27日目 アンタクテダンジョンの始祖の王




 異世界生活27日目

 創生歴660133年5月8日[金]午前6時頃 【ハナランド】


 ヒロは徹夜明けのまま目覚めのハナを迎え、朝の追いかけっこを始める。

 すると


『ピキュピキュピキュ~! ウルも混ぜてなのでピキュ~』


 ウルも元気よく飛び出したのだが……


『……どしたの? ウルさん、その姿……』


 そこにはハナと全く同じ姿の真っ白い柴犬、白柴の姿があった。


『ひーたんが黒柴姿で遊ぶのがたのしそーだったピキュからウルも白柴に変形してみたのでピキュ~♪』


『いやぁ~、それにしてもウルさん、ヒロリエルに負けず劣らず見事に成りすましてるねぇ。近くで見ても生後2ヶ月の耳が立ちきってない柴犬の子犬そのものだよ~。さわった感じも毛並みまで再現してるしさー。前は3DCGみたいな仕上がりだったと思うんだけど、このリアルすぎる変身能力って最近身についたものなの?』


『レベルアップの成果なのでピキュ~♪ ウルはヒロさんから賜る膨大なエネルギーによって絶えず進化し続けてるピキュからなのでピキュ~♪』


『しかしこのクオリティって……もはや【完全変身能力】って感じだねぇ。もう人間に変身して店に立ってもバレないんじゃない?』


『たぶん余裕なのでピキュ~。今のウルの全力を注ぎ込めば、センタルスの町くらいなら、人も建物も道も砂粒も全部含めて完全再現できるくらいに成長しているのでピキュ~♪』


『こーーーわっ。ウルさん怖っ! 例えがエグッ! 完全に世界最強生物だねぇ~(笑)』


『まだまだなのでピキュ~。これでもヒロさんという遙か高みにいる師に振り落とされまいと必死なのでピキュ~。特に昨日のひーたんとヒロさんの模擬戦を目の当たりにしたウルは、自分の脳力の足りなさっぷりに実は物影でシクシクシクシク泣いていたのでピキュ~。なので今日も全力で精進するのでピキュ!!』


『あぁ~そっか、ヒロリエルとの模擬戦、ウルさんも居たもんね~。俺もあの模擬戦で目が覚めたっつーか、まだまだがんばらなくちゃなーって思ったよ。一緒に成長しような、ウルさん!』


『ピキュピキュピキュピキュピキュピキュ~!!!』


 そこへヒロリエルも黒柴姿で参戦する。


『おはようなのです! 遊ぶのです♪』


『おはよーヒロリエル~』

『ひーたんおはようなのでピキュ!』

『ひーたんおはよーなの~♪』


 そして3人はヒロに絡みつくようにじゃれ合いながら、ハナが疲れ果てるまで、【ハナランド】の【柴芝】の上を音速以上の速さで飛び回るのだった。





 スペシャルな運動を終え、食事と朝風呂も済ませたヒロファミリーは、ハナのねんねとともに通常業務を開始する。


『ヒロ~、今日は朝からガンズシティの建築物関係だっけ?』


『そーだねー。まずはソレだな』


『便器はどーするの?』


『便器配りはガンズシティの建築関係の段取りが終わってからマンバタン島に飛んでロデニロさんと話しする~』


『おっけー。んじゃ~さっそく行動開始ね♪』


『うえ~~い♪』


 ガンズシティ中央広場にヒロが姿を現すと、既に【ゴズ組】は全員集合していた。

 すぐさまヒロは予定を切り出す。


「みなさんおはよーございま~す。今日は敷地内の建築を始めたいと思うんですが、ちょっと提案がありまして」


 ゴズ組全員がヒロを見つめ、ふむふむと頷く。


「えっとですね、昨日俺が作った橋、ありますよね。あれと同じ方法で、各建築物の壁の部分だけを造っていこうと思ってるんですが、どー思われます?」


 ゴズ組から「異議なし」の声が飛び交う。


「ありがとうございます♪ それでまず、開拓推進課から請け負っている建物の種類と数を教えて下さい」


 この質問にはゴズがテキパキと答えた。

 センタルス開拓推進課からの注文は、敷地の入口の水堀側に民家を10~20軒、20人ほどで会議が出来るような集会所を1軒、建材の加工などをするための作業場を2~3軒ということだった。


「ゴズさん、建て方や様式に細かい指示は無いんですか?」


「まぁ特に無ぇな。今までのパターンだと、オレたち第一陣に最も要求されてるのは何より【外堀】、つまり安全の確保だ。そーゆー意味ではもう昨日のうちに達成しちまってる♪ そんで敷地内の建物についてだが、ようは第二陣が仮に暮らすための仮設建築物ってー感じだな。第二陣の構成は大工や土木屋が中心で、オレらが建てた仮住まいで一緒に暮らしながら、本職の増員として本格的に建築を始めるんだ。だからあんまり気にしねーで建てちまえばいーのさ♪」


「なるほど。だったら俺たちが住みやすいような家を建てちゃいましょう♪」


「おぉ、そんなノリでいいと思うぜ~」


 ヒロはゴズ組の面々と相談しながら、とりあえず住居から建てていくことにした。

 既に前日の作業で敷地内の大体の区画整理は終えており、石畳の道路も通っている。

 あまり中心部やメインストリートの近くに家を建ててしまうと、後でなんだかんだ言われるかも知れず面倒だ、ということで、住居は本来の指示通り外堀のすぐ内側、つまり町の外れに建てることとなった。

 ヒロはフレームで適当な間取りの壁を生成し、その中に昨日造ったコンクリート橋と同じ材料を錬金していく。

 そして各種魔法を施し、あっと言う間に【屋根のない家】を完成させた。


「いやぁ~、改めてこの目で見ると、信じられねぇ技だねぇ♪ こりゃ神業だぜ~」


「玄関や窓の開口部にちゃんと木枠が収まるような溝まで入れてくれてるじゃねーか♪ こりゃ~後の仕事が楽で助かるぜぇ」


「天井の切り方が斜めになってんのも秀逸だぜ。屋根も葺きやすいし雨の流れも作りやすい」


「こりゃよ~、第二陣の奴らが来た時、揉めんじゃねーかぁ? あんまり立派な仕事されるとオレらの仕事が無くなっちまうってよ~♪」


 ゴズ組の反応は絶賛と呼べるほどの高評価だった。

 ヒロは念入りに修正点などを相談しながら2軒、3軒と、屋根なし民家を建てていった。

 そしてわずか2時間ほどで20軒の屋根なし民家と、巨大な屋根なし集会場が完成する。


「俺はここまでで、一旦別の仕事に向かいます。みなさんは今から全ての建物の屋根葺き工事に取り掛かってください。材料はそこに積んである【デーモンウォルナット】です。ご覧の通り山ほどありますのでジャンジャン使ってくださいね~。ウルさん軍団は今日もみなさんの味方ですから、相談しながら建築を進めてください」


 ゴズ組メンバーが一斉に活気を帯びる。

 次々と段取りが組まれ、各班が持ち場を振り分け散っていった。


「あ、ゴズさん、」


「ん? どーしたヒロさん」


「ちょっと試してみてほしいプレゼントがあるんですが」


「なんだよ改まって~」


「見てもらっても分からないかも知れないんで、とりあえず使ってみてもらえますか?」


 そう言うとヒロは、近くの空いた区画に民家と同じ工法で、大人ひとりが入るような小さな小屋を3つ建造し、そのひとつにゴズをいざなった。


「なんだいヒロさん、こんな小さな便所みてーな建物、なんに使うんだい?」


「おぉ、アタリですよゴズさん、これは便所です♪」


「ん~でもヒロさんよ、昨日も言ったと思うんだが、便所は臭うからよ、ずっと向こうの川のほとりに作ってあるんだよ。こんな住居の近くに建てちまうと、いくらヒロさんの立派な造りでも臭いは漏れ出しちまうだろ? それといちいち川まで糞を捨てに行かなくちゃなんなくなる。悪ぃけどこの建物は倉庫かなんかに使わせてもらうってことで勘弁してもらえねぇかな……」


