20~22日目 世界に散らばるウル分体
ヒロが異世界に転生して20日目。
ニョーク時間午前7時頃。【ハナランド】。
『やぁーん! きゃー♪』
『ピキュ~ ピキュピキュ!』
『ウルちんずるーい! キャー♪ こっちこっち! キャー♪』
ヒロは最高の寝心地を実現した【枕一体型ベッド★高反発72】とドロップアイテムの【肌触りの良い夏用掛け布団】の隙間から、近くでハナとウルがじゃれ合う声を感じつつ、気持ちの良い目覚めを実感していた。
「ん~~~…… ぅうあぁ~~ よく寝たぁ~」
思わず声が漏れる。
『パパァ~おはよ~。このじめん、あんよがきもちいいの~』
ヒロの起床に気付いたハナが、ベッドに飛び込んでくる。
『おぉ~今朝も元気だね~ハナ。いっぱい走ったの?』
『うん♪ ウルちんとおひさま出てから追いかけっこしてたの~。ウルちん疾いからハナ、がんばるの~♪』
『そーかそーか、良かったな~。ウルさんもありがとね~』
ヒロは、布団に潜り込んで丸くなり尻尾フリフリ丸のハナをやさしくヒログルーミングしながら、次いで太腿あたりにスリスリしてきたウルの全身も撫で回す。
『ピキュ~。ヒロさんのゴッドハンドはウルの快楽中枢を直撃するのでピキュ~。やめられないとまらないランキング上位の常連ピキュ。これに関しては全ウル分体が感覚を研ぎ澄ませて共有してくるピキュから大変なのでピキュピキュ~』
ハナは既に態勢を仰向けにし、おなかさすってモードに突入。
ヒロはハナのフカフカでぷにぷにのおなかを絶妙の指使いでスワスワする。
『はぁ~ん。パパもっとなの~』
ハナは時折四肢をピクピクさせながら、ウットリと目を細める。
『ヒロさ~ん、ウルもヘソ天になったのでピキュ~』
『ごめんウルさん、全然分かんなかったわ。さすがスライミー♪』
『ピキュピキュ~』
そんな幸福な寝起き時間は30分ほど続いた。
『おはよ~ヒロ、最初はハナちゃんだけだったのに、いつの間にかウルちゃんも撫で撫でタイムに参加するようになってるわね~』
『ウルさんも気持ち良さそうにしてくれるからさ、俺も嬉しいよ~』
『パパだいすき~♡』
『ヒロさんだいすきピキュ~♡』
『も~2人ともトロトロね~。ハナちゃんてば、ごはんもお風呂もまだなのに、寝ちゃうんじゃないかしら』
『そうだな、飯と風呂だ♪ みんな起きるよ~』
『はいなの~♪』
『はいなのでピキュ~』
それからヒロは、ハナに【ハナ感激★牛熊猪の肉モツ彩り特盛Dセット5キロ】を、ウルには【ヒロ魔力再充填★メガミウムΩ1トン】を食べさせ、自らは【焼き立てパンとグレートバイソンの肩ロースステーキとホレン草のクリームスープ】を堪能する。
『いやぁ~美味かった~。ハナ~、おやつの魔晶、食べるよね?』
『ハナおやつたべるぅ~』
『あ……そうだ。ハナ、最近【魔素クリスタル】ってのを1万トン以上手に入れてさ、鉱物っぽいから食べられないかも知れないんだけど、ちょっと試してみる?』
そう言いながらヒロは、好奇心で尻尾ブンブン丸のハナの鼻先に【魔素クリスタル】の小さい欠片[500mlペットボトルサイズ]を置いてみた。
すぐさま興味津々で【魔素クリスタル】をクンクン丸するハナ。
すると、ビクンッと身体が反応し、クワッとした表情となり、数回ペロペロ丸すると……
カシュ! ガシュッ! ゴシュ ジャクッ♪ シャクシャクシャク♪
豪快に噛み砕き、心地好い咀嚼音とともに次々と呑み込んでいく。
尻尾はもう見えないほどにブンブン丸で、時折全身をブルブル丸させている。
ハナ興奮のおやつタイムはあっという間に終了した。
『パパ! このおやつがいちばんおいしいの! ハナこれがいいの~♪』
『分かったぞ~ハナ。これからはずっと【魔素クリスタル】食べさせてあげるからね~』
『パパだいすき~!♪』
すると、それまでモジモジしていたウルが訴える。
『……あのピキュ~。ウルもそれ、食べてみたいのでピキュ~』
『えっ? ウルさんてメガミウム以外のものも食べたりするの?』
『ウルは何でも食べられるのでピキュ。ただ、ヒロさんと出逢ってからは【ヒロ魔力がたっぷり染み込んだメガミウム】が、健康面、成長面、そして美味しさの面でダントツ故の【一択】だったピキュが、その【魔素クリスタル】というもの、ウルが住んでいた火山の池の底で、ごく稀に採れた美味しいツブと似ているのでピキュ。ちょっと味見したいのでピキュ~』
