリナ鬼神河童              ×500

■[S5]マリナはぐれオリハルコンスライミー    ×500

■[S5]マリナミュルグレスカツオノキラーエボシ  ×1000

■[S5]マリナメガクラーケン           ×1000

■[S5]マリナリヴァイアサン           ×500

■[S5]マリナギガントスヨルムンガンドル     ×1000

■[S5]シロナガスタイタンメガロドン       ×500

■[S6]マリナはぐれキングオリハルコンスライミー ×100

■[S6]マリナアポカリプスドラゴン        ×100

■[S6]マリナエンシェントドラゴン        ×100

■[S6]深海龍ドラゴニウムドラゴン        ×10

■[S7]マリナ底喰                ×10000

■[S8]マリナ圧蟲                ×1000

■[S8]マリナ水神蟲               ×100




『いやまさか、アイツがこんなところで大量に見つかるとはなぁ~』


『で、でたぁ~、オリハルコンスライミーシリーズ大漁じゃな~い♪ ヒロぉ、伝説の【はぐれキングオリハルコンスライミー】の、しかもダンジョン固有種よ~! なんかほかにも凄そうなのがいっぱい狩れたみたいだけど、なんつってもオリスラよねぇ~。経験値の宝庫といわれる金属系スライミーの最高峰、こんなに狩っちゃって♪ もぉ逆にステータス見るの怖いよね~。あらゆる摂理、逸脱しちゃってそーでさー♪』


『このあたりの海底付近の地中にさ、やたらとオリハルコンがあったからさ、ひょっとしてとは思ったんだけど、案の定、いやがった♪』


『おおぉぉ、じゃあオリハルコンも大量採掘できたんじゃ…… あ……』


『そう、今や【ヒロニウム】を無限保有する俺にとって、オリハルコンなんぞ鉄粉と変わらんのだよ。格が違うのだよ、物質としての格が……』


『そ、そーよねぇ。もはや価値があるのは素材としてのオリハルコンじゃなく、経験値としてのオリスラちゃんなのよねー』


『あとあれだな、ドラゴン種って海中でも生き生きと生きてんのな♪ 固有種化して高位化したアポドラとかエンドラが海中を泳ぎまくる姿には驚いたよ。あいつらホント万能生物なのなー。あと多いし! 地上だとあんなに個体数が少ないのに不思議だわ~』


『それは多分だけど、高位の魔物になればなるほど生きて繁殖するのに膨大な量の【魔素】が必要だからじゃないのかな。地上にはダンジョンほど高濃度で大量の魔素はどこにも無いからね~。魔素脈サマサマってことじゃない?』


『なるほどなぁ。そー考えると、魔素脈とオリハルコン鉱脈が入り混じったこの海溝地下にオリスラちゃんたちが大量発生してたのも頷けるよな。ダンジョンにはダンジョンでしか見たことない魔物が千とか万の単位でひしめいてたりするしなー』


『質問ピキュ!』


『はい、そこのウルさん、発言してください~』


『ピキュ! ヒロさんは見つけた魔素脈で魔素クリをほぼ取り尽くしたりしてるピキュが、魔素クリの無くなったダンジョンでは魔物たちが餓死絶滅するってことはないのでピキュか?』


『それは多分ないと思うよ。俺も何度も繰り返し観察してみたんだけどさ、どーも魔物は【魔素クリ】を食べたりはせず、むしろ【魔素】を呼吸器官から接種するのがお好みらしいんだ。だから今まで一度もダンジョン内で【魔素クリ食べてる魔物】も【魔物にかじられた跡のある魔素クリ】も見たことないんだよねー。つまり【魔素クリスタル】ってやつは、余剰分の魔素のカタマリ。つまり余り物なんだと思うんだよね』


『ピ、ピキュ~~。だったらヒロさんが【魔素クリ乱獲者】として神様から天罰を受けることは無いのでピキュね~。安心したのでピキュ~~♪』


『いや、実際のところは俺にもよく分かんないんだけどさ~。こんなときにアルロライエちゃんが教えてくれたりしたらいいんだけどなー。魔素クリスタルを採りすぎると【この世界の自然サイクル】的になんかマズイことになるのかな~。』




ピロン


 ヒロのスクリーンにテキストのみのダイアログボックスが現れた。そこには


《全然問題ありません♡  (*╹▽╹*)ゞ 》


 と書かれていた。




『おっ! 問題無さそうだぞ~。アルロライエちゃんが言うんだから大丈夫だろ~♪』


(あいかわらずレスポンス早いわねぇ~。もう24時間リアルタイムでヒロの言動に張り付いてるとしか思えないわ……)