 ゴズが申し訳無さそうに訴える。


「いやいや、それが大丈夫なんですよ。なぜなら、この魔道具を使うからなのです!」


 ヒロは嬉しそうに【亜空間転送型腰掛式便器★ダシテキエールRZ2座EX】をそっと便所予定の建物の中に設置した。


「これ……は何なんだ?」


「説明しましょう! この亜空間転……もとい、【魔法便器】という道具はですね、この蓋を開けて、この部分にこっちを向いて座り、大なり小なりの用を足すとですね、自動で勝手に糞尿を魔法分解してくれて、なおかつ尻の穴や尿道の先からも汚れを全て取り去ってくれる、夢のようなアイテムなんですよ! さらにはクサいニオイも同時に魔法分解してくれます。つまりですね、この道具で用を足しさえすれば、この町から糞尿の臭いは一切無くなってしまうんです! ささ、まずはゴズさん、試してみてください♪ 無理矢理にでもひり出してみて、使用感を聞かせてください~♪」


 嬉々として排便を促すヒロとは対象的に、ゴズはとても懐疑的で、ただただ複雑な表情を浮かべていた。

 しかし、ヒロが発するあまりの圧に折れ、素直に説明を聞き直し、恐る恐る中に入って蓋を開け、衣類を降ろし座ってみる。

 この間ヒロは、ドアの間口に大きな布をかけ、ゴズのプライベート空間を守っていた。


 そして、ゴズが【魔法便器】に座って1分後。


「う…… う、うわぁぁぁあああああ!!!! なんじゃこりゃぁぁあああ!!!」


 ゴズの絶叫がガンズシティに轟き渡った。

 そしてさらに暫くして、布の向こうからゴズがゆっくりと外に出てくる。

 外では、満面の笑みのヒロと、ゴズの絶叫を聞きつけて飛んできた数人の男たちが、息を呑んで彼を見つめていた。


「ヒロさん…… あんた、すげえ男だとは思っていたが…… こんなとんでもないモンを手に入れて来ちまう男だったとは…… オレは…… オレは…… もうあの頃のオレに……」


「あの頃のオレに?」


 ヒロがニヤニヤしながら尋ね直すと……


「戻ることが出来なくなっちまったぁぁぁあああああ~~~~~!!!」


 ゴズはもう一度絶叫した。


「ど、どーしちまったんですかゴズさん、ヒロさん、これは一体何が起こって……」


 状況を把握できていない男たちは、狂ってしまった様子のゴズを心配し、不安を隠せない面持ちでオロオロと立ちすくむ。

 ヒロは満面の笑みを浮かべ、ただウンウンと頷くばかりだった。


 10分後


 ヒロの提供した3棟の便所の前には行列ができていた。

 辺りには歓声とどよめき、そして酒でも入っているかのような弾んだ声の会話が飛び交っていた。

 ヒロは引き続きニンマリしながら頷くのみで、【魔法便器】についての説明はゴズを中心に体験者たちが夢中で代行してくれている。

 人の感動は伝染し、ゴズ組全員が魔法便器を体験し終えるのにそれほど時間はかからなかった。


 魔法便器3 そして伝説へ


 ヒロはさらに覇道の一歩を踏み出したのだった。





「じゃあ後はよろしくおねがいしますね~」


「ヒロさん、行ってらっしゃ~い!」


 ゴズ組を感動体験させたヒロは、みんなに見送られながらガンズシティを後にし、一旦ハナランドに落ち着いていた。


『ヒロ~、もうゴズ軍団のあなたを見る目が常軌を逸してたわよ~。なんかもー【崇拝】って感じだったわねー』


『やっぱトイレ事情って大事なんだな~。俺、侮ってたよ。トイレを』


『もう立派な【トイレの神様】よねー。この大騒ぎをこれから世界中で巻き起こすのかと思うとアタマ痛くなるけどね~』


『まぁそのへんのことはロデニロさんに任せちゃうよ。俺は影から物資を提供するのみさ。ただ、さっきの大騒ぎを見て確信したよ。この【魔法便器レンタルサービス】は、確実に需要があるだろうってね~』


『そーねぇ。あんまり物語的なものでは語られないテーマだけどさ、地下埋設下水管網と浄化設備が整う前の人口密集地では、糞尿臭と不衛生が最も深刻な問題で、何なら【クサいニオイを元から断つヒーロー】ってのが1番民衆から愛される偶像なのかも知れないわね~。ヒロ、就任おめでとう♪』


『いやいや、あくまでも商売の一環だからね。ただ、俺がサポートしたい庶民の生活ってのにはいくつか目標があってさ、そのひとつが【清潔】だから、満更でもないかなぁ』


『他にはどんな目標があるの?』


『あと大事なのは【健康】と【安全】だね。【健康】にはもちろん【飢えない】も入ってるし、【安全】には【戦争や侵略に巻き込まれない】も入ってる。で、ざっくりした大きいテーマで【健康・安全・清潔】。この3つが揃ってさえいれば、人は身分が低くても、たとえ誰かに支配され続ける人生だったとしても、毎日を楽しく謳歌できると思ってるんだ。知識や快楽はそのあとの話かな~』


『ヒロ、あなたって…… とても異世界転生者とは思えない、地味で、目立たなくて、カッコ悪~い野望を持ってるのね~。大好きよ♡』


『と、突然なんだよヒメ~。落として上げるみたいな~。う、嬉しいじゃないか~♡』



(ふふふ。ほんと素敵よ、ヒロ♡)



『ねぇヒロぉ~ ところでさ、あの【魔法便器】って、悪用されたりしないの?』


『悪用とは?』


『例えばぁ、人の死体切り刻んで捨てられたりとか、ゴミを大量に捨てられたりとか、魔法便器そのものを盗まれたりとか、そんな感じの悪用』


『そーだなぁ、あの便器には設定項目があってさ、まず、貸し出す場合は、【糞尿のみ受付】にして、オプションで【吐瀉物】くらいはオーケーにしておけばいいかな~と。あと盗難に関しては、あの便器そのものがフレーム技術のカタマリみたいでさ、置いた接地面に対して位置情報を固定できるようになってるんだよ。だからそのロックさえしてしまえば、絶対動かせなくなるみたい♪』


『さすがアルロライエちゃんの貢物ね~。完璧だわ♪』


『だよねぇ~♪』




ピロン


 ヒロのスクリーンにテキストのみのダイアログボックスが現れた。そこには


《イエ~~イ (*´∀`*)ノシ 》


と書かれており、その後暫く消えなくて困った。




『……それでヒロ、もう【テラース商会】に出発するの?』


『おう、サクサク行くぜ~』


『あいあいさ~!』





 ヒロはすぐにマンバタン島テラース商会に飛び、事務所に居たロデニロに【魔法便器】を披露し、絶叫と感嘆の反応を受けるも、“その反応はもう飽きた”とでも言わんばかりにサラリと受け流した。

 そしてさっさと商売の話に移るのだった。


「もう【魔法便器】の素晴らしさは説明不要かと思いますが、今後、この夢のような便器をですね、有料のレンタル品としてテラース商会を通じて配りたいんですよ」


「おぉぉ、あえて所有権は誰にも渡さないということですね。いい考えだと思います」


「で、基本的にはレンタル料金は非公開……とか、【時価】とかにして、庶民からは1台あたり毎月千イエンほど。貴族や王族、豪商や金持ちからは毎月100万~1000万イエンほど貰っておけばいいんじゃないかなぁと。まぁあまり厳密には決めないで、相手の懐具合を伺いつつの料金設定でいいとは思うんですがねー。ロデニロさん、どう思われます?」


「大前提としてまず、ヒロさんは貧しい庶民からは儲ける気がないと思っていいんですよね?」


「はい、まったくその通りです。金は金持ち相手に稼げばいいと思っています。なんなら庶民はタダでもいいかと」


「ふふ。何のためらいもなくキッパリ言い切るところがヒロさんらしくていいですね♪」


「単に、余ってるところから貰えばいいってだけのことですよ~」


「大賛成です。それで、貸し出す場合なんですが、利益を重視して金持ちばかりに貸し出す……というのも、もちろん……」


「ナシです♪」


「でしょうね~♪」


「もっと言えば、金持ちたちが噂でも聞きつけて“貸せ貸せ”言ってくるまでは、貧しい層の人たちだけに提供してほしいんです」


「ほう、つまり…… このサービスは、そもそも金を儲けるためではない?」


「はい、インフラ整備です。糞尿のニオイだけでなく、糞尿そのものから発生する不衛生な環境、バイ菌の繁殖、伝染病の蔓延、それらを根絶するのが狙いです。たくさんの労働者階級の人達の暮らしからそれらの問題が減っていけば、それだけ活気も増し、経済も活性化するでしょうからね~」


「……これはまた、壮大な話ですね~」


「まぁ、規模を考えると壮大ですが、今のところ予定している具体的な行動は、凄い便器をみんなに安く配るってだけですからねー。そんなに難しい話ではないです♪ あ~あと、便器がある程度行き渡ったら、格安で食事の配給とかもやりたいですねぇ~。あと、格安での住宅の修理とか。あと孤児院の運営とかも♪」


 ヒロの話をここまで聞いていたロデニロが、少し黙り込んでから喋りだした。


「…………ヒロさん、ちょっといいですか?」


「はい?」


「その、【魔法便器】のレンタルサービスから続くヒロさんのやりたいことなんですが……」


「あれ? ダメですかね~?」


「いえ、そうではなく、別の組織として動いてみてはどうですか?」


「別の組織……」


「はい。話をお聞きするかぎり、ヒロさんのそのプロジェクトは、明らかに【貧しく弱い人たち】を対象に考えられているように感じられます」


「まぁ、確かにそうですね。言い換えれば【たくさんの人】ですが……」


「はい、分かります。でしたら、その【貧しく弱い庶民の味方】とも言えるような組織を【テラース商会】とは別に設立して、専門組織として思い切りやってみてはどうですか? もちろん人員も資金も戦略も【テラース商会】と裏では同一の組織ということで進めます。ただ、お話を聞く限り、【金持ち相手の商売組織】と【弱者救済を軸にした組織】は、表向き分けた方がどちらもやりやすいと思うんです」


「……ロデニロさん、それ、イイですね♪ その方向で行きましょう!」


「ありがとうございます。ではまず、【魔法便器レンタルサービス】を運営する組織名を考えてください」


「うぅぅ~~~ん…………」


 ヒロは3分間黙った。そして


「よし、新しい組織の名前は【なんでも屋】にしよう! これくらいの砕けた名前だと、みんな気軽に立ち寄ってくれそうだもんね♪」


「了解です。それで、【なんでも屋】の組織運営は誰に任せますか? それともヒロさんが直接指揮を取ります?」


「テラース商会はロデニロさんたちに任せてますけど、【なんでも屋】は俺も口出ししていきたいなぁ。ただやっぱり誰か常駐してくれる担当者は必要だよなぁ。……あ、ロデニロさん、あいつらどうしてます? ラモンズとルリドーのふたり!」


「あぁ、あいつらなら、まだこの事務所で講習中ですよ~。いろいろとノウハウを叩き込んでいる最中です♪」


「でしたら【なんでも屋】の代表はあいつら2人にします! 悪いんですけど、【魔法便器レンタルサービス】の運営を任せる前提で、改めて教育してやってください」


「そのへんはお任せください。ヒロさんのやりたい事業のイメージは受け取ったつもりです。抜かりなく、あと1週間もいただければ、お渡し出来るところまで育てておきますよ♪」


「ロデニロさん、ありがとうございます! これ、お礼と言っては何ですが、この事務所も含めたテラース商会全拠点に3つずつほど寄贈しますので、慣れてもらいながら自由に使ってください♪」


 ヒロは【魔法便器】30台ほどを、【テラース商会マンバタン本部事務所】の倉庫に並べた。


「あとは適当にお願いします! 今のところ極秘アイテムですので、そのあたりよろしくおねがいしますね~♪」


「はいヒロさん、ひと通り了解しました♪」


 ヒロはニコニコしながらフッとハナランドに消えた。

 そして、ヒロの消えた事務所にひとり残されたロデニロは、思いを巡らせる。


(……ふふ。それにしてもおもしろい人だよ。貧しい弱者に協力する? 孤児院をつくりたい? そんな話…… スラムの孤児院で糞の臭いにまみれて育ったオレたちが反対するわけないだろ♪ ふふふ。さて、これから孤児院仲間のサリンザを呼んで【魔法便器】で驚かせてやろう♪ 腰抜かすだろうなぁアイツ。ふふふふふ)





 ハナランド。


『なんかうまくいきそうで良かったね~ヒロ』


『そーだな。とりあえずサービス開始までは漕ぎ着けられそうだよ~』


『この後は【ガンズシティ】の現場に戻るの?』


『いや、この後は…… レベル上げをしようと思っとりやす!』


 その刹那、ウルが元気に飛び出した。


『ピキュピキュ~! 待ってましたなのでピキュ~ ついに、ついに、久々のレベル上げなのでピキュピキュピキュ~! 長かった……。長かったのでピキュ~! ヒロさんともあろうものが最近じゃ【買い物】や【町作り】に明け暮れるというなんとも侘しいスロー生活! このままいったら隠遁部屋にでも引きこもって【シム列車で行こうぜスカイラインズシティA】でも始めるんじゃないかと、ウルは心配で心配で、夜な夜なひーたんに相談がてら賭けUNOを繰り返した結果、多額の負債を抱えてしまったのでピキュよぉ~~! アンタの娘にカモられたんでピキュよーーー!!』


『ウルさん……なんかごめんねぇ。ただ、買い物や町作りも大事なことなんだよ~。あと賭けUNOはほどほどにね~(苦笑)』


『うんにゃりのっとでピキュ! 異世界転生者としてこの世に生を受けたからには、本来の【お色気魔王を奴隷化契約で狂い咲きサンダー爆乳都市生活者の夜は無限る~ぷ♡】や【陰惨勇者にパーティ追放されたけどその場で瞬殺してやったんでもう物語終了ですが何か?】や【クラス全員異世界転移かと思いきや地球まるごと異世界転移だったので何も変わらなかった件】や【とある悪役令嬢が居酒屋と食堂経営でありふれた成り上がり下剋上に本気だすのは間違っているだろうか】みたいな覇道を歩まないと異世界転生者冥利に尽きないのでピキュよ! さぁヒロさん、ウルと一緒に……レベル上げの向こう側へ、行くのでピキュピキュピキュ~!』


『ありゃ~。ウルちゃんかかっちゃってるわねー。よっぽどヒロとレベル上げしたかったのね~』


『ごめんね~ウルさん、今日はガッツリ魔物狩るから許してよ~』


『ピキュピキュピキュ~♡』


 ウルの機嫌は光の速さで回復した。


『さて、そんなわけで今日の狩場なんだけど…… ヒメ、【テラスポ】ある?』


『モチあるわよっ♪ テラスポはわたしの数少ない愛読書なんだからね~』


『ふつースポーツ新聞を【愛読書】とは言わないけどね~』


『なによ~、テラスポには文芸コーナーもあるんだから! わたしが4コマ漫画と芸能ゴシップしか読んでないみたいに言わないでよね!』


『わーったよ~ ピリピリすんなってばー ささ、いつもの【狩りコーナー】教えてよ♪』


『もぉ~しょーがないわねぇ~。んじゃー行くわよ~。まずは…… 【乗っ込みの季節到来! 和能呉呂エド沖の釈迦紅蓮真鯛はメガコマセサビキふたつテンヤで攻略!】ってゆーのがあるよ♪』


『また釣りかよ。次~』


『ん~と、【ついに出た! 和能呉呂シガ湖で7メートルオーバーの超ランカー暗黒大口バス! 奇跡のディープラバージグとタックル一挙公開!】は?』


『でかっ 次~』


『あ、これは? 【イスタ島はエギングパラダイス!? 根がかり回避の神しゃくりでアオリクラーケンを連続ヒット!】』


『次~ ……ん?』


『お、なに? ヒロ、アオリクラーケン、狩りたいの?』


『いや…… イスタ島って、どっかで聞いたことあるよーな……』


『ヒロ、冷たいわね。あなたがゴッドマン軍団を放り込んでサバイバル生活やらせてる島でしょ~に』


『……あぁ~~、あぁ、はいはいはい、もちろん分かってたよ~。いやちょっとさ、あいつら元気にやってっかなぁ~なんて思ってさ。ヒメさぁ、アオリクラーケンって、浜まで上がってきたりすんのかな?』


『知らないわよそんなの~。【さかなサマ】にでも聞いてみればー?』


『誰だよその【さかなサマ】って』


『あぁ、神界でめっさごっさ海洋生物に詳しい変なグループのリーダーよ。確か、【さかなチャン】と【さかなドン】と【さかなタン】と【さかなウジ】の4人を引き連れてて、5人揃って【さかなンジャー】とかなんとかのたまってる輩なの。まぁマニア系タレントねー』


『ヒメ、もう十分だ。次の情報たのむ』


『は~い。おっ、これはいいんじゃない? 【アンタクテ大陸に封印されたダンジョンが!? 前神未到の手付かず地獄はサタンも恐れる始祖の王の巣だった!?】』


『それだっ! 行くぞ!』


『お~~~♪』

『ピキュピキュピキュ~~♪』


 ヒロたちはアンタクテ大陸に向かうのだった。





 アンタクテ大陸中央 極点付近


 【ウルさんワープ】を使い、アンタクテ大陸に所要時間ゼロで飛んだヒロたちは、現地駐留中だったウル分体と【流星4号★要塞★999】の中で情報交換に勤しんでいた。


『ウルさん、やっぱ極点だけあって、外は寒そうだね~』


『ピキュ! ウルは絶対零度でも平気なので気にならないのでピキュが、外はマイナス80度くらいなので、生身の生物はたとえ魔物であってもつらかろうなのでピキュ~』


『そーするとやっぱこの【流星4号★要塞★999】は最高だよな~。前後左右上下全ての壁が3m厚のメガミウム製だし、中の密閉空間の空気は絶えずインベントリを介して循環し、温度も湿度も気圧も好き放題に調整できるんだからな~』


『安心安全にもほどがあるわよね~』


『で、ウルさん、ここアンタクテ大陸でさ、なんかこう、“地下にすげー魔物いるっぽいなぁ”とか感じた時ある?』


『それが…… 1度も無いのでピキュ~。この大陸で倒したことがあるのは【ペンギン系魔物】各種と、【アザラシ系魔物】各種、あとは……』


『シロクマ系でしょ♪ デーモンホワイトグリズリー的な♪』


『ヒロー、シロクマは北極よ~』


『……い、いやいや、ここは異世界だから逆になってるのかもな~なんて思っただけだよ。マジでマジで……』


『はいはい。で、ウルちゃん、あとはそれよりショボい魔物ってこと?』


『というよりピキュ、みんな海岸沿いや海にいるのでピキュ~。こんな内陸の極点付近には目立つ魔物はいないのでピキュ~』


『そーなんだー。じゃあテラスポの記事はガセだったのかもなぁ』


『ちょっと待ってよヒロ、テラスポっていったら【信用】と【エロコーナー】で持ってるような老舗のスポーツ紙なのよ? 情報がガセだなんてあるわけないじゃないのよ!』


『そうか。悪ぃ』


『てゆーかさぁ、ヒロの【スコープ】ってけっこーな距離まで見られるんじゃなかったっけ? 地中とか、ざっと見てみたりしたの?』


『あ…………っと、地表が延々と真っ白でさ、“チレーだなー”って見とれてたわ。まだ探索してない~(笑)』


『ズコ!』


 ヒロは自分の居る極点を中心に、地下へ【スコープ】を飛ばしてみた。


 すると


『あ、いた♪』


『ピキューーーーー!』


『い、“いた”ってヒロ、どんな感じ? ダンジョンの入口は? 中のやつはどんな面してんの?』


『んーとね、この真下。極点の真下の地下2000mくらいのところに馬鹿でかい大空洞があるわ。しかも4つ』


『よっつ~? で、その4つの大空洞はつながってるの?』


『なんかさ、よぉ~く見ると、細ぉ~い通路みたいな穴でつながってるんだよなー。あれ? いや、通路はあるんだけど……埋まってて行き来は出来ないみたいだわ』


『埋まってる通路~?』


『うぅ~ん。よく分かんない作りのダンジョンだなぁ……』


『ヒロさん! ダンジョンの入口はどこピキュか? ウルが偵察に潜ってくるのでピキュ!』


『それがさぁ~』


『ピキュ?』


『そこまでの経路が見当たらないんだよー。地下2000mまで全く』


『えぇ~~? 入口もダンジョンも隙間も無いの~!?』


『無いなー。さっきから何度も確認してるんだけど、地下2000mまでは生物のいそうな穴なんかは全く見つかんない。水脈とかガス溜まりみたいなのが点在してるだけだ。ただ、地下2000mの4つの大空洞からさらに200mほど深いところには、【魔素クリスタル】っぽい鉱脈がドッサリ、それゃ~も~ドッサリと広がってんな~』


『そっか~。【魔素クリスタル鉱脈】はあるんだね~。あ、4つの大空洞、そこには魔物の気配とかあるの?』


『気配もなにも、4つともにウジャウジャ蠢いてるっつーの。しかも今までのダンジョンと違って、ひとつの大空洞に1種類しか居ない。だから魔物の数は数え切れないくらいなんだけど、種類は4種のみだねぇ~』


『そいつらってどんな魔物なの? ペンギンぽい? アザラシっぽい?』


『それがねぇ~、なんか【人型】っぽいんだよねぇ。4種とも二足歩行してる。あと、みんな身長3~5mくらいある。高身長のマッチョ軍団だなぁ』


『そ、そんな……人間みたいな魔物が……存在するなんて……』


『いやいやヒメ、過去の例で言うと【マンバ毘沙鬼門天】、【マンバデーモン】、【マンバ朱天童子】、【マンバ不死命王】、【マンバサタン】、【ウルルデーモン】、【ウルル量産型サタン】とかはみんな【人型二足歩行】だったぞ。インベントリに綺麗な死体あるしなー。あとよく考えてみろよ。【ゴブリン】だって【人型二足歩行】の魔物だろーが』


『う…… 確かに言われてみれば……』


『だからまぁ、その姿については驚くこともないんだけどさ、問題は…… コイツらがいったい何処からこの地下大空洞にまで辿り着いたのかってことだなー』


『うぅぅ~~~ん』

『ピキュ~~~ン』


『あ! そうだ、ヒメ、テラスポの記事、なんか【始祖】だの【封印】だの言ってたよな』


『あぁ~はいはい、【アンタクテ大陸に封印されたダンジョンが!? 前神未到の手付かず地獄はサタンも恐れる始祖の王の巣だった!?】って書いてるわね~』


『……そうか! つまり、こいつらは【封印された始祖の王】ってことなのか……』


『ヒロ、その意味、わかるの?』


『いや全然わからん』


『だよねー』

『ピキュピー』


『わからんから、とりあえずこのまま狩ってみる』


 ヒロは2000m下方の1体の魔物に向けて魔法を発動した。



(フレーム)ピ(物質変……!!!


『あああああああーーーーー!!!』


『ど、どーしたのよヒロ!?』


『避けられた! ヒメ、あいつ避けやがった! 俺のフレーム魔法が華麗に避ーけーらーれーたーーーー!!!』


『ええええーーー!?』

『ピキュピーーー!?』





 5分後


(フレーム)ピ(物質変化★水)(インベントリ収納)※この間0.01秒


『ふぅ~。一時はどーなるかと思ったぜ~。まさか0.1秒ほどの時間の中で敵対的フレームを感知して避けやがるほどの猛者がこの世界にいやがったとは……』


『……でも結局倒せるようになったんでしょ?』


『うん♪ ステ値フル稼働するイメージで超がんばったら0.01秒くらいで魔法打てた。そしたら避けられずに倒せた。エヘ♪』


『なにが“エヘ♪”よ~。で、そのまま乱獲が始まっちゃってるってことね~』


『うん。でもこいつらさ、0.01秒砲でも時々避けかけやがるんだよ~。おかげでこっちはやや大きめのフレーム固定するハメになっちゃってるんだ。今までこんなに倒し辛かった魔物はいなかったから、ある意味、最強っちゃ~最強だな~』


『ヒロさん、そいつらから反撃の気配とかは無いでピキュか?』


『今んとこ無いなー。カンの良さそうなこいつらも、2000m先は感知できないっぽい』


『そーなのでピキュか~。ぜひとも1度、戦ってみたかったのでピキュ~』


『いやウルさん、そんなことしなくてもヒロリエルの方が断然ダントツ強いから。ヒロリエルに稽古つけてもらった方が遥かに有意義だと思うよ~』


『そーだったのでピキュ! ウルはひーたんのデタラメな強さを失念してたのでピキュピキュ~』


『あーでも、もしウルさんがどーしてもこの【始祖の王軍団】と戦ってみたいって思うんなら、俺がもうちょっと狩ってから後で現場まで運んであげてもいいよ?』


『ホントピキュか~!? ぜひぜひお願いするのでピキュ~!』


『ヒロってば、そんな安請け合いして…… ウルちゃん危なくないの~?』


『ん~~、多分ウルさんなら勝てると思うんだけど…… なんせ俺自身がコイツ等と近接戦闘してないからなぁ。もし未知の……目からウロコ的な攻撃繰り出してくるよーなら、どーなるかは俺にも全くわからんが』


『そんな無責任な~! ウルちゃんは大事な家族なのよ! 殺られちゃうかもしれないんなら行かせちゃダメでしょ~。安全第一よ! 【大鳴門橋を叩いて渡る】はあなたの座右の銘でしょ!』


『そ、そーだったかな……。いやまぁ、俺も【スコープ】で逐一観戦するからさ、危なそうだと思ったらすぐにインベントリに回収するし、大丈夫だと思うよ?』


『ピキュピキュ! ウルは万が一殺られたとしても、その瞬間に分裂体のひとつとしてウルネットから切り離され、蓄積データのみ回収されるようにうまく出来ているのでピキュ~。ウルにとって【ウル分体ひとりの死】は、もはや新陳代謝のようなものなのでピキュから全然深刻じゃないのでピキュ! だから戦わせてほしいのでピキュピキュ!!』


『まぁ、そーは言うけど【ウル分体ひとり】もウルさんに変わりはないよ。いざとなったら俺が絶対死なせない。だから思いっきり戦っておいで♪ だってウルさんは強者と戦いたいんだろ?』


『ピキュピキュピキュ~ ヒロさんは心の友であり師であり父なのでピキュ~! 感謝感謝で感謝の暴風パニックなのでピキュ~! もちろんこの感謝は【平成の売れっ子等身大アーティスト達が乱用に乱用を重ねたマイルドスイート感謝】よりも重厚かつ濃厚、そしてメガミウム成分マシマシマシマシマシの【アルティメットスパイシー感謝】なのでピキュ!!! ウルは……やったるでーなのでピキュ~!!!』


『おぉ、ウルさんいい面構えになったじゃないか! 分かったぜ! そのまま暫く待機しててくれ!』


『ピキュピキュピキュ~♪』





 二時間後


『ウルさ~ん、そろそろ敵の数も減ってきたしデータも揃った。そろそろ行くかい? ただ、情報はしっかり頭に入れて行くんだよ~♪ ほれっ』



■冥界王ハデス

テラース由来の魔物の始祖であり最強種。S7級。【器用富豪のハデス】の異名を持つ。

体長:357cm 体重:393kg

備考:始祖四王の1種。物理S5 魔法S5 の万能バランス型。体色は褐色。最高純度の魔晶を体内に3つ持つ。敵対的フレームを察知する。物理耐性・魔力耐性・回避速度・再生速度が極めて高いが不死ではない。飛行能力あり。



■混沌王ミラ

テラース由来の魔物の始祖であり最強種。S7級。【終天螺旋のミラ】の異名を持つ。

体長:304cm 体重:280kg

備考:始祖四王の1種。物理S3 魔法S6 のバトルウィザード型。体色は白色。最高純度の魔晶を体内に3つ持つ。敵対的フレームを察知する。物理耐性・魔力耐性・回避速度・再生速度が極めて高いが不死ではない。飛行能力あり。美女。



■煉獄王カイム

テラース由来の魔物の始祖であり最強種。S7級。【プラズマカイム】の異名を持つ。

体長:451cm 体重:721kg

備考:始祖四王の1種。物理S6 魔法S3 のパワー&スピード型。体色は朱色。最高純度の魔晶を体内に3つ持つ。敵対的フレームを察知する。物理耐性・魔力耐性・回避速度・再生速度が極めて高いが不死ではない。飛行能力あり。



■滅神王ヌガヌガ

テラース由来の魔物の始祖であり最強種。S7級。【縮退器ヌガヌガ】の異名を持つ。

体長:515cm 体重:920kg

備考:始祖四王の1種。物理S6超 魔法S1 の超パワー型。体色は漆黒。最高純度の魔晶を体内に3つ持つ。敵対的フレームを察知する。物理耐性・魔力耐性・回避速度・再生速度が極めて高いが不死ではない。飛行能力あり。



『なんか、人知を超えた未知の謎攻撃とか、不死とか不滅とか完全復活とか、やる気無くすよーな反則級のふざけた加護とか初期設定も無いっぽいぞ! 生物としてステータスは無茶苦茶高そーだけど、こっちもステ値振り絞ってゴリ押しすれば勝てそうだわ~。数も残り1体ずつまで減らしたから、そろそろ送るね~♪』


『ピキュ…… なんか、覚悟してた【ウル生を賭けた死闘】みたいのと違うピキュ……』


『ん? なにが違うって?』


『ヒロさんちょっと過保護がすぎるのでピキュ! 各種データの公開とアドバイス、さらにはウジャウジャ蠢いていた数を各洞窟残り1体まで削ってタイマン状態のお膳立て、そしてインベントリによるバックアップ……。これじゃ【競技】みたいなレベルまで落とし込まれてスケールダウンしてるのでピキュ~! 味気ないのでピキュ~、ヒリヒリ感減衰なのでピキュ~、男の殺し合いストーリーとしてヴァガボンド感が足りないのでピキュピキュ~!』


『まぁまぁウルちゃん、ヒロだって意地悪して環境整えたんじゃないんだから許してあげて。ね♡』


『ウルさんの気持ちも分かるんだけどさぁ、実際にアイツらと近接戦闘するのはウルさんが初めての相手になるんだし、もし1体だけでも十分満足できる強敵だったらラッキ~でしょ? 逆に相手にとって不足ありありだったら、気を取り直してヒロリエルと修行に励めばいいじゃないか♪ ね?』