『ウルさん、その話……ひょっとすると【魔素クリスタル】の次なる鉱脈発見! みたいな情報になってるかも知れない……あ、とりあえず食べてみてよ♪』
ヒロは、ウルの隣に【魔素クリスタル】の欠片[一斗缶サイズ]を置いてみた。
すると、フルフルッとウルの身体が揺れ、更に近付くと……
トゥルンッ♪
ひと口で【魔素クリスタル】を丸呑みにして、全身をブルッと震わせた。
『これピキュ! 【メガミウム】に出逢う前まで、ウルがいちばん好きだったやつなのでピキュ! でもこんな味が濃くて、美味しくて、大きいやつは、食べたの初めてなのでピキュ~。最高ピキュピキュ~♪』
『おぉぉ、マジかウルさん♪ だったらもっと食べる? 正直、まだいくらでもあるけど……』
『だったら今のを10個くらい欲しいのでピキュ~』
『そんな程度でいいの? おとついの【メガミウム】の時とか、とんでもない量食べてたよね?』
『【メガミウム】も【魔素クリスタル】も毎日ドラム缶くらい食べたいピキュ~。でもヒロさん、本当にいいピキュか? ウルがくいしん坊でヒロさん困ってないでピキュか?』
『ぜぇ~んぜん大丈夫だよ~。いっくらでもあるから気にしないで食べてね♪』
『ありがとなのでピキュ! ヒロさん大好きピキュ~♪』
こうしてハナとウルのメインおやつとその量が決まった。
◇
食後の風呂も3人で満喫したヒロは、身だしなみを整え、出発の準備を始める。
ちなみにいつもの睡魔に襲われたハナは、つい今しがた【ねんね】するためヒロの中にトテトテ丸で帰っていった。
『さてと、今日から俺達だけで世界中を巡って少しでも多くの地域にウルさん分体を投下していこうと思っています♪』
『待ってましたのでピキュ! ウルの冒険心と好奇心が止まらないのでピキュ~♪』
『そう言って貰えると助かるよ。ウルさんが世界中のいたる所に居てくれれば、俺や【テラース商会スタッフ】もすぐそこに転移できるって事だからね。1日ではとても終わらないと思うけど、俺のステ値を全力で注いで全世界瞬間移動システムの完成を目指すぞー!』
『ピキュピキュピキュ~!』
ヒロはまず、【ウルさんワープ】を利用して【ユーロピア帝国】の【フーランツェ領パーリ】に瞬間移動する。
そして【迷彩】状態でパーリの町を出ると、【流星4号★キューブ333迷彩】に乗り込み、【ユーロピア帝国内その他の都市】をシラミ潰しに回って行った。
その後は【流星4号】と【ウルさんワープ】を効率的に使い分けながら、エルフの【ルーシャ王国】、サムライとシノビが住むらしい【和能呉呂島】、獣人中心の赤道付近の諸島群、【インダーラ連邦】、【アウリカ王国】と回り、ドワーフの【アンゼス共和国】を経て、未開の地である【オスタトリア大陸】と【アンタクテ大陸】まで網羅してから【マンバタン島】に帰った。
その時点ニョーク時間ではで3日目の夕方になっていたが、【ゼロモニア大陸】もやっておこうということになり、22時頃には全世界の予定地巡りを終えたのだった。
以下はその3日間の制覇地である。
□20、21、22日目にウルが定住した土地
【ユーロピア帝国】
■ベルーギル領ブルセール
■ネデラード領アムス
■ゲルマイセン領ムンヘン
■スーインス領ツリーヒ
■フーランツェ領モナーク
■オステリア領ウィン
■タリアッテ領ミランダ
■タリアッテ領ルオマ
■タリアッテ領ワルワル島
■ギーリッサ領アテーナ
■デンマルク領コペルゲン
■ノルエ領オーシューロ
■スエルデン領ストーク
■ヒンラード領シンキ
■タルコン領イスタブル
【ルーシャ王国】
■ベラルシン
■ウクライン
■サンクペ
■マスカー
■オームスク
■バイカール
■ロフスク
【和能呉呂島】
■エゾ
■ムツ
■エド
■ニシ
■アキ
■イヨ
■ヒゴ
【赤道諸国群】
■タガロリア国
■スマターラ国
■ジャウワ国
■カリマン国
■スラエジー国
■パプニギア国
【インダーラ連邦】
■コーリ領ソル
■チャナ領ペキ
■チャナ領シャハ
■チャナ領カト