『で、ヒロ、どーなのよ、レベルは? 獲得ポイントは?』


『おーそうだった。では発表します♪』




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:81673


Lv:2565[1219up]




『きたきたきたぁ~~~~!! オリスラ軍団まさに神よーー!!!』


『神はおまえだろーが(苦笑)』


『い~やいや、ヒロ、この上がりは反則過ぎるでしょ~♪ ヒトとしてどーなの!? 馬鹿のひとつ覚えな寿司好きとしてどーなの!? 華麗なる覗き趣味の下衆オーク野郎としてどーなのよ!? 耐えられるの!? この桁外れな進化にっ!』


『………………』


『あ、うそうそ~、一部冗談よぉ~♪ あんまり強烈なレベルアップだったからさ~、ついつい興奮しちゃって…… てへ♡』


『………………』


『ねぇヒロ、見せて♡ ステ振りしたの、み、せ、て~♡』


 ヒロは2分ほどむくれ黙った末、スクリーンにステータスを表示させた。




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:0/81673


Lv:2565[1219up]

HP:10000[7000up]+ 7041

HP自動回復:1秒10%回復

MP:74000[34000up]+ 7315【倍リング効果:162630】

MP自動回復:1秒10%回復


STR:10000[5000up] + 7227

VIT:10000[5000up] + 8506

AGI:20000[10000up]+ 9156

INT:20000[10000up]+ 8832

DEX:20000[10000up]+ 8215

LUK:1930 [673up]  + 7615




名前:ハナ

種族:神獣イデア[幼獣]


Lv:3126[1530up]

HP:7041

MP:7315


STR:7227

VIT:8506

AGI:9156

INT:8832

DEX:8215

LUK:7615




名前:ウル

種族:無限のヒロニウムスライミー


Lv:3685[1927up]

HP:24998

HP自動回復:1秒10%回復

MP:13499


STR:8654

VIT:12618

AGI:17842

INT:8627

DEX:13077

LUK:4481




『はきゃ~~~んぬ♡ あふ♡ 神レベル♡』


『どーしたヒメ、なんか変だぞ』


『ご、ごめん。マジでうっとりしちゃったわ~。ヒロがあまりにもあまりにもなもんで……』


『確かに、もはや俺にも俺自身の性能を制御できるのか不安だ。ちなみに【スコープ】到達距離は、軽く試してみたところ、500kmはいけるな』


『500kmて。それってセンタルスに居ながらにしてガンズシティやメンシスのブクオーフで立ち読みできる距離じゃないのよ~。もっと言うなら万引だってできるわ! まさに悪魔の所業よ……』


『ガンズシティやメンシスにブクオーフなんて無いだろ。あと例えのスケールが小さ過ぎるぞ』


『ち、ちなみに、魔素クリの採掘量とか……は?』


『うむ』




■エゾ海溝魔素クリスタル   430万トン

■エド海溝魔素クリスタル   290万トン

■ハチゾ海溝魔素クリスタル  500万トン

■オガサ海溝魔素クリスタル  620万トン

■イオ海溝魔素クリスタル   560万トン

■マリナ海溝魔素クリスタル  810万トン




『しめて、3210万トン。今までの備蓄分と合わせると、3890万トンと少々、かな』


『ヒロあなた今、【セントラルバグ】ダンジョンでせしめた1万トンちょいを端数扱いしたでしょ。やだわ~も~。インフレよ~スーパーインフレーションの到来よ~。おろろ~ん。おろろ~ん(泣)』


『泣くな泣くな~。なんかしらのインフレもまた異世界生活の醍醐味だろーに。それにだな、俺にまつわるインフレは、未だ世界の人類に認識されてないんだし、パワーバランス的崩壊とか【無理やり自分より強めな敵登場!】みたいなことも何ひとつ起こってないじゃないか』


『た、たしかに。ヒロが何かしらで苦戦したのって、【グングニル毒ガエル戦でのほふく後進事件】とか【自作した木の皿が焼け焦げて不満事件】とか【バッタ殲滅に思ったより時間かかった事件】くらいしか浮かばないわ。そうね、今さらスペックが跳ね上がったとて、誰も気にしちゃいない…… っつーか誰も知らないし知ったこっちゃないってことよね~♪』


『そー言われるとなんかちょっぴり寂しいけどな。まぁとにかく、この世界には【俺の宿敵】みたいな縦軸的存在が居ない……っつーか未だ出会ってないからさ、簡単に言えば【気楽】なもんだよ♪』


『今んとこ唯一ヒロを倒せそーなのはウルちゃんなんだろうけど、【師弟の絆】で結ばれてるし、同時に友だし兄弟だし息子だしねぇ♪』


『ピキュピキュ! あとファンで下僕でパラサイトでストーカーで妹で幼馴染で同級生で保健室の女教師で会社の女上司でもあるのでピキュ~♪』


『こらこらウルさん、俺の人格が疑われるようなこと言うんじゃない』


『あんた達わたしの知らないとこでどんな話してんのよ~』


『あとヒメ、俺を倒せそうと言えば、ヒロリエルなんか俺よりずっと強いぞ? つまり俺はぜんぜん最強なんかじゃないんだい』


『う~ん。ひーたんはそもそもこの世界の生物じゃないからね~。イレギュラーな神界仕様のフレーム生命体だし。あとひーたんはウルちゃん以上にヒロにメロメロだろーから、マジな宿敵には成り得ないよね~』


『チチサマはひーたんが守るのれす…… クンスハ~♡』


『これだもん。まったく(苦笑)』


『さぁ~て、そんじゃ、お待ちかねの【海中遊覧】にでも行きますか~♪』


『いやったぁ~~♪』

『ピキュピキュ~♪』


 ヒロはレベルアップの実験も兼ねて、自らが搭乗する【流星4号★要塞★999迷彩】ごと500kmほど先にイメージした【ハナランド】に移動させ、その【ハナランド】内からさらに500kmほど先の上空に排出させてみた。


『おおおぉぉ、集中しなくてもわずか1秒ほどで1000km先にほぼ瞬間移動できたぞ♪ これはもう完全に実用レベルだな~。よし、これを【ハナランドワープ】と名付けよう! これから乱用するぞ~♪』


『さりげなく神業発動ね~。ほんとにもぉ~(苦笑)』


 そしてヒロは【連続ハナランドワープ】を使い、一瞬で【和能呉呂島】近海のテキトーな海上に辿り着くのだった。


『さぁ、この辺の海が魚種も豊富で良さそうだぞ♪ 野郎共~! 準備はいいかぁ~!!』


『あいあいさぁ~~♪』

『ピキュピッキュ~~♪』

『はいなのれ~~す♪』




 ヒロニウム製の【流星4号★要塞★999迷彩】がゆっくりと海に沈んでいく。


『おおおぉぉぉ、海中ですやん! 全然水漏れしませんやん! 今まで滝くぐりくらいでしか試したことなかったけど、さっすが【流星4号】、さっすが【ヒロニウム】、潜水行動もバッチリお任せだぜ~♪』


『すごいすごーい! 海の中進んでるよ~♪ ウルちゃん見て見て~、お魚よ~♪』


『ピキュピキュピキュ~! 【キラーモノノフ鯛】や【キラーロウニン平目】が舞い踊っているのでピキュ~♪』


『やっぱ海の中も魔物でいっぱいだなぁ~。よし、ついでに【テラース商会】で流通させる【食材】の確保もしておくか♪』


 ヒロは【スコープ】で旨そうな魔物をじっくりと物色し、インベントリ収納していった。


『ヒロぉ~、もっと右~ そうそう、そんでもーちょっと深く~』


『はいは~い』


『あーー、ウルちゃん見て見て! 【オーロラ流星クラゲ】だってさ~。ちれーねぇ~♪』


『ヒメさんあっち! 【ナナホシルリイワシ】の大群ピキュよ~! 何千万匹も集まってるのでピキュ~~♪』


『ホントだ! まるで大きな生き物みたいね~♪ ああぁぁ~~! イワシさんたちがめっちゃ襲われてる~~!』


『ピキュ! 【イソノカツオドリ】が空からダイブしてるのでピキュ!』


『んぬわぁ~、こんどは海から【マツオ芭蕉カジキ】、【タマサブロウ坂東イルカ】、【イチ座頭クジラ】、錚々たる顔ぶれがイワシちゃんたちを食いに食いまくってるわ~~! ヒメ感動♪』


『これもまた自然界のダイナミズムなのでピキュ~! 大迫力なのでピキュ~!』


『こんなの目の当たりにしちゃうと、やっぱ【捕食者】でありたいと切に思うわよねぇ。捕食される立場って、つらすぎるわ……』


『ヒメ何言ってんだよ、イワシだって【グレート甘エビの幼生】とか【ジェネラルホタルイカの幼生】とかのプランクトンを捕食しまくってるだろーに。この世界で捕食されない生物なんて人間くらいのもんだぜ~。あ、でも冒険者は魔物に捕食されたりするのか~』


『言い得て妙! ヒロ、言い得て妙よっ! その他カニバリズム系の件はここでは一旦置いときましょう! それにしてもやっぱワクワクが止まんないわねぇ~海中って♪』


『ヒメさん! 今度はあっちピキュ! 【鬼サカマタデーモンシャチオルカ】の家族が【エンジェル白クジラ】の赤ちゃんを嬲り殺しにしてるのでピキュ! ざざざ残酷ピキュ~』


『いやぁ~ん、鬼サカマタデーモンシャチオルカこわぁ~い。ヒロ~、エンジェル白クジラの赤ちゃん助けてあげよ~よ~』


『俺はシードーベルマンじゃねーっつーの。散々魔物狩りまくっといて今さら【かわいくて賢そうなのだけ助ける】なんて柄じゃねーよ~。自然界で起きてることなんだから、ほっとけばいいだろ~』


『でも、……ハナちゃんは助けたじゃないのよ』


『ハナは特別だ』


『そんなの矛盾してるじゃないの』


『ハナはひと目見てピンと来た系の即決一択の全力特別エコ贔屓的存在だ』


『……わ、わかったわよ~。勝手なもんよね~、人間なんて』


『ヒメ、人間が【勝手】をやめちまったら、それこそ【ロボ】だぞ。そもそもだな、』


『ヒロさんヒメさん!! こんどは【ギガンテスキラークリオネ】の大群が【エンジェル白クジラの赤ちゃん】もろとも【鬼サカマタデーモンシャチオルカの家族】を襲って食べまくってるのでピキュ~! す、す、凄まじい食物連鎖の嵐なのでピキュピキュピキュ~!!』


『………………』

『………………』


『ねぇヒロ、もーちょっと穏やかな海、ない?』


『自然界っつーのはな、どこへ行っても厳しいもんなんだよ~。つーかヒメ、元々おまえらが創造したんだろーに』


『むっきーー! 神にも色々いるんですぅー。わたしは生産系じゃないし、ほんのりはんなりふんわりほっこり系の崇められ系戦闘女神でしたー』


『はいはい、そーかそーか、分かったよ♪』


『あ~~、今ヒロわたしを見下したでしょ~! これはもープンスカポンを通り越してプンスカポンポンポンよ! しばらく根に持ってやるんだからっ! 覚えときなさい!』


『よくまぁそんなに【やられキャラ】全開のセリフ、次から次へとでてくるなぁ。別に見下してなんかないよ、機嫌直してよ、ね♡』


『んかっ…… ま、まぁいいよ~。ホントはそんなに怒ってないし……』


『よし、仲直り完了だ♪ そんじゃそろそろ帰りますか~。【スコープ】使って旨そうな魔物もたくさん確保できたしな♪』


『ピキュ~♪ 【鬼サカマタデーモンシャチオルカ】も獲ったピキュか?』


『いや、このあたりの奴は獲ってないなぁ。もっと遠くまで【スコープ】を飛ばして旨そうなのだけ厳選してみたよ~。ほれ』




■[F]グレート鬼サンマ           ×1000000

■[F]ダイダラサザエ            ×100000

■[E]グングニル毒バフンウニ        ×100000

■[E]ダイダラアワビ            ×100000

■[E]ギガンテスロブスター         ×100000

■[D]竜神タラバガニ            ×100000

■[D]ブリキング              ×1000000

■[D]ケイジーサケキング          ×1000000

■[C]アマテラス黒マグロ          ×1000000

■[C]アレクサンダーダイオウイカ      ×10000

■[C]トドーン               ×10000

■[B]アマテラス黒マグロブラック      ×10000

■[B]ネプチューンシロナガスクジラ     ×1000

■[A]ネプチューンシロナガスクジラクイーン ×100




『ピッキュ~~! 世界最大商社のご乱心なのでピキュ~!』


『いくらなんでもこの数は乱獲しすぎなんじゃないの~?』


『いやいや、それがさ、こんな数、目じゃないんだって! だってよく考えてみてよ、この世界の海で魔物漁なんてやってるやつ、ひとりもいないだろ? せいぜい浜に打ち上げられた死んでるか死にかけてるか、みたいなのを持って帰る程度だろ~。【スコープ】で半径500kmの海を見倒して確信したんだけどさ、この海にはな、も~信じられないくらいの魔物がウッジャウジャ、そうウッジャウジャいるんだよ! も~湧いてんの! 今回の漁獲量にしてもホントにチョロッとなんだって。例えるなら【鬼安の殿堂テラギガメガドンキッキでチロルンチョコ1個を手にしたくらい】なんだって! マジでマジで!』


『ふぅ~ん。まぁ確かに、陸地に比べると海の魔物は人間の驚異にさらされてないもんね~。あとそもそも海って広いし、魚類って個体数多そうだしねぇ。なるほど~。よし、今回の乱獲は不起訴とします! ヒロ被告、カツ丼代払って速やかにシャバに復帰しなさい!』


『カツ丼食ってねーよ、まったく~』


『ピキュピキュ~』





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