『ピキュ~~。ふたりにそー言われると、なんだかそんな気になってくるのでピキュ~。よしピキュ! ウルは全力で残りの4体と戦うのでピキュ! ヒロさん、ウルを戦場に送ってくんなましなのでピキュピキュ~!!』


『さすがだ友よ! 相手はよく分からんが【始祖の王】! フルパワーで行ってこーーーい! インベントリ!』


 ヒロはインベントリにウルを収納すると、地下2000mの4つの大空洞のひとつ、【冥界王ハデスの間】にそっと配置した。





 突として【冥界王ハデス】の前に、今まで存在しなかった【敵】らしき戦力が現れる。

 ハデスは思わず口を開いた。


「なんだオマエは。つい先刻までワレの同胞を次々と消し」


 ハデスがここまで話した時、10mほど離れた場所にふるふるしていた漆黒のカタマリが変化を見せる。

 技が言語化されることもなく、予備動作もなく、黒く丸い戦士は戦闘を開始した。



 【神速変色[完全透明]】

 【神速分裂[100体]】

 【神速移動[包囲]】

 【神速合体[球体密閉]】

  メガミウムメイデン[10000刺突]



 瞬刻……

 ハデスは呻き声ひとつこぼすこともなく、串刺しになっていた。



 数秒後、ヒロは【ハデス[ただのしかばね]】をインベントリに収納した。


『ただいまでピキュ~♪』


 ウルは飛びつくようにヒロの胸に収まる。


『いやぁ~、見事だったよウルさ~ん。瞬殺だったね~♪』


 ヒロは胸元でウルを抱えて撫でながら、やさしく労う。


『ウルちゃん完勝おめでとぉ~♪ なにより無事でよかったわ~』


『ピキュピキュ! 楽勝だったのでピキュ~。ただ、この楽勝劇は、それまでのヒロさんによる【うんざりするくらい幾度となく繰り返されたフレーム構築からの魔法瞬殺攻撃】があったからなのでピキュ~。ハデスってあいつはヒロさんの攻撃パターンを目の当たりにし過ぎた結果、フレームでタゲされることにばかり用心してピリピリモードだったのでピキュ~。だから物理攻撃オンリーのウルに対して立ち尽くすのみの惨憺たる結果に終わったのでピキュよ~。ヒロさんの【鬼前戯】が無ければ、苦戦してたかも知れないのでピキュ~。とは言え結果は結果ピキュ。ウルの【挨拶代わりの戦闘ルーチンその1】であっさり勝てて良かったのでピキュ~♪』


『ウルさん強くなってるよ~。小手調べの初手があの攻撃じゃ、大概の相手はかなわないだろー。だっていきなり完全透明化してさ、次の瞬間には大量に分裂、そのまま囲い込んで、逃げ道を消したまま球体カプセルみたく合体して相手を閉じ込め、そのまま内側に数え切れないほどの刺突攻撃。最後まで透明だったってのもあってさ、ウルさんが消えた次の瞬間、突然ハデスの全身に何千個も穴が空いて終~了~、みたいな感じだったもん。すごいねぇ~ウルさん♪』


『えへへなのでピキュ~♪ ヒロさんもっと撫でてなのでピキュピキュ~♡』


『このぉ~ウルさん、かわいい奴めぇ~ ほれほれ、ほれほれ、ほれほれぇ~♪』


『ピキュピキュピキュピキュ~~~♡』


 ヒロとウルのイチャイチャはそこそこ続いた。





『さぁーてウルさん、次、行ってみる?』


『ジャンジャン行くのでピキュ! 残りの3体は帰還なしで連続転送してもらって構わないのでピキュ~』


『よーし分かったぜ! んじゃ、行ってこーーーい!(インベントリ)』


 ヒロはウルを【混沌王ミラの洞窟】に転送した。

 ウルはハデスの時と全く同じ戦闘ルーチンでミラを串刺しにした。

 さらにミラ戦では、相手の出方を見ることなく戦闘を開始したため、“なんだオマエは”的なやりとりすら無かった。


 次の【煉獄王カイムの洞窟】では、囲い込んだ瞬間に横っ飛びで逃げられかけたが、球体密閉が間に合い、結局は串刺しにした。


 最後の【滅神王ヌガヌガの洞窟】では、球体密閉で閉じ込めた際に、完全防御の姿勢を構えられたが、ウルが繰り出すメガミウムの針は、ヌガヌガの鋼のようなボディをまるで【肉汁たっぷりのしそおろしハンバーグにフォークを当てた】ように、いとも簡単に串刺しにした。


 こうして、最後に残った4人の【始祖の王】は、全員ウルに瞬殺されたのだった。





『ウルさんおつかれ~♪ やっぱ他の3体も大差無かったね~』


『ピキュ! 若干の得意分野的な差異は見て取れたでピキュが、ステ値的には4匹とも極端な違いは無かったのでピキュ。こんくらいの奴らならヒロさんの手をわずらわせることなく単独撃破可能なのでピキュ~♪』


『【単独】っつってもウルさんの場合は語弊があるけどね~。あとウルさん、あの何千という串刺し攻撃を見舞いつつも、4体ぜんぶから魔晶をキレーなまま確保したのはグッジョブだぜ~。気が利いてるよね♪』


『ピキュ! 魔晶を破壊しないと死なない仕様とかあるかもピキュなぁ~とか思いながら串刺したのでピキュが、肉体と脳の破壊で事切れてくれたのでラッキーピキュピキュ!』


『良かったね~ウルちゃん♪ ヒロの分も含めると、めっちゃレベ上がったんじゃないの?』


『おーっとそうだな、今回のレベルアップは……』




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:23672


Lv:806[378up]




『………………』


『ヒロ、……レ、レベルが倍近くに膨れ上がって、……ポイントが、にまんさんぜんって、もーあなた、ハハ…… ハハハ…… ヌハハハハハハハーーー グハハハハハハハーーー』


『ヤバいのでピキュ! ヒメさんがおかしくなっちゃったのでピキュ~!』


『た、確かにヤベェ。【必要経験値固定】の恩恵だろうけどさ、このクラスの魔物であの量だとレベル跳ね上がるんだなぁ。今回はキリのいい数値じゃないからアルロライエちゃんのリミッターも効いてないのかも……』




ピロン


 ヒロのスクリーンにテキストのみのダイアログボックスが現れた。そこには


《もぉテキトーですぅ  。゚(゚´Д`゚)゚。 》


 と書かれていた。




(……。苦労かけるな、アルロライエちゃん…… マジでガチガチに鬼感謝だぜっ!)



ピッコーーーーーーーーーーー………………nnn



(よし、届いたみたいだ♪)


 ヒロの思いは、今回試験的に導入されていた【対超超思念対応型アルロライエ専用全身白タイツ】をいとも簡単に突き破り、結果はいつも同様、卒倒失禁騒動に終わった。

 しかし、全身タイツに【自動目覚まし機能】と【超薄型マジック吸収パッド】が備わっていたため、アルロライエは10分ほどでサラサラ状態のまま目をさます事となる。

 神界のテクノロジーは、日夜進歩しているのだった。

 



(あと…… そうだ、さっそくポイントを割り振っちゃおーっと♪)


 ヒロは異世界転生後最大規模のポイントの割り振りにとりかかる。

 そして


『ヒメぇ~見て見て~。俺すんげーステ値上がったよ~♪』




名前:ヒロ

種族:人間[ヒト]


pt:0/23672


Lv:806[378up]

HP:3000 + 2295

HP自動回復:1秒10%回復[2%up]

MP:20000[14400up] + 2354

MP自動回復:1秒10%回復


STR:3000        + 2266

VIT:3000        + 2682

AGI:7000[3000up] + 2900

INT:7000[4000up] + 2793

DEX:7000[2000up] + 2607

LUK:1107[272up]  + 2869


魔法:【温度変化】【湿度変化】【光量変化】【硬度変化】【質量変化】【治癒力変化】【錬金】【トレース】【物質変化】


スキル:【ショートカット】【インベントリ(ヒメのなんだからね!)】【スコープ】【必要経験値固定】【迷彩】【メモ】【アイテムドロップ[アルロライエのセンスで]】【召喚】【スキルバフ】




『んがっぐぐ……。え、MPが……にまん……。ヒロ、あんたどーしちゃったの?』


『いやね、今後さ、ウルさんはどんどん高スペック化するだろうし、分裂体の数も天井知らずで増えていくと思うんだ。だからウルさんの構成物質でありエネルギー源でもある【メガミウム】を少しでも効率よく【錬金】しようとすると、おのずと【MP】の最大値は多いに越したことはないと思ってさ』


『ピキュピキュ! ヒロさんサイコーでピキュ~♡』


『あと【魔法便器】の時みたいに複雑なアイテムを大量生産したい時も、やっぱMP頼みになってくるし、簡単に言っちゃえば、【原材料としてのMP】の重要性に気づいた……みたいなとこかな』


『確かに。常人では絶対出来ない【錬金】がサクサクと出来ちゃうのはヒロのMPが膨大だからだもんね~。改めて考えるとベストな成長なのかもね~』


『でしょ~、己の戦闘スペックばっか上げても世界中に【清潔なトイレ】は行き届かないからなー』


『そんなこと言ってるけど、ヒロの戦闘スペックは既に世界最強だと思うわよ』


『それは分かんないぞ? 俺達はまだ、この世界のほんの一部のことしか知らないんだから、油断は禁物だよ~』


『まぁ、あなたがそーゆーんだったら別にいーけどねぇ』


『ヒロさん! ドロップアイテム見たいのでピキュ!』


『はいはい~。確かにこんだけレベル上がればドロップアイテムも凄いことになってるだろうな♪ いざ! 開示!』




□ドロップアイテム

■冥界王の剣      ×20

■冥界王の槍      ×15

■冥界王の銀玉弾    ×24

■冥界王の鎧      ×24

■冥界王の盾      ×19

■冥界王の兜      ×28

■冥界物質ハデスニウム ×3

■混沌王の杖      ×31

■混沌王の鞭      ×12

■混沌王の白玉弾    ×26

■混沌王の鎧      ×20

■混沌王の盾      ×29

■混沌王の兜      ×26

■混沌物質ミラニウム  ×1

■煉獄王の棍      ×15

■煉獄王の刀      ×30

■煉獄王の朱玉弾    ×27

■煉獄王の鎧      ×22

■煉獄王の盾      ×36

■煉獄王の兜      ×25

■煉獄物質カイミウム  ×2

■滅神王の槌      ×31

■滅神王の斧      ×27

■滅神王の黒玉弾    ×21

■滅神王の鎧      ×29

■滅神王の盾      ×23

■滅神王の兜      ×23

■滅神物質ヌガヌニウム ×2




『うわぁ~、全始祖王装備と謎物質4種ねー。謎物質、めちゃレアっぽいし~』


『ピキュピキュ! なんかカックイーっぽいのでピキュ! ヒロさん着てみるのでピキュ!!』


『えぇ~~、なんかハズいよぉ~。ハデスたち本人ですらこんなの装備してなかったっしょ~』


『それはそれピキュ! これはこれピキュ! いかにもカックイー感じのドロップ装備は、男なら装着してみるべきなのでピキュ! いんや、装着せねばならないのでピキュ! それが強い男の義務なのでピキュピキュ!!』


『そぉ~よねぇ。わたしもヒロのコンプリート鎧姿、見てみたぁ~い♡』


 ヒロはしばし黙り込むと、魔タバコ【魔ゼロスピ】にシュボッと火を着け、大きく吸い込んだ。


スゥゥゥゥゥゥゥーーーーー…………


ふぅぅぅぅぅぅぅーーーーー…………


 ヒロは遠くを見つめる。

 そして……


『しょ~がねぇ~なぁ~。わーったよ。着てみるよー』


『キャッホーなのでピキュ~♪』

『ウルちゃん楽しみだね、ワクワク♪ ワクワク♪』

『チチサマ、ひーたんも楽しみなのです♡』


 かくして無駄に長いファッションショーが始まった。

 アンタクテ大陸中央部・極点上空10mに浮かぶ透明の箱、【流星4号★要塞★999】の中での出来事である。





『ど、どお?』


 冥界王装備[全身銀色]に身を包み、剣と盾を構えたヒロが呟く。


『いーねい~ねぇ~、ヒロ、ロープレのラスボス直前勇者みたいだよ~』

『カックイーピキュ! カックイーすぎたかもしれませんのでピキュー!』

『チチサマ……かっくい~なのです♪』


『……次、行っていいかな?』


『なぁ~によぉヒロ~、あなた満更でもないんじゃないのよぉ~。ス・キ・なんでしょ~ホントは♪ おぬしもイケる口よのぉ~ウリウリ、ウリウリ♪』


『やっぱもういい。やめる。帰る』


『あーーーー嘘嘘嘘嘘! 見たいの! わたし達が見たいからワガママ聞いてもらってるだけなのーーー! ヒロはホントは嫌なのにわたし達の為を想って仕方なぁ~く全始祖王装備ファッションショーをやってくれてるのぉ~~! ありがと! ありがとね~ヒロ♡』


『…………』


『はいはい、次行きましょ♪ つぎは~~っと』


 結局ヒロは、混沌王装備[全身白色]に身を包み、杖と盾を構えてしまうのだった。


『これもい~ねぇ~、てゆーか、混沌王ミラって明らかに美人なオネーサンだったけど、ちゃんと性別と体格に反応してフィットするのね~。ヒロ、純白の鎧が聖者みたいでステキよ~♡』

『カックイーピキュ! 荘厳なのでピキュー!』

『チチサマ……そーごんなのです♪』


『…………』


 そしてヒロは、煉獄王装備[全身朱色]にも身を包み、刀を両手で握り、スッと構えるのだった。


『ますますい~ねぇ~、やっぱ赤系って強そ~なオーラ放つよね~。ヒロ、最強の戦国武士みたいでステキよ~♡』

『カックイーピキュ! まるで敵も味方もカンケー無しでぶった斬りまくるモノノフなのでピキュー!』

『チチサマ……ぶったぎりなのです♪』


『…………』


 そしてついにヒロは、滅神王装備[全身黒色]にも身を包み、槌と斧を両手に持ち、振りかぶりながら力強く、カッ! とドヤ顔で構えるのだった。


『も~サイコーにい~ねぇ~、やっぱ漆黒の鎧は戦士のロマンよね~。ヒロ、ラスボス倒して調子ん乗ってる勇者をボコッて上には上がいるって現実を軽~く叩き込んじゃう裏設定の破壊神みたいでステキよ~♡ あとカトキチのエビフライ立ちサイコー♪』

『カックイーピキュ! まるでクリア後の隠しダンジョン最奥でしかお目にかかれない黒騎士なのでピキュー!』

『チチサマ……さいおくなのです♪』



5分後



『いやぁ~、やっぱコンプリート装備はカックイーよな♪ あとよく分かんないけど【始祖の王】シリーズ? ゆーだけあって質感とか精密さとかフレキシブルな肉体への順応性とか、もー何から何までスペシャルなクオリティだよなー♪ この世界に来る直前にさ、とあるジジイから【ロトニウムセット】みたいなの見せられた事あるんだけど、どー考えたってこの【始祖の王セット】の方が強そーだわ。やったね♪』


 ヒロはとても上機嫌だった。


(ひと通り見てみたかったのは事実なんだけど…… ヒロってけっこーおだてられると調子に乗っちゃう単純馬鹿野郎なのかもね~)


『ん? ヒメなんか言った?』


『ん~にゃ~んにゃ、なんも言ってないわよ~。と、ところでヒロさ、どの装備が一番しっくり来たの?』


『ん~~~、どれも似たり寄ったりかなぁ。まぁ高性能ではあるよ~。どの装備も戦闘服って意味では文句無いねー』


『じゃあ決め手はデザイン? ねぇ、どれ着用するのよ~?』


『着用? いや、もー着ないよ。インベントリの肥やしだなー』


『えぇぇ~~!? 少しでも強くなるんだから着ればいいのにぃ~』

『ピキュピキュピキュ~』


『いやいや、まず恥ずかしすぎるだろ~あんなの。冷静に考えてみろよ、村であろーと町であろーと狩場であろーと、あーんなキラキラしててトゲトゲしててゴチャゴチャしてるド派手な鎧なんか着込んでたら、間違いなく、誰だって“やべーヤツが現れた!”って思うだろ~。引かれるだろ~。口あんぐりだろ~。たぶん武器屋や道具屋だったとしても、過半数の人間はこっそりクスクス笑うだろーよ。まさに、それを、【悪目立ち】ってゆーんだよっ』


『………………』

『………………』

『………………』


『あんな派手なの着て日常生活するってーのはな、舞踏会用のドレス着てコンビニ行くよーなもんなんだ。ノーザンキューシューの成人式の衣装で親戚の三回忌に顔を出すようなもんなんだ。全身の骨格を最高フレームで構築された新人類専用人型赤光りロボット兵器でおばあちゃんをデイケア施設に送り迎えするようなもんなんだ。……な、悪目立ちだろ?』


『(“な、”って言われてもなぁ……)ご、ごめんねヒロ~。確かに承認欲求が全毛穴から吹き出してる変人に見られるかもだね~』


『分かってくれればそれでいーんだ。あと、いつも着てる【肌触りの良い衣類コレクション】の方が戦闘服としての性能も上だしな~♪』


『えっ! そーなの!? 【始祖の王セット】よりも?』


『うん、だって【神の加護】とか【衝撃吸収】とか【自動消音】とか【自動修復】とか付いてるもん。何の問題もないよ』


『と、灯台下暗しとは良く言ったものよねぇ。まさかけっこー前に手に入れた普段着の方が凄かっただなんて。さすがアルロライエちゃん、いい仕事してるわ……。てことはさ、今回のドロップ品の中で使えそうなものは特に無いって感じ?』


『いや、【謎の物質4種】。これはそのうち新物質開発実験で役立つような予感がしてるんだ。それと、各王の○玉弾ってやつ、アレはソコソコの武器っぽいぞ。ほら』




■冥界王の銀玉弾

ハデスニウム製の玉。飛翔武器。直径10cm。質量20kg。使用者がイメージした通りに飛翔する。制御距離と同時使用数は使用者のステ値に依存する。付帯効果を含む各種設定も使用者のステ値に依存する。


■混沌王の白玉弾

ミラニウム製の玉。飛翔武器。直径5cm。質量10kg。使用者がイメージした通りに飛翔する。制御距離と同時使用数は使用者のステ値に依存する。付帯効果を含む各種設定も使用者のステ値に依存する。


■煉獄王の朱玉弾

カイミウム製の玉。飛翔武器。直径20cm。質量50kg。使用者がイメージした通りに飛翔する。制御距離と同時使用数は使用者のステ値に依存する。付帯効果を含む各種設定も使用者のステ値に依存する。


■滅神王の黒玉弾

ヌガヌニウム製の玉。飛翔武器。直径30cm。質量100kg。使用者がイメージした通りに飛翔する。制御距離と同時使用数は使用者のステ値に依存する。付帯効果を含む各種設定も使用者のステ値に依存する。




『おおぉぉ。質量みっちりの鬼重い玉がビュンビュン飛び回って敵を粉砕するのね~。怖っ』


『ピキュ~! ヒロさんなら100個くらいを音速でブン回せそうなのでピキュ! 大量殲滅兵器なのでピキュ~!』


『ただなぁ……』


『どしたのヒロ?』

『ピキュピキュ?』


『よくよく見ると、この玉のスペックって、俺のフレーム……【物質変化魔法】で事足りる……っつーか、下位互換っぽいんだよなぁ』


『……あ、あぁ、確かにヒロならフレームいくらでも出せるし、フレーム内の物質も好き放題。形も速度も動きもステ依存でやりたい放題。ホントだ~』


『そーなんだよ。メガミウムの質量ってなまらごっさ重かった気がするしさ、その気になれば直径100m級のメガミウムのカタマリを時速1万キロとかで乱舞させることも出来るんだよなぁ多分。で、さらに言うとだな、』


『さらに言うと?』

『さらに言うピキュ?』


『今回のレベルアップ&ステ値上昇により、俺の【スコープ】能力も上昇しちゃっててさ、集中すると、視認距離30km先くらいまで伸びてるんだよ~』


『おおおぉぉぉ~~』

『ピキュピキュ~~』


『それを利用しちゃうとだな、30km先の空間に、インベントリから巨大メガミウム玉を初速から想像可能な最大速度で指定ベクトルに射出することもできる。つまり30km圏内は、俺にとって既にゼロ距離同然なんだよ~』


『ヒロ…………怖っっ!』

『ヒロさんスゴピキュッ!』


『というわけで、使えそうに感じた【各王の○玉弾】もインベントリの肥やし決定だな~。おつかれした~~』


『いやぁ~、ヒロくらいのスペックになると、【欲しいもの】探すのも大変だねぇ。これって例えるに【神の悩み】に近い状態になってきてるわよ~。気をつけてね、【退屈】ってカイブツには(切実)』


『それなら大丈夫。だって俺にとっては【始祖の王セット】なんかより【アルロライエの握りたて特上寿司セット】や【ゼキーヌさんのシチューセット】の方が嬉しいアイテムだからな♪ パン屋巡りもしたいし、ゴズさんや仲間たちの笑顔も生き甲斐だ。なによりヒメやハナやウルさんやヒロリエルとのワイワイガヤガヤした愉快な毎日は異世界ライフ最高の収穫だよ。だから【退屈】なんて絶対しない自信が俺にはある! 愉快な毎日王に俺はなるっ!』


『…………ヒ、ヒロぉ~大好きよぉ~~グスッ』

『……ピッキュ……ピッキュ……ピキュピキュ~』

『チチサマ……なのです……なのれす……』

『ZZZZ……パパぁ~……待ってぇ~……ZZZ………』


 ヒロファミリーは久々にしんみりほっこりしたのだった。






□【アンタクテ極点ダンジョン】での採掘結果

■アンタクテ極魔素クリスタル ×320万トン


□【アンタクテ極点ダンジョン】での狩猟結果

■[S7]冥界王ハデス  ×12109

■[S7]混沌王ミラ   ×11927

■[S7]煉獄王カイム  ×12088

■[S7]滅神王ヌガヌガ ×11790




名前:ハナ

種族:イデア[幼獣]


Lv:969[455up]

HP:2295

MP:2354


STR:2266

VIT:2682

AGI:2900

INT:2793

DEX:2607

LUK:2869


固有スキル:【忠誠】【仁愛】【智伝】【義憤】




名前:ウル

種族:孤高のメガミウムスライミー


Lv:1005[580up]

HP:6230

HP自動回復:1秒10%回復

MP:4115


STR:2398

VIT:3234

AGI:5330

INT:2371

DEX:3693

LUK:1353


固有スキル:【神速移動】【神速変形】【神速変質】【神速変色】【神速浮遊】【神速分裂】【神速合体】【神速通信】【神速転移】


固有技:神速刺突 神速斬撃 神速防御 メガミウムメイデン 爆散刺突 竜巻微塵 神速吸収





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