■チャナ領シセ
■ベトナジア領ハノ
■ラオタイ領バンコ
■ミャングラ領アサム
■インダーラ領ヌデリ
■インダーラ領ムンバ
■北スタン領タシケ
■南スタン領イスバード
■イランク領バグダ
■アラビー領ドバドバ
【アウリカ王国】
■ジプト領カロ
■アルジラ領アルジ
■セネガ領ダカル
■ケニャ領ナロビ
■コゴ領キンサ
■ザンバ領ルーサカ
■ナンアー領ケプタン
【アンゼス共和国】
■ブランジール領アマゾネリア地域
■ボリバ領サンタクエラ
■ティーリ領サンチャ
■パタゴン地域
【オスタトリア大陸】
■オスタトリア地域北
■オスタトリア地域東
■オスタトリア地域中央
■オスタトリア地域南
■オスタトリア地域西
【アンタクテ大陸】
■アンタクテ地域中央
【ゼロモニア大陸】
■ラスカー地域
■西海岸地域
■エロストン山
『いやぁ~~巡りも巡ったりって旅だったな~。途中から商売拠点じゃなくウルさんの冒険がテーマになっちゃったから、南極大陸……あ、【アンタクテ大陸】とかにまで進出しちゃったしねー』
『あのクソ寒い大陸は、ヒロの前世では【なんきょく】って言うのね~。私が最近ダウンロードした【テラースの国名地名図鑑★神命名有り★133年版】では既に【アンタクテ大陸】になってたから残念ね~。命名できなくて』
『いやいや、生物にせよ物質にせよ土地にせよ、神が勝手に命名してくれてる方が楽だよ~。この世界はまだ【人目線での未発見なもの】が多すぎて、いちいち俺が命名なんてしてらんないからねー。あと、この星の名前が【テラース】だってことくらいは成り行きで知ってはいたけどさ、ヒメのその【最近ダウンロードした図鑑】のタイトルで、テラースの何らかの歴が【133年】だって事が初めて分かったよー』
『正確には【ソルース系第3惑星テラース】で、【創生歴660133年】、ちなみに日時はニョーク時間で【5月3日日曜日22時26分】くらいよ~。創生歴については66万年を端折って【133年】みたいに百の位から表記するのが人間界では一般的みたいねー』
『そーいやそんな超基本的なことも知らずにここまで来ちゃってたよなー。あれ、ヒメはなんで時間まで分かるの?』
『えっとね、【テラースの国名地名図鑑★神命名有り★133年版】に、袋とじデータで【スクリーン用神時計】っていうオマケが付いてたから使ってみたのよ』
『それいいなー。俺も欲しいなー』
『多分簡単だと思うよ~。ちょっと待ってね。…………これでどう?』
ヒロの視界の右下隅に【133年5月3日[日]22:27】という表記が加わった。
『おぉぉ、出たよヒメ。サンキュ~』
『いえいえ~。ところでウルちゃん、この3日間でかーなーりー厳しい環境にも投入されちゃってたけど、世界中に散らばってるウルちゃん分体からは苦情とか帰還とかないの?』
『あるわけないピキュ! ウルは絶対零度であろうと摂氏5万度であろうと地下何百キロであろうと深海であろうと平気で活動できるのでピキュ~。最新情報だと、【神速浮遊】に磨きがかかって、ほぼ飛べるようにもなったのでピキュ!』
『すごいねぇウルちゃん! もうテラース最強の生物なんじゃない?』
『えっへんなのでピキュ! でも最強はヒロさんピキュ。これだけは揺るがない事実なのでピキュ~。ついでに【最恐】も【最凶】も【最狂】もヒロさんに譲るピキュ~』
『どれも別に要らないよー。とにかく、ウルさんが世界中に散らばって、やけに活気付いてるみたいだから良かったなぁ~って思うよ』
『ワクワクが止まらないピキュ! 今もウルは世界中で分裂し続け、海に山にどんどん進出して行ってるのでピキュ~』
『こりゃ、放っといてもハワイやガラパゴスにまで辿り着いちゃう勢いだねー。テラース開拓はウルさんに任せておけば安心だ♪』
『任せるのでピキュ~♪ テラースはヒロ一家が貰ったのでピキュピキュ~♪』
その後、ヒロ達は【ハナランド】に移動。
会話、飯、会話、おやつ、会話、風呂、会話と堪能し就寝する。
こうして創生歴660133年5月3日[日]、ヒロの異世界生活22日目が終